今はゲームを中断させて、ディナーの時間となっていた。
ギャンブルの村では定期的にパーティが開かれ、
その中で"ショータイム"を開いているらしい。
それで、メンバーはたまたまパーティ会場に訪れ、たまたまショータイムに招かれたのだ。
パーティのメインはもちろんギャンブル。
村人全員が楽しそうにギャンブルをする。

しかし、"笑い"を見極めることができるトーフには分かる。
少しずつであるがこの村の"笑い"がなくなりつつあるのが。
そのため"ハナ"を消さなければならない。

一刻も早くショータイムの賞品である"ハナ"を手に入れ、処分しなくては。

この村の"笑い"がなくならないためにも。


「うんめ〜な〜!ここの料理〜!これ全部タダなのか?タダ?」


ショータイムのゲームを一時的中断させ、メンバーはディナーを頂く。
モグモグと口に物を入れながらもメンバーは美味しそうに会話をする。


「うん、美味しいよね〜。特にこの肉。いい味してるよ」

「生肉ね〜んだ?ちぇ…、生肉食いたかったぜ…」

「何でこん肉…半生なんやねん?そならジュージュー焼けっちゅーねん!」

「このフルーツ何ていうヤツなんだろ〜?美味しい〜!」

「やっぱりメシは野菜に限るな」

「いい男見つけたわ!!チェックチェック!!」


何とも個性溢れるメンバーだ。


「それにしてもよ〜」


サコツが話を持ち出した。


「まさかクモマが退場命令されるとは思ってもいなかったぜ?」


クモマは申し訳なく眉を下げ


「ゴメンね。何かあの時は頭がカーっとなっちゃってね…自分でも覚えていないぐらいだよ」

「大人しい人ほど怒らせたらあかんわな…」


ボソリとトーフが呟くが、それは本人の耳には聞こえなかったみたいだ。
クモマは気にせず会話を続ける。


「でも7並べで相手2人を落としたから…」

「あ〜!あれは凄かったよね!私ビックリしちゃったよ!7並べって意外に難しいゲームなのにね」

「ホンマやで。ワイももう少しでパス4回出しそうでヤバかったで。何でスペードの4が置かれないんかと冷や冷やしたわ。ワイそれ以降の3、2を持っとったからさ…」

「あはは。ゴメンゴメン。トーフの顔色見て気づいたよ」

「っていうかさ〜。ソングあんたやる気あんの?」


突然、チョコに問い掛けられ、野菜を食べるのを止める。
ソングは不機嫌そうに応えた。


「失礼だな。あれでも俺は頑張ってたんだ」


ソングの反論に全員が首を突っ込んできた。


「ウソつくんじゃねーよ!アッサリ負けたくせによ!」

「全くよ!ソングって顔に気持ち出すぎるからダメなのよ!」

「あれはいくらなんでも弱すぎるよね」

「世の中そな甘くないんやで?」


全員の意見に、ソングは泪を呑んだ。


+ + +


「まさかうちのチームから3人も脱落するとはな」


ラフメーカーの相手チームのTHE☆鼻水はディナーを取りながら作戦を練っていた。
無念にも脱落してしまった3人は深々と頭を下げる。


「申し訳ない!まさか7並べなんかに負けるなんて思っていなかったんだよ」

「あのタヌキ面をしているチビの男が意外にも強かったな。悔しいぜ!ま、退場命令喰らってたけどな」

「ってか、何で俺まで脱落してるんだ?」


鼻の下を伸ばしてチョコの腕を掴み、見事クモマの拳の犠牲になった男が首をかしげる。
お前が気絶していたからだ、と他メンバーが教える。

考えて直してみると、この3人が脱落した原因は、全てクモマだ。

見た目が弱そうなやつは侮れない。と頷きあうTHE☆鼻水。


「残りのゲームは3ゲーム。俺ら生き残りは3人。ここからは一度も負けてはならないな」


メンバーの中心となる男が真剣な目で全員を眺める。
いや、睨んでいる。

男の視線を受け、食べるのをやめて黙り込む他メンバー。
どうも中心の男は残りが3人になってしまったことが不満らしい。

生き残った男の一人が何とか言葉を出した。


「そうだな。ここからが俺らの見せ所だぜ」

「んだ。3人の仇討ってやるからな」


生き残りチームの言葉を聞き、負けチームは再度頭を下げる。
意外にも律儀だ。
一瞬沈黙になるが、生き残りチームの一人がそれを破った。


「ところで、これから3ゲームどれにも負けないってちょっと厳しくないか?」


それを聞き、中心の男以外の全員が意見を出し合う。


「…そうだぜ?さすがに俺たちにも自信が無いぜ」

「あの桜色の髪の女と何故かドレスを着ている男が強いからな〜」

「銀髪の男はめっさ弱かったな」

「あ〜ジョーカー持っているのバレバレだったぜ」

「見ていて逆に可哀想だったな、あれは」

「一瞬同情しそうになったぜ」

「その銀髪はいいとして、赤髪の妖精さんも侮れないかもな」

「あぁ。今のところはゲームで目立っていねぇが、きっとあいつは強いぜ」

「何しろ妖精さんだもんな」

「妖精さんは神秘の力を持っているんだ。きっとあいつは強い男だ」


何かラフメーカーの評価をしだしてきたが、止めなくてもいいのでしょうか?
って、サコツが妖精さんに見えたのかい?すごいよ!ある意味すごいよ!ってかあんたら妖精を信じすぎだよ!心が温かいね☆
ちなみにドレスを着た男とはブチョウのことでしょう。って、女ですよ!彼女は恋を夢見る女ですよ!
失礼ですね!ぷんぷん


「相手は意外に手強いぜ。どうやって生き残ればいいんだ?」


そして、中心の男に問い掛ける。
男は、口元を歪めた。


「生き残る方法は簡単だ」


全員が緊張しながら、言葉を待つ。
暫し間を空けて、そして男は言い切った。


「イカサマだ」


それを聞き、全員は邪悪な笑みで頷きあった。


+ + +

相手チームが作戦を練っている中、ラフメーカーは


「モグモグ…うまいわ〜。ムゴムゴ…ムゴ…この料理。モグ、ホンマ美味い。なんぼでも食えるわ〜モグモグモグ…」


幸せそうにディナーを過ごしていた。
次々と口いっぱいに食べ物を放り込むトーフにチョコが声をかける。


「トーフちゃん。幸せそうに食べているところゴメンだけど、次のゲームの作戦を練らない?」

「はふへんをへりゅ?(作戦を練る?)」

「いや、食べ終わってからでいいよ?!」

「ほんふぁしゅみゃんにぇー(ホンマすまんね〜)」

「って言ってる側から食べるのは止めないのね?!」

「おい、諦めた方がいい。こいつは食べ始めたら食料が尽きるまで食べ続けるぞ」


食べ続けるトーフにツッコミを入れるチョコを、珍しくソングが言って止めた。
ちなみになぜそう言いきれるのかというと、
最初訪れた"ショップの村"で食事をとっていたときに、トーフの行動を監視してみたところ、食べ物がなくなるまで食べるのを止めなかったということがわかったからだ。
一体あの小さな体の中はどうなっているのやら…。


「え〜…もうトーフちゃんったら〜。そんなに食べてると太るよ〜」


それを聞き、クモマは


「…太る…ってことは……背が伸びる?」

「いや、知らないよ?!」

「でも足は伸びないと思うわ」

「………………………………そっか…」


偉そうに自分の足を見せびらかし冷やかすブチョウに、クモマはシュンと肩を落とした。
太る=背が伸びる=足が長くなる、と思い、酷く期待をしていたらしい。

お気の毒に…。


「ところで、サコツは?」


気を落とすクモマを無視して、チョコは先ほどから姿が見えないサコツの心配をしだした。
ちなみにブチョウは今さっき、男を逆ナンパしにいった。
チョコの質問にソングが答えた。


「さっき、向こうにいたのは見えたんだが」

「何よ、アバウトな答えだね〜。本当に役立たずね!」

「や、役立たずって……そりゃねぇだろ…?」


思ってもいなかった応答にショックを受けるソング。
そのまま体育座りをしてしまった。

桜色の髪をいじりながら口を尖らすチョコを抑えるために、何とか気を取り戻したクモマがサコツの姿を探す。
そして


「いたよ。サコツ」


無事、赤髪のサコツの姿を見つけることに成功した。
サコツの姿の確認をして安堵の表情を浮かべるチョコ。


「よかった〜」

「サコツに何か用があるの?」


首をかしげるクモマにチョコは笑顔で応えた。


「第3戦からのゲームの作戦を練ろうかと思ってね」

「あぁ、なるほどね。確かに他の二人は話し相手になりそうにないもんね」


そしてその他の二人に目を向ける。
トーフは次々と自分の目の前にある料理を平らげている。
ブチョウは男を何人も捕まえて高速ラリアットを不意に喰らわせている。

オマケなんだが、ソングは先ほどからへこんでいる。
本当にオマケですね。いらない情報すみませんでした。


「…僕も役に立てるか分からないけど、話し合いに参加するよ?」


そう言って、サコツの元へ行こうとするチョコを止める。
彼の言葉にチョコは目を輝かせた。


「本当?ありがと〜!クモマ〜!んじゃ一緒に話し合おう!」


正直に自分の気持ちをいえるチョコが何とも可愛らしい。
クモマは微笑を作って、一緒にサコツの元へ行く。




「ところで、何でクモマってあんなに力あるワケ?」


そこへ行くまでの間の会話を作るため、チョコが突然話を切り出した。
本当に突然のことだったので、クモマは焦燥した。


「え、何でだろうね〜?昔から力だけはあったんだよ」

「へ〜体細いのにね〜」

「ほ、細いってそんな!足が短いってそんな!」

「いや、言ってない言ってない!!」


ごもっともだ。


「ところで、チョコはどうして動物と会話できるの?」


クモマも突然話を切り出す。
そして同じく焦燥しつつも笑顔で接触した。


「わからない〜。気づいたときには動物と会話してたから〜」

「あ、そうなんだ。不思議だね」

「ホント、ふっしぎ〜」


こうして盛り上がっている間に彼らはサコツの付近に近づいていた。
そして、気が付いた。


「チョコっ!!」


クモマは小声で叫ぶと、チョコの腕を引いて物影へと移った。
急に腕を引かれたためチョコは機嫌を悪くする。


「ちょっと〜!何するのよ〜!」

「よく落ち着いて、見て」


チラチラとサコツへ目線を移すクモマに疑問を抱きつつ言われたとおりサコツを見てみる。
そして


「あ!!!」


大声を出すチョコの口を塞ぐクモマ。
塞ぐ手を除けてチョコが小声ながらも叫んだ。


「ちょっと何よ!あれ!どういうこと?」

「わ、わからないよ。何でサコツが…?」

「まさかサコツが女の人と…っ!!」


面白い現場を見たと言わんばかりの表情の二人。
何度もサコツの姿を見てみる。

サコツはグラス片手に女の人と楽しそうに会話をしているのだ。

ニヤニヤしながら、チョコとクモマは徐々に徐々にサコツに近づいてみる。
一体どんな関係なのか掴めたく、近づいてみる。

と、そんな彼らの背後に、


「何してるんや?二人とも」

「っ!!」


腹を抱えたトーフと満足そうに仁王立ちをしているブチョウと立ち直ったソングがいた。
普通の大きさの声を出したトーフに二人は慌てて彼の口を抑える。
そんな二人の行動にソングが眉を顰めた。


「おかしいぞ。二人とも」

「可笑しいのは私だけで十分よ」

「あぁ、お前だけで十分だ」

「ちょっと!黙っててよ3人とも」


そう小声で叫ぶとチョコは3人にあの現場を見せてやった。
驚きあうその場。
そして、にやけるその場。


「何をしとるのか見てみたいところやな〜」

「でしょでしょ〜。だから今から二人で見にいこうとしていたところだったの」

「な〜るへそ」

「確かに興味があるな」


ゆっくりとサコツに近づくメンバー。
サコツは楽しそうに女の人と会話をしている。

あの女は一体…?

やがて、サコツの声がこちらにも聞こえてくる範囲に近づいた。
何の話をしているのだろう。
全員で耳を傾けてみると…


「いろいろ教えてくれてありがとな」


サコツの声だ。
一体何を教えてもらったのだろうか。

より、期待しながら次の言葉を待つ。


「最後に…」


グラスの中の氷をカランと鳴らして、女性へ奏で

彼は、最高の言葉を言い切ったのだ。


「君の瞳に映る…俺に乾杯」


え?キミの瞳に映る…俺…?
ちょっと待て、


「「お前かよ?!!!」」


思わず全員一斉に突っ込んだ。
ツッコミに気づき、サコツがこちらへ振り向く。
全員の姿に、サコツは笑った。


「な〜んだ。みんないたのか」

「何のん気なこと言ってんだ!お前さっき何て言ったんだ?」

「毛利さん」

「言ってなかっただろ!って何でお前が応えるんだよ?!」


突然割り込んできたブチョウにツッコミを入れるソング。


「普通はさ『僕の瞳に映る君に乾杯』っていうんだよ〜?」

「君の瞳に映る俺に乾杯って…自分に乾杯してどうするんだよ?」


笑いを堪えながらクモマが訊く。
全くその通りだ。


「自分に乾杯して何が悪いんだ?」

「「悪いだろ?!」」

「自分のことが大好きだから乾杯をしたんだぜ」

「「自分大好きかよ?!」」


全員がまた一斉に突っ込んだ。

その間にサコツと会話をしていた女の人はどこかへ去ったらしい。
女の人の姿が無いかを確かめるとトーフが気になる点を述べた。


「一体、あの女性と何話とったんや?」

「あ〜実はさ〜」


応えを期待するメンバー。
サコツはいい笑みを作った。


「恋の相談をしてたんだ」


思ってもいなかった言葉にメンバーは目を丸くする。
サコツは続ける。


「気になるあの子を落とすにはどうすればいいのかを相談してたんだぜ」

「だ、誰のことよ?」


チョコが企み笑いで訊き出す。


「俺が愛している女はただ一人」


満足そうにサコツは目を細めた。


「エリザベスだ」


「「やっぱりな」」


ゲヘヘへとヤバイ笑い方をするサコツに
全員が軽蔑の目で見届けた。


+ + +


「んじゃ、サコツの異常も治まったことだし、話し合いをしたいと思いま〜す!」


あれから暫くたってから、チョコをはじめラフメーカー全員が円を作って作戦を練り始めた。
サコツは自分のことを異常だと言われ、なぜかちょっと照れているようだが気にしないでおこう。

まずはクモマが口を開いた。


「残り3ゲームでうちのチームは残り4人。相手チームは残り3人だよね」

「そうね。一歩リードだ〜!」

「うちにはチョコがいるから勝つ事間違いないよ」


クモマに褒められチョコは照れ隠しをしながら否定をする。
そんな彼女に、ソングが言う。


「これ以上人数を減らさないように頑張ればいい話だろ?」

「そう思ってるなら真っ先にゲームに落ちないでよ。役立たず」

「…また役立たずって言いやがったな……こいつ…」


気を落とすソング。
無視して話し合いは続行。


「ピンチになったときは白旗振るから大丈夫だわ」

「いやいや!降参してどうするの?!」

「降参したらダメなんだよ。姐御〜」

「ま〜大丈夫よ。私が負けるはずないから安心するがいいわ。愚民どもめ」

「何かむかつくこと言いやがったぞこいつ」


ブチョウのボケにはやはり耐えられなかったらしくソングはへこみつつもツッコミを披露した。
そんな彼を抑える形でトーフが割り込んできた。


「ワイにいい考えがあるんやけど、ええか?」


いい考えと聞き、視線をトーフに向けるメンバー。
「いい考えって何?」と同じ事を訊くメンバーにトーフは応えてあげた。


「これはなかなかテクニックがいるんやけどな」

「………」

「ばれないようにできるかが不安やな」


………ばれないように??


嫌な空気が流れる。
前にもあったこの感じ。
そう、あれはショップの村でトーフが自分の技をみんなに伝授してあげると言って、
食い逃げを教えてくれたときのあの空気と同じ。

……まさか…

険悪なこの場で、トーフは、言った。


「イカサマや」


やっぱりな〜!

メンバーは反論を諦め、逆に爽やかな笑みを溢しあい笑い声を上げるだけだった。





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どっちのチームもイカサマするのかよ?!

イカサマとは不正行為のことです。
相手にばれないように、不正行為をします。これぞギャンブルでの世界だ!

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