腹を満腹にさせたメンバーは、不敵な笑みを浮かべて、舞台の上に立っていた。


『さ〜後半〜戦のはじ〜まりで〜す。皆さ〜ん準備はい〜いですか〜?』


観客の声を沈めながらキンキンのおじさんが元気良く声を張る。
メンバーの目の前に立っているTHE☆鼻水も同じ表情。
両者、この先のゲームに自信があるようだ。


『で〜は〜早速〜第3戦に〜移りた〜いと思〜います!』


舞台の端の椅子に大人しく座っているクモマまでもが緊張に覆われた。
一体第3戦はどんなゲームがくるのだろうか。
彼の隣りに座っているソングも行儀悪く椅子に座りながらも、緊張の色は隠せていなかった。

そんな雰囲気の中、おじさんはマイクに向かって叫んだ。


『第3戦〜は、ビデオポ〜カ〜です!』

「ビデオポーカー?」


聞きなれない言葉だったのか、チョコが口を挟んだ。
チョコの声に気づき、デレデレした表情でおじさんは優しく応えてあげた。


『ビデオポ〜カ〜とは〜、トランプゲ〜ムのポ〜カ〜と同〜じです〜よ。し〜かし、スロットマシンのよ〜な機械を相手〜にするんで〜すよね』


そういいながら、両チームの生き残り選手をステージへ誘導する。


『ま、トランプ感覚〜で〜やってい〜ただけた〜ら結構です。分か〜りましたか?』


危険な笑みでチョコに目を向ける。
おじさんの笑顔にチョコは無邪気にお礼を述べた。

その他のメンバーも黙っておじさんの後についていく。
複数の足音が舞台を震わせる。
やがて、おじさんは足音を鳴らすのを止めた。
こちらも動きを止め、止まったおじさんを眺める。
おじさんは、バレリーナ並に美しく半回転し、いい表情を見せた。


『さ〜ここ〜が、第3戦のステ〜ジです!』


そう叫ぶとおじさんは大きく手を広げ、自分の背後を注目させた。
メンバーもTHE☆鼻水もその他の観客も感嘆の声を上げる。

そこにはスロットマシンのような機械12機が直列に並んでいた。

しかし、実際に使われるマシンは7つ。
生き残りの7人が今からここで戦う…。

唾を飲み込み、目を真剣にさせるメンバー。


『ル〜ルは、簡単で〜す。今〜から10分間ゲ〜ムをしてもら〜います。その〜間にこの10枚のコイ〜ンを1000枚に増や〜してください』

「!?」

『もし、その枚数までに増やすことが出来なかったら、その人は退場です!』


ビシっと退場席を指差す。
既にそこに座っている2人のラフメーカーと3人のTHE☆鼻水は複雑な表情をしている。
そんな彼らと目が合ったメンバーは彼らを元気付けるためにいい笑みを作って交わした。

おじさんは、コイン10枚を選手一人一人に渡し


『好き〜なマシン〜の前に座〜ってください』


と言って選手を全員座らせると、すぐにゲームスタートの合図を上げた。



その場にスロット独特の音が鳴り響く。
ピロピロと鳴る舞台。
ジャラジャラと舞い踊るコイン。
埋もれていく男と女。


「やった〜!ロイヤルフラッシュ!!」

「どんどん金が増えてくるぜ!」

「あいたたたたた。マシンに挟まったわ」

「初めてやったんやけど、なかなか簡単やな〜」


+ +


そして、あっという間に10分が経過した。
おじさんのホイッスルの音がその場を沈ませる。
ゲームを中断させ、マシンに挟まっているブチョウを助け、おじさんをじっと見る。
その表情はとても爽やかであった。


『で〜は〜、枚数〜確認〜をしたいと〜思いま〜す。では、皆〜さん、コインを……』


そこで、おじさんは目の前の光景にまず目を疑った。
有り得ないことが起こっている、光景。

まさか、選手全員の椅子の横に、山積みになっているコインケースと、それに満タンに入っているコインがあるなんて。

両チームの生き残り全員が余裕の笑みを溢していた。


身震いを感じながら、おじさんは放送を続けた。


『えっと…見て〜の通〜り、全員が〜あの短時間にコインを〜めっちゃ稼いだようなので、この第3戦で〜は脱落者はゼロで〜すね』


驚きの声を上げる観客。
同じく、すごいすごいと連呼している負け組。


「皆ゲームに強いんだねー」


負け組のクモマがそう感心した。
ソングは足を組み直して


「ま、ポーカーは簡単だからな」


と、得意げに言う。
しかし、どっちにしろソングは弱そうだな、とクモマは思いつつ、目線を勝ち組へと直した。

その間に放送は続いていた。


『さ〜思いも〜よらなかった結果になっ〜てしまいま〜した!ま〜さか第3戦で〜誰も〜落ちなかったなん〜て、驚きましたね〜!』


自分の感想を述べるおじさん。
観客も同じ感想だ。
そして、メンバーも予想もしていなかった展開であった。


「ホントホント、まさか皆が余裕勝ちするとは思わなかったね」


チョコがラフメーカーにしか聞こえない程度の声を出す。
続いてサコツ。


「全くだぜ。相手チームからも誰も落ちないなんてな」

「そうね。酢コンブでも食べたのかしら」

「いや、酢コンブは関係ないと思うよ」


ブチョウの意見にチョコがツッコミを入れた。
その中にトーフが割り込んだ。


「ほな、次も頑張ろうやないか」


頷く3人を見てトーフは続ける。


「さっきのは相手が機械やったから"切札"は使えへんかったけど、次からは使おうで」


"切札"と聞き、不敵な笑みを浮かべるメンバー。

ちなみに彼らの"切札"とは、イカサマのことだ。
一体、どうやってイカサマをするのか、見所だ。



対し、相手チームは


「今回は楽に済んでよかったな」

「機械相手だったら余裕だぜ」

「あぁ。しかし次はどのゲームで来るかわからないからな。気を緩めるなよてめぇら」


THE☆鼻水の中心となる男が残りのメンバーを軽く脅す。
その残りのメンバー2人は速攻応答する。


「大丈夫だぜ!この調子で頑張るぜ!」

「ピンチのときは"切札"もあるしな」


後者の意見にその場の3人はニヤリと表情を歪めた。



+ + +


『では〜、そ〜ろそ〜ろ第4戦に突入〜した〜いと思います』


少々ざわめいている中、おじさんは再び声を上げた。
放送の音に声を止める観客。
選手も同じく、口を閉ざす。
周りが静かになるのを感じながらおじさんを言葉を繰り出した。


『気〜になる第4戦!このゲ〜ムは大〜きな賭けですよ〜!』


おじさんの言葉に緊張を募らせる。
そして、おじさんは言い切った。


『第4戦は〜、丁半で〜す』

「「丁半??」」


また聞きなれない言葉だったのか、チョコはまた目を見開く。
今回はサコツも同じのようだ。
首を傾ぎあう二人におじさんは再び危険な笑みでチョコに近づいた。


『丁半とは〜この二つの〜サイコロの出目〜の和が〜偶数か奇数か〜を当〜てるゲ〜ムですよ〜』

「な〜んだ。簡単じゃね〜か」

『そ〜思い〜ますか?』


第4戦の恐ろしさをおじさんは言った。


『このゲ〜ムは1回勝負で〜す。も〜し〜、一回目で〜外れて〜しまったら〜その場で退場で〜すよ〜』

「えぇ?!」


チョコが叫んだ。
その他のメンバーも表情を顰めた。
このゲームは1回勝負…。


『で〜は〜、ル〜ルの方〜を説明しま〜す。ま〜ず、こち〜らのスタッフが〜二つのサイコロをカップ〜の中で〜振ります。振〜り終わっ〜たら、サイコロの中〜に入れ〜たまま、カップを逆さにし〜ます。』


観客の人たちもこのゲームの事をあまり知らないのか、興味深そうに聞いている。


『そ〜して、ここで予想〜を立〜てます。サイコロの〜目が〜偶数だ〜と思ったら"丁"、奇数だ〜と思ったら"半"。そし〜て〜全員〜が予想を立て〜た時点で、カップをオ〜プン。そ〜れで実際〜に出目の〜和が何〜だったかを確認し〜ます。その時点〜で負け〜と勝ち〜を決めますよ』


ゴクリと唾を呑む。
いよいよギャンブルらしくなったなと歯を噛み締める。


『勝負は〜1回き〜りです。こ〜れで一気に〜人数を減らした〜いと思います』


黙って頷くメンバー。
退場席に座っているクモマとソングも身を乗り出して、第4戦を見届ける。


『ちな〜みに、丁か半かを決める際はこち〜らの表をご〜覧になってく〜ださい』


パチンと指で音を鳴らすと上から看板みたいなものがゆっくりと降りてきた。
何かと思ってよくよく見ると、おじさんが言っていた一覧表のようだ。
やけに大袈裟な舞台だなと感心するメンバー。

一覧表はこのようになっているようだ。 ←ここをクリックしてみよう☆


「…うわ、ダルイね〜」


チョコが苦い表情で呟いた。


「何か作戦はあるの?タマ」


ブチョウが隣りにいるトーフに問い掛ける。
トーフは不敵な笑みを浮かべていた。
そんなトーフを見て


「おいおい、何か変なことでも思いついたんじゃねーだろうな?」


不吉に思ったサコツが眉を寄せて訊ねた。
口々と問い掛けてくるメンバーに、やっとトーフが口を開く。
やはり不敵な笑みで。


「みんな、心配することはないで。こっちには"切札"があるんさかい」

「「……まさか」」

「ここで使わなきゃどこで使うんや?早速やるで」


"切札"イカサマ作戦だ。

チョコが問う。


「でもどうやってするの?」

「タコじゃダメなのか?タコサマ」

「モンブランの方が私は好きだわ」


後に続いた二人のことは無視してトーフは応えた。


「ここはブチョウに任せてくれや」


そして、トーフはブチョウに近づいて耳元で何かを話し始めた。
何でブチョウなのかと首を傾げるサコツとチョコ。
耳元で囁かれているトーフの言葉に、ブチョウも頷いて応じる。


「わかったわ。タマ。それじゃ私はトイレにでもいっといれ」


何気にシャレを言いながらブチョウは突然その場から姿を消してしまった。
サコツとチョコは何がなんだか分からず顔を見合す。
THE☆鼻水は気にせず余裕の表情だ。


『あ〜れ〜?選手〜が一人足り〜ませんけど…』


ブチョウがいなくなったことに気づいたおじさんは、辺りを大袈裟に見渡してブチョウを探す。
トーフが教えてあげた。


「今ブチョウはトイレに行ったで」

『あ、そ〜なんですか。そ〜したら帰って〜く〜るまで〜少々待ちましょ〜』

「ま、ブチョウのことだしすぐ返ってくるで」


そういった側からブチョウはその場に姿を現していた。
本当に早く帰ってきたことに驚く。
そして、"異常"に気づいて驚くその場。


「ただいまんもす」

「「ちょっと待った〜!!!!!」」


可笑しい挨拶を交わすブチョウを気にせず、その場はツッコミに溢れかえった。
無表情でそれに応えるブチョウ。


「一体何よ、あんたら」

「おい!何だよその後ろの物体!!」


退場席からソングのツッコミが激しく返ってきた。
同じくクモマも叫ぶ。


「何か変な生物がいるよ!魔物?魔物?!」


酷く言われ、ブチョウは表情を顰める。
失礼ね〜と言いながら、自分の背後にいる物体に目を向ける。

そこには、がいた。

また目線をこちらに戻して平気そうにブチョウは述べた。


「何もいないじゃない」

「「いるだろ!!めっさキモイ物体が!!!」」


思わず全員でツッコミを入れる。THE☆鼻水もご一緒だ。
先ほど、ブチョウが消える前に話をしていたトーフが再度ブチョウに耳打ちをした。


「ちょっと待てや!何やねんあの物体!ワイあんなの連れて来いいうてなかったやんか」

「クマさんよ。クマさん」


対し、普通の音量で声を出すブチョウ。


「「クマかよ?!!!」」


全員がまた声を合わせて突っ込む。
トーフは耳打ちを続ける。


「あれで本当にできるんか?」

「できるわよ。クマさんだもの」


ブチョウはやはり同じ音量。


「「何が出来るの?!クマさんに!!」」


対し、やはりツッコミを合わせるその場。
耳打ちをやめトーフは、ブチョウに離れつつも普通の音量で言葉を吐いた。


「まあええわ。あんたに任せるわ」

「「任せちゃっていいの?!」」

「ま〜かせ〜なさ〜い」

『力になるよベイビー』

「「キモイよ!それ!ベイビー言ってるよ!!」」

『僕がいるからにはもう安心さ、ベイビー』

「「余計心配だよ!!」」


ブチョウの召喚獣:クマさんの突然の登場に、会場は悲鳴で溢れかえった。
なぜクマさんがこの場に現れたのか気になるところだが。

トーフは頭を抱えながらも、唖然としているおじさんに声をかけた。


「ほな、第4戦を始めてくれや」


それにTHE☆鼻水がつっこんだ。


「待てよ!いいのか?変な物体がいるぞ!」

「仲間か?あれは仲間なのか?仲間だったら反則だろ?!」

「追い出せよ!な!」


THE☆鼻水の反論にブチョウが応えた。


「変な物体ってどこにいるのよ?」

「「お前の背後にいるだろが?!!」」

「何言ってるのよ。クマさんは私の一部よ」

「「マジで?!!」」


思わず彼女の仲間のチョコとサコツまでもが突っ込んだ。
ツッコミを気にせずブチョウはおじさんに声をかけた。


「ゲームを始めようじゃないの」

「待て!後ろの物体はあのままでいいのか?!」


おじさんは応えた。


『あ〜のお方の〜一部でした〜ら仕方な〜いことで〜す。ゲ〜ムを続行しま〜しょう』

「「しちゃうのかよ?!!」」


+ +


『では〜、ゲ〜ムを〜始めた〜いと思〜います』


おじさんの声を合図に、その場にいたスタッフが「入ります。」と言うとカップの中にサイコロをいれ、振り始めた。
ジャラジャラと音が鳴る。
カップの中でサイコロ二つがぶつかり合い、音を奏でる。
はじめてやるゲームに緊張するチョコとサコツ。
不敵な笑みを浮かべるトーフ。
クマさんと一緒にカップを見つめるブチョウ。
THE☆鼻水もじっとカップを睨んでいた。

暫くして、音が鳴り止み、その場は静かになった。
そして、スタッフが口を開いた。


「半か、丁か。お選びください」


一瞬沈黙になったが、相手の一人が叫んだ。


「半だ!」

「俺も半」

「半」


後を追う形で仲間も同じ事を言う。
それにおじさんが目を丸くした。


『お〜や〜、い〜いんです〜か?みな〜さん同〜じ答えで?』

「いいんだ。俺らが考えた結果が同じなだけだ。さあ、そっちはどうするんだ?」


得意げそうに事を話すTHE☆鼻水の中心の男。
やけに自信があるような笑みが気になる。

対し、表情を顰めているチョコ。


「………」


半なのか、丁なのか。
チョコには決められなかった。
2分の1の確立。
間違えたら終り。

ここはやはり勘で当てるしかないのだろうか。
だけどここでもし退場になってしまったら…

"ハナ"が取得できない可能性も高まる。

どうしよう。

すぐ隣りにいるサコツの表情を見てみると、彼も冴えない顔をしていた。
きっと同じことを考えているのだろう。


「安心するんや。チョコ」


不安で一杯だったチョコの耳にトーフの微かな声が過ぎった。
サコツにも聞こえたのだろうか、ピクっと長い耳を動かし、トーフを見る。

二人から視線を浴びたトーフは落ち着いた表情をしていた。
小声で言葉を繋げた。


「これはワイらの勝利やで」


トーフの自信一杯の言葉に目を丸くする。
サコツが小声で訊ねた。


「待てよ。何でそんなに言い切れるんだ?」

「そうよ。相手なんてさっさと決めちゃったのよ……」


そこでチョコは閃いた。

相手全員が真っ先に"半"と自信有りげに言った。
なぜか全員が同じ回答。なぜ?それはきっと

相手はイカサマをしたのだ。

そうとしか考えられない。

だとすると、結果もきっと"半"なのだ。

"半"と言えばゲームに生き残れるっ。


「これは"半"じゃないで」

「?!」


"半"と言おうとした瞬間、トーフの小声が邪魔をした。
不機嫌そうにチョコも小声で訴えた。


「何で?あれは"半"じゃないの?」

「え?何で"半"なんだ?」


お馬鹿なサコツにはなぜそう言いきれるのか不思議でたまらなかった。
チョコは応えようとしたがやはりトーフが邪魔をしてきた。


「相手チームはきっとイカサマをして結果を"半"だと言い切ったんやな」


トーフと同じ意見だったため、チョコは頷くだけだった。


「せやけどな」


前言を打ち消す形で続ける。


「あれは"丁"やで。丁」

「何で?」

「今はまだ"半"やけど、今から"丁"になるわ」

「え?」


トーフの断言にチョコもサコツも目を丸くした。
何故そう言いきれるのかトーフは説明する。
不敵な笑みを浮かべて。


「言ったやろ?ワイらも今から"イカサマ"するってな」

「…」

「まさか…」


サイコロ2つが入っているカップに目を向ける。
パッと見では気づかないが、よ〜っく見てみると分かる。

カップの下には細い細い糸が見える。

糸はカップの中にまで続いていて、
サイコロに繋がっているのだろう。
そして糸が伸びている元を見てみて、確実に分かった。

糸はトーフの裾から出ていたのだ。

トーフは糸遣い。糸を自由に操れる。
いつそんな仕掛けをしたのか気になるところだが、食い逃げ万引きのプロのトーフのやることだ。
イカサマについてもプロなのだろう。

全てが分かった二人は何も言わないことにした。
今からイカサマをするとトーフが言ったのだから邪魔してはならない。

相手にばれないように、こちらもイカサマ返しをしなくてはならないのだ。


トーフは真剣な眼差しでカップの中にまで続いている糸を凝視する。
そのまま、小声で言った。


「ほな、教えてくれや」


その声に反応したのは、ブチョウ…ではなく、その背後にいるクマさんであった。
クマさんも上手に忍び声で言葉を繰り出す。


『任せてくれよベイビー』


ひそひそ声のため、キモさも倍増☆

ちなみに声は相手には聞こえていないようだ。

二人(二匹?)は小声のまま会話をする。


『右に糸を引いてご覧よベイビー』

「……こうか?」

『そうだよ。次は手前に糸を引いてみな』

「…」

『上手いよ。その調子で優しくやさし〜く糸を手前に引いて、そう。その調子だよベイビー』


メンバーは自分らにも聞こえるクマさんの囁きに、耳を抑えて我慢するのだが
これ以上聞いていると…死にそうだ。
ピクピクと震えながらも、声に耐える。

やがて、トーフは糸を引く動作を止めた。


『もう大丈夫さベイビー。キミらの勝ちさ〜』

「ホンマおおきに」

「もういいようね」


二人(二匹?)の間にブチョウが割り込んできた。
トーフも小声から普通の声に戻して、応答した。


「もうええで」

『さ〜あ、早〜く予想を〜立て〜てください』


いつまでも予想を立てないこちらのチームにおじさんは注意した。
すまん、と軽く謝って


「もう決まったで」


トーフは言い切った。


「ワイらメンバー全員で"ピンゾロの丁"に賭けるわ」

「?!!」

『ピンゾロの丁〜で〜す〜か〜?!』


トーフの発言にほとんど全員の人が驚いた。
チョコもサコツも同様。
自分らの選択権までもがトーフの一言にとられてしまったのだから。

しかもピンゾロの丁と言い切って。


「お前ら勝負に出たな」

「"ピンゾロの丁"って1と1の目ってことだぞ?」

「もし結果が"丁"だとしてもピンゾロではなかったらお前ら負けになるぞ」


THE☆鼻水が冷やかしてくる。
彼らにはイカサマによって結果は"半"だと確信しているため
"丁"だと言い切ったこちらのメンバーを非常に馬鹿にしているのだ。

しかし、トーフはそれにも動じなかった。


「勝負や。もし結果が"ピンゾロの丁"じゃなかったらワイらは負けを認めるわ」

「「?!!」」

「トーフちゃん!!」

「チョコ、安心しなさい。タマを信じるのよ」


「では、結果を見てみたいと思います」


トーフのイカサマに気づかずにカップを持ったスタッフが全員に確認を取る。
全員は頷き、それを見ておじさんがすかさず叫んだ。


『さ〜結果発表〜で〜す!サイコロ〜の出目〜の和は〜"半"か"丁"か!!』


結果は……




「出ました!!ピンゾロの丁!!」

「「!?」」


思いもよらなかった結果にTHE☆鼻水はカップに視線を向けた。
そこに見えるのは1の目を出しているサイコロが二つ。

ピンゾロの丁だった。

THE☆鼻水は予想が外れたため、退場。
そのためTHE☆鼻水には生き残りがゼロになる。

…と、いうことは…


『勝者〜、桜色の〜乙女ちゃん〜率いるチ〜ム!!』


おじさんの叫びの後、わあと観客は盛り上がった。
負け組にいたクモマもソングもこちらに駆けつけ、喜び合う。

ラフメーカーらは勝負に勝ったのだ!!

観客に大きく手を振って、勝利したことをアピールする。
対しTHE☆鼻水は、自分らのイカサマが何故失敗に終わったのか不思議でたまらないようだった。


『優勝者〜には、賞品と〜おま〜け〜を贈呈し〜ます!』


そして、ラフメーカーの手には賞品の"ハナ"が渡り、ついでにおまけも貰った。

面白いショータイムをありがとう!と観客から声が漏れ聞こえる。
こちらも楽しかった、と笑顔で返し、ラフメーカーは舞台から去っていった。


そして、人気のいないような場所へ行くと、ようやく手に入れた"ハナ"に早速"笑いの雫"を1滴掛け、"ハナ"をひょうたんの中に封じ込めた。

これで、この村も安心だと微笑みあうメンバー。
そして

「ね〜ね〜!」


チョコがトーフに訊ねた。


「どうやってさ〜"半"を"ピンゾロの丁"に変えたの?」


誰もが気になっていたことに、トーフはすんなり応えた。


「クマさんに教えてもらったんや」

「何を?」

「"ピンゾロの丁"になるにはサイコロに繋がっている糸をどうやって引けばええのかを」

「あ、それで手前に糸を引くとか言ってたのね」

「でもよ、何でクマさんなんだ?」

「クマさんは透視できるのよ」


素朴なサコツの質問にブチョウが応えた。
トーフがそのまま繋げる。


「クマさんの援護によって糸を引いてたんや。どや?これがワイのイカサマ作戦や?」

「「……」」


何ともあくどい手口に全員が言葉を失う。
唖然としているメンバーにトーフは遠慮なく話題を変えた。


「ところで、"ハナ"と一緒にもろたおまけって何やねん?」


それにようやく口を開いた。
クモマが。


「本当だよね。気になるよね〜このおまけ」


"ハナ"と一緒に渡されたのは大きな箱。これがおまけらしい。
それを抱えているサコツが興味深く観察しながら。


「結構でかくて重いんだよな〜これ」

「何なのか開けて見るか?」


同じく興味深そうにおまけを眺めるソング。


「うんうん。開けよう開けよう〜!」


ワクワクしながらおまけの箱が開けられるを待つ。
チョコをはじめ全員が中身を楽しみにし、サコツが箱を開ける。

開けるとすぐに箱の中から緑色の物体が飛び出してきた。
突然のことに、その場に尻餅をつくメンバー。
緑色の物体は、生物のようで、元気良くメンバーの周りを走り回っていた。

その緑色の物体の正体は…


「「豚かよ?!!!!」」


豚だった。
全員のツッコミはまだ続く。


「「緑色なのかよ!!!」」

「俺はエリザベスだけで十分だ―!!他の豚なんかいらね―よー!!!」


サコツはそう喚くと、急いで自分らの車へ戻り、愛しのエリザベスを抱きに行った。
他のメンバーは呆れて何もいえなかった。

緑色の豚はというと、箱から出れたのが相当嬉しかったのか、それとも仲間が出来て嬉しかったのか
メンバーの周りをグルグルと走り回っていた。





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ラフメーカー「緑色の豚」をゲット!

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