+ + +

「やった〜!また当たり〜!!」


キャーキャーはしゃぐ声が響く。
ゲームを楽しんでいる人も、スロットゲームをしている彼女に目を向ける。
そこには、緑色のドレスを着た女が、稼いだコインに埋もれていた。

そんな彼女に気づいて、白のスーツを着ているクモマが話し掛けた。


「わ〜チョコ…すごいね〜。よくここまで稼いだね」


緑色のドレスを着たチョコが、笑って応える。


「いや〜当たりまくってね〜。楽しいね〜!」

「うん。ギャンブルって楽しいね」

「クモマはどのぐらい稼いだの?」


コインを何枚も入れてスロットを開始させながらチョコが訊ねる。
クモマは眉を寄せて


「チョコほどはないよ」

「そう?ならバンバン稼がないと〜!」

「う〜ん…稼ぎたいんだけれど、難しいよ。なかなか当たらないし」

「ゲームとかは運よ。運!あとスロットゲームだったら場所にもよるね」

「あ、そうなんだ?」

「そうよ〜!あ、ここの場所でスロットしてみたらどう?ここ、当たりまくるよ〜」

「いや、僕はいいや…。トーフのところへ行こうと思ってるから」

「あ、そう?せっかくのチャンスなのに」

「ゴメンね」


頬を膨らませるチョコにクモマは別れを告げると、自分の稼いだ適量のコインを抱えて、その場から離れていった。


+ + +

ソングの様子が気になるトーフは、真っ先にソングの元へ駆けていた。
銀髪のソングを探す。
しかし、なかなか見つからない。


「どこにおるんや?ソング」

「ここにいるぞ」


すぐ側から声が聞こえた。
顔を上げて、見てみると、そこにはソングが立っていた。


「あ、おったんか?」

「お前も度々失礼なヤツだな…」


機嫌を悪くするソングにトーフは笑って誤魔化した。
そんなトーフにソングは訊ねる。


「ところで、お前俺に何の用だ?」

「おお。そうやった」


そして、トーフはソングに心配そうな眼差しを送って、口を開いた。


「あんた、忘れられへんみたいやな。メロディさんのこと…」

「……」


目を見開いて、黙り込むソング。
図星のようだ。
ちなみにメロディとはソングの許婚の子のことだ。
無念なことにメロディは魔物に殺されてしまったのだが。

トーフは容赦なく突っ込んでくる。


「あんま無理するんじゃないで?あれは確かに残酷やったわ。ワイも思い出す度辛いねん…」

「お前に関係のない話だ」


恐ろしく低いソングの声が聞こえた。
ソングはいつもメロディの話になると態度を悪くする。


「メロディは死んだ。もう終わったことなんだ。メロディの名前を口出すな」


やはり態度が悪い。
そんなソングを見て、機嫌を損ねる。
トーフも聞かなければよかったと今更反省する。


「悪かったわ」

「別にいい。だけどもうメロディのことは言うな」


そして、ソングはそっぽを向いて。


「思い出す度、辛くなるから」

「………」

「では、俺はそこで腰でもかけとくか」


近くにあるベンチに目をつけると腰掛に歩む。
そのまま離れようとするソングにトーフは声をかけた。


「待てや。あんたはゲームせえへんのか?」

「俺は賭け事は苦手なんだ」

「そうなんか?したことあるんか?」

「ま〜昔からよく付き合わされていたからな」


メロディにか。


「お前はゲームしないのか?」


逆に問われトーフは首を振った。


「するでするで。あんたもあとで参加せえよ?」

「気が向いたらな」

「ほな。ワイはカードゲームでもしとくかい、何かあったら来るんやで」

「わかった」


ソングに自分の行き場所を告げると、トーフはそのカードゲーム広場へ、ソングは近くのベンチに腰を下ろしに行った。


+ + +


騒ぎが大きくなっているのに気づき、サコツは人ごみを掻き分けながら騒ぎの中心へと向かう。
人の流れは激しく、中心へ行くのにも苦労する。
これぞ野次馬パワーだ!

やがて、中心へ辿り付くと、そこには金色に輝く男がいた
と、思いきや金色のドレスを着ていたため、それが自分の仲間だということに気づいた。


「よ〜ブチョウ〜。何してるんだ?」


陽気に声をかけるサコツ。
金色のドレスのブチョウは彼の存在に気づかず、ゲームに集中しているようだ。
対戦相手はやはり派手な格好をしている男。
カードゲームをしているようだ。


「俺は一枚もらおうか」


そして、自分の手持ちのカードを一枚その場に捨て、カードの山から一枚新しいのを引く。
ポーカーをしているようだ。

ブチョウはカード交換はしないようだ。
観客は黙ってゲームの結果を待つ。サコツも黙って待つ。


先に男が自分のカードをその場に広げ、相手のブチョウに見せつけた。


「スペードのエースの"4ペア"だ」


強い結果に驚きの声を上げる観客。
サコツもつられて声を上げる。

さあ、次はブチョウだ。

ブチョウの結果は………。


「猪鹿蝶(いのしかちょう)!」


やっている次元が違った。


「ま、参りました……」

「「参っちゃったのかよ?!」」


次元の違うブチョウに負けを認める相手の男に観客全員がツッコミを入れた。
その中でサコツがブチョウに声をかけた。


「よ〜ブチョウ〜」

「あら、チョンマゲ。いたのね。あんたちゃんと稼いだ?」

「おう!なかなか稼いだぜ!ブチョウはどうなんだ?」

「私は念力でコインを増やしたから余裕よ」


本当に、実行しちゃったんだ…。


「そっか。さすがブチョウだぜ!」

「おお〜。二人ともここにおったんか〜」


盛り上がる二人の間にトーフがてくてくと走って割り込んできた。
大いに盛り上がるその場。


「おっす!トーフ!」

「よう!楽しんどるか?二人とも」

「ベラボー楽しんでるぜ☆やっほ〜い!」

「50%が果実だったわ」

「それはよかったわ」


可笑しい回答だったがトーフは突っ込まないでおいた。
と、ここへまた来客が来た。


「あぁここにいたんだね。トーフ。探したんだよ」


クモマだ。


「お〜クモマ〜!実はワイも今ここに来たところなんやで」

「俺も来たばかりだぜ」

「全く、みんな私の周りに集まってくるのね。さすが私人気者だわ!プリプリ」

「プリプリの意味がわからないよ?!」


ソングの代わりにクモマがツッコミを入れた。
そして、気づいた。


「あれ?ソングは?」

「ソングは今向こうで休んでいるところや」


彼女のことを思い出してへこんでいるということはあえて口にしなかった。
ふ〜ん。と頷くクモマに重なる形で今度はトーフが訊ねた。


「チョコはどこにおるんや?」

「チョコはね」


クモマが応えた。


「スロットゲームで大当たりを出しているよ。コインに埋もれて大変そうだったよ」

「…そか」

「チョコ、賭け事に強いんだな」

「ま、私には負けるかしら」

「あんたの存在には誰もが負けるで」

「えっへん」


そして、ブチョウは胸を張った。
確かにブチョウの周りには大量のコインが山積みになっている。
あんな調子で稼いだのだろう。
しかし、そのコインの山の中に密かに猿とか猿とか猿とかが混ざっているように見えるがきっと気のせいだろう。うん。気のせい…猿がこちらを威嚇してきてますが気のせいですよ。はい。

と、そのとき、


「…何だ。みんないたのか」


別な声が混ざりこんできた。
振り向いてみるとそれはソングだった。
もうへこんでいないのだろうか?


「…何や。あんた大丈夫なんか?」


トーフが心配そうに訊く。
同じく、ブチョウも訊いた。


「あんた、スーツ似合ってないわね」

「お前いつもいつも失礼だな?!」


ソングが叫び声を上げた。
あの様子からして、ソングは機嫌を直したらしい。
よかった、と胸を撫で下ろすトーフ。

そして、あたりを見渡してクモマが笑い声を上げた。


「なんだ、チョコも来たんだね」


言われ、全員がクモマの目線を追ってみた。
そこには、大量のコインを担いだチョコの姿が。
本当にたくさん稼いだんだ…。とメンバーは目を丸くする。


「やっほ〜!みんなここにいたんだね〜」

「何だ、チョコ。まだスロットやってるのかと思ったよ」

「飽きちゃったわよ。あんなにバンバンあたるんだもん」


ちょっと嫌味臭いぞ!


「何や、みんなかなり稼いだんやな〜。すごいで」

「…みんな賭け事に強いんだな…」


ボソリと呟くソング。
自信なさげの声に、全員が

"こいつ、絶対に賭け事に弱いぞ"

と確信した。
やがて、サコツが口を開いた


「みんなでトランプしようぜ!暇つぶしにさ」


それにソング以外の全員が速攻賛成した。
そしてソングも無理矢理賛成に変えられた。


「いいわね!トランプ。何のゲームする?」

「僕は7並べがいいなぁ」

「お前、7並べ大好きだな?!」

「私は亀さんがいいわ。亀さん」

「お前はよくわからねぇ」


元気を取り戻してくれてよかった。とツッコミまくりのソングを見て思うトーフ。


「亀さんでもウミガメよ」

「んなことどうでもいい!!」

「ウミガメはいいとして、何をするんだい?」

「やっぱここはババ抜きだろ!ババ抜き!」


サコツの案に全員がすぐに同意した。


「いいね、ババ抜き!私強いよ〜」

「ババ抜きか〜…頑張ろう」

「ジョーカーを引いたら負けのゲームやろ?やったろうじゃないか」

「どこかの婆さんなら、この前轢いたわよ。スローモーションで」

「轢くなよ?!しかもスローで?!ってスローかよ!!」


全員が盛り上がっている中、サコツは行動が速い。
すでにトランプを全員平等に配りはじめている。
チョコは自分のところへ廻ってきたカードを一枚ずつ丁寧に取って、自分にしか見えないように、カードを見る。
ブチョウは自分が回ってみる。
もう彼女のことはほっといた様子のソング。
クモマは上の空になりつつもカードが全部配られるのを待つ。


「よっしゃ!配り終わったぜ!」


やがて、カードは全て平等にメンバーに分けられた。
自分のカードを取って、同じ数字のカードがあるか、確認する。

同じ数字のカードがあったら、中央にそのカード2枚を捨てていく。
ぽんぽんと捨てられていき、そして、全員のカードは態勢を整えた。

不敵な笑みを浮かべあうメンバー。
別に何も賭けてはいないのだが、ここは勝負所、全員の目が真剣だ。


「ほな。誰が誰のを引くか?」

「ここは私から始めるのが基本でしょ」


ブチョウが偉そうに言った。
全員は言い返さなかった。


「んじゃ、ブチョウから行くぜ」


サコツの声を合図に、ブチョウは自分の右隣にいたチョコのカードを一枚抜く。
そして、当たりだったのか、引いたカードと同じ数字のカードを中央に捨てた。
引かれて悔しい表情を取るチョコ。


「やったわね〜姐御…。よっし!私も負けないわよ〜!」


そして、チョコはクモマのカードから一枚引いた。
しかし、当たりではなく、カードが一枚増えるだけであった。
クモマは安堵の表情を浮かべる。

そして、ソングのカードから一枚抜くため手を伸ばすクモマ。
そこで気づいた。
ソングの表情に。

真ん中のカードを抜こうとすると、ソングは異常な笑みを浮かべているのだ。
試しに他のカードを抜こうとすると、苦い表情を作っている。


こいつがジョーカーを持っている!!


全員が確信した。



そして、クモマは案の定、一番左のカードを抜き、ジョーカーを引かずに済んだ。
対しソングは悔しそうだ。


あんた、顔に出すぎですよ。顔に出すぎですよ。顔に出すぎですよ。





こんな風に、全員で盛り上がっているときだった。
突然、事件がおきた。
村の照明が全て落とされたのだ。
ゲームを中断する村人。
同じくババ抜きを止め、突然の展開に慌てるメンバー。


「な、何だ?!」


サコツが叫ぶ。


「何でみんな、ジョーカー引かないんだ…?」


今起きた事件より先にババ抜きの結果に疑問を抱くソング。
それは、あなたが顔に気持ちが出まくっているからですよ。


「ねえねえ?!何よ〜?これ!何が起こるのよ〜?!」

「わからへん!何やねん一体…」


真っ暗闇でメンバー全員が騒ぐ。
そのときだ。
近くに設置されていた舞台に、一つの照明がポツリと照らされたのは。

口を閉じ、そこに注目する。


照らされた舞台の上には、キンキン輝く服装を着たメガネのおじさんがマイク片手に、立っていた。
隣りには何か赤い膨らみがあった。あの中に何かが入っているみたいだ。

黙って見つめる村人とメンバーにそのおじさんがマイクに声を吹き込んだ。


『レディ&ジェントルマン!!皆さん、元気で〜すか〜?』


突然のおじさんのテンションについていけないメンバー。
対し、イエーイと騒ぎ始める村人。

この様子から、これは恒例のことなのだろうか?


おじさんは続ける。


『今か〜ら、ショータ〜イムのはじま〜りで〜す!』


何ともいえない口調だ。


「ショータイム?」


クモマが問い掛けるがが、全員も何がなんだかわからなかったため、返事を返さなかった。


『本日のメ〜インはこ〜ちら〜!!』


するとおじさんは密かに後ろに設置されていた大きなルーレットを回し始めた。
ルーレットは華麗に回転し、ルーレットの矢印は、ある文字を指し、止まった。

おじさんはその文字を読み上げる。


『6〜人勝ち抜〜き勝負で〜す!!』


ワーと騒きを起こす村人。
なにやらここで何かが始まるらしい。
メンバーはまだわけが分からず、黙っておじさんの話を聞く。
淡々とおじさんはこれから始まることを語る。


『では今から〜このショータ〜イムに参加する2つの6人グループを決めた〜いと思〜います。…希望〜者は〜いま〜すか〜?』


すると、自分らのすぐ隣りにいた男が堂々と挙手した。


「おうおう。やったろうじゃねーか。俺たち最強6人組、"THE☆鼻水"!このまま連勝してやる!」


握り拳を作る男。
この様子から前もこのショータイムの時間に参加し、勝ったみたいだ。
男に言われ、男に近くにいた残りの5人もワーワー荒れるように騒ぎ出す。
メンバーは黙ってそんな男らを見る。

そしてTHE☆鼻水の6人も連勝しているだけあって、行動が素早い。
言われる前におじさんのいる舞台の上に上がっていた。

自分の隣りに並ぶ6人を見て、おじさんは満足そうに頷き、続けた。


『あと1チーム〜。この連勝中のチームと戦いた〜いと〜いう人〜はいますか〜』


しかし、誰も挙手しない。

さすが連勝しているチーム。村人全員からも恐れられているようだ。
メンバーも顔をあわせないように、目線を逸らす…が。

ここで、おじさんが、導きの道を声で開いた。


『それで〜は〜、みなさんを誘い出すた〜めに〜本日の〜賞品を言〜いま〜っす!』


おじさんはそう言うと、自分の隣りにある赤い布の膨らみを観客に見せ付ける。
赤い布は賞品を隠すために覆っているもののようだ。
興味津々に目を向ける観客の様子を見て、おじさんは元気良く、声を張った。


『本日の〜賞〜品はこ〜ちら〜!』


そして、赤い布をバッと払い、中の賞品が姿を現した。
それを見て、メンバーはギョっと目を見開いた。

賞品は、植木鉢に入っている花。
見た目は美しく、バラのような容姿をしているが、それから発される"気"が異常だった。

トーフが叫んだ。


「"ハナ"や!!!」


それに、やはりなと息を呑むメンバー。
トーフの叫びに反応して観客もこちらも目を向ける。

気にせずクモマが小声で訊いた。


「やっぱりあれは"ハナ"なの?」

「そや。あれから異常な"笑い"を感じるわ。きっと村の人々から"笑い"をとったんやろうな」

「でも人はみんな笑ってたじゃないの」


続いてブチョウも小声で訊く。
他の観客には聞こえないぐらいの声で、メンバーは会議をする。


「こん村の"ハナ"はつい最近生えたばかりのようやな。そこまで異常が表れておらん」

「どうするんだ?"ハナ"を消さないといけないんだろ?」

「でもよ、"ハナ"はこのショータイムの賞品なんだぜ?どうやって手に入れれば…」


そこで、全員が閃いた。


「「優勝すればいいんだ」」

「待てよ。俺は反対だ。そこまでして"ハナ"なんかを…」

「何いってんのよ〜!あれをほっといたらこの村がやられちゃうのよ!私たちが救ってあげなくちゃ!」

「何で賞品なのかが気になるところなんだけど…」

「人々は知らへんのや。あの花が"ハナ"ということに。見てみ、あの"ハナ"。今回のはやたらと綺麗な花やないか」


言われてみれば確かにあの"ハナ"は一見普通の綺麗な花にしか見えない。
しかし、あれは"ハナ"なのだ。ラフメーカーの勘。そして、トーフの"笑いを見極める力"で確信している。

ほうっておいてはいられない。


「ワイらが参加したるわ!!」


突然、トーフが手を振って、大声を上げた。
他メンバーも後に続ける。


「やるやる〜!優勝してその"ハナ"がほしいな〜☆」

「こっちにはギャンブルのプロのチョコがいるから優勝間違いなしだよ」

「よっしゃ〜!暴れまくってやるぜ〜!やっほ〜い!」

「さあみんな頑張るのよ」

「…………はぁ…やるのか………はぁ…」


『お〜っと!挑戦者がでま〜した!で〜は、こちらの舞台にあが〜ってきてく〜ださ〜い!』


おじさんが喜び一杯の声で言うと、メンバーの周りはザザっと人が避け、道が開いた。
その中をメンバーは歩いていく。

何か、いい気分だ。


しかし、気を緩めたらいけない。
これは真剣勝負だ。勝たなくてはいけないのだ。

"ハナ"を消すために、まずは賞品のその"ハナ"をゲットする。


舞台の上に上がると、先に挙手したTHE☆鼻水のメンバー6人が偉そうに立っていた。
やけに派手な格好をしている6人。
対し、やはり少し貧相な6人。

睨み合う6人対6人。


こいつらに勝たなくてはならない。


『そ〜し〜て〜、優勝したチ〜ムに〜は賞品のほ〜かに〜オマ〜ケもついて〜きま〜っすので〜頑張ってく〜ださいね〜!』


12人の耳には、おじさんの声は入らなかった。
真剣勝負が今、はじまるから。






>>


<<





------------------------------------------------

やっぱり女の子はギャンブルに強いっていうイメージがありますよね?(自分もそんな感じだし)
(自分、花札、めっちゃ強いし(笑

------------------------------------------------

inserted by FC2 system