様々な光や音で満ち溢れている 愉快な村


7.ギャンブルの村


それは村に訪れた直後の出来事だ。
メンバーらは食べ物等をゲットしようということでたまたま通りかかったこの村へとやってきていた。
しかし、村の門前には看板が邪魔する形で立っていた。

『貧相な方、ご入場お断り』


「「……」」


看板に書いてあるその字を見て、その場は沈黙になった。
やがてクモマが口を開いた。


「…どういうこと?これは…?」


トーフが頭を掻く。


「何やねん。失礼な村やな〜」

「なぁなぁ」


じっと看板を眺めるメンバーにサコツが身を乗り出して、訊いた。


「何て書いてるんだ?これ」

「お前読めねぇのかよ!?」

「前に言っただろ?俺はバカなのが自慢だって」

「哀しい自慢はやめてくれ」


サコツのバカさ加減にソングは頭を悩ます。
バカなサコツのためにブチョウが看板の字を読み上げた。


「『トイレットペーパーが悩んでいます』」

「んなこと書いてねぇだろが?!」


可笑しいブチョウの読み上げにソングが素早く突っ込んできた。
代わりにチョコが笑いながら看板を読み上げる。


「『貧相な方、ご入場お断り』だよ〜。も〜バカだね〜サコツは」

「最高の褒め言葉だ。恩に切るぜ」

「"バカ"を褒め言葉と受け取ってしまったぞこいつ…」

「ま、それはいいとして」


クモマが再び口を開いた。


「"貧相な方"ってどういう意味なんだろう?」

「貧相…つまりはワイらみたいなヤツのことやろ?」


そしてトーフは自分の服装を見直した。
全員もつられて自分の格好を見る。


クモマ…帽子を被って、大工の格好
トーフ…着物(侍姿)目には眼帯が…
チョコ…腹と生足見せ放題
サコツ…スカジャンの下には何も来ていなく上半身露出しまくり
ソング…つな着の作業着
ブチョウ…マントの下に"ま゜"印のノースリーブ。便所サンダル愛用


貧相って言うか、個性溢れまくりの服装である。
再び服装を見直して、ブチョウが胸を張った。


「私は完璧じゃないの」

「いや、ダメだろ?!しかも便所サンダルだし」

「私はあんたよりは絶対マシだと思ってるわよ。何よその作業着。つな着なんてダサいじゃないの。ダサ男」

「ダサ男ってこいつ…っ!!男にファッションセンスなんて関係ねーよ」

「何言ってんだよ、男はファッション命だぜ?」

「服着てないヤツに言われたくねーよ?!」

「露出はファッションに大切だぜ☆」

「うんうん。露出最高!女も見せるものは見せなくっちゃ!」

「僕は服装とか考えるのがダルイからちょっとなぁ…」

「ほな。ワイがまとめさせてもらうわ」


そして、トーフが全員のファッションチェックをした。
評価は…


「皆、肥溜めレベルやで…」


酷く最低な評価だった。
クモマが喚いた。


「そんなこといわれてもねぇ…」

「そしたら何だ。この村に入れないって事か?俺らは」

「いや、意地でも入ってもらうわ」

「何で?」

「こん村にも"ハナ"があるからや」

「「………やっぱりか…」」


全員が肩を落とした。
そんなメンバーを見てトーフは再び頭を掻く。


「仕方ないことや。今世界には"ハナ"が生えまくっているんやで?どの村にも"ハナ"が必ず咲いておるわ」

「ま〜それを消すために僕らは旅をしてるわけだけれど…」

「村に入れなかったら意味ね〜ぜ?どうするんだよ?」

「ホンマ困ったもんやわ…」


唸るメンバーと対照的に何故か非常に楽しそうな笑みを浮かべるチョコ。
彼女に気づいてクモマが目を丸くした。


「どうしたの?チョコ。何かご機嫌いいみたいだけど?」

「おいおい。笑ってる場合じゃねえだろがお前は」

「何かいい案でも思いついたんか?」


トーフの問いにチョコは、うふふふふと声を漏らした。
一歩その場から身を引くメンバー。

チョコが壊れた??


自分から離れていくメンバーを見て、チョコは手で招いてメンバーを呼び戻した。


「待って待って。皆離れないでよ〜」

「チョコ大丈夫か?いきなり笑い声あげるなんて不気味だぜ?」

「あはは。ゴメンゴメン。自分が役に立つ場ができたな〜って思って喜んでただけだから」


チョコの言っている意味が変わらずメンバーは首を傾げる。


「役に立つ場が出来た?」

「どういう意味やねん?」

「ま〜ちょっと待ってて〜」


そう言い残すとチョコは早々と車の元へ戻っていった。
メンバーは何をする気なのだろうと黙って見つめる。
やがて、チョコは手に"棍棒"を持って戻ってきた。
常に笑顔でいるチョコが、逆に不気味に見える。


「な、何する気だ?チョコ!!ソングを打つ気か?!」

「何で俺なんだよ!」

「ふふふ」

「笑いながら棍棒をでかくするな?!怖ぇだろ!」


棍棒を回して大きさを変えるチョコに突っ込むソング。
チョコはやはり笑顔のまま、全員に告げた。


「では、みんなで集まって〜」

「お?何だ何だ?」

「何をする気なんだい?チョコ…」

「嫌な予感がするな…」

「何や面白そうやな〜わくわくするで」

「さ〜みんな私の元に集まるのよ」

「お前は動く気ゼロだな」


そして、メンバーがブチョウを中心に1つの固まりになった。


「よ〜っし!それじゃ〜みんな逃げないでよ?」


謎の警告を発するチョコにメンバーは嫌な汗を流す。

逃げないでよ…って…何をする気なんだ?


言うとおり逃げずにその場に立ち尽くすメンバーの周りにチョコは棍棒で何かを描き始める。
まず、メンバーの固まりを囲むように大きな円を描き、
その中にチョンチョンとまるで"ラクガキ"を書いているかのような捌きで作業を進めていく。
メンバーも目をチョンにして見つめる。


「一体…何を…?」

「ま〜ま〜黙ってみててよ」


チョコに注意を受けるクモマ。
そして、しばらく"ラクガキ"を描いて

出来上がったようだ。



「で〜きた〜!!」

「え?何だい?これ…?」

「ラクガキにしちゃあ…ウサギ並にデカイわね」

「可愛らしい大きさだな。その例え…」

「おいおい、チョコ。これってまさかさ〜?」


サコツは知っているかのような素振りで笑顔を見せる。
サコツの態度にトーフがすばやく突っ込んできた。


「何やねん。サコツは何か知っとるみたいやなぁ〜」

「あぁ〜前の村の時にチョコの力を見たんだぜ」

「「チョコの力?」」


全員が声を合わせた。
サコツは満足そうに頷いた。


「そうそう。チョコって実はな〜」

「では、いっきま〜っす」


"魔方陣"の中に立っているメンバーの会話を中断させて、チョコも陣の中に入り込む。
陣の中から棍棒を軽くトンと地面に突き立てると
メンバーは悲鳴でいっぱいになった。

いきなり放たれたすごい光。
思わず目を閉じる。
チョコの書いた"ラクガキ"こと"魔方陣"が光を放ったのだ。


「チョコは魔法が使えるんだぜ!」


サコツが遅いながらも叫んだ。
メンバーは、すごいすごいと魔法に感動している様子。


光に包まれ、メンバーは魔法に掛かった。



「どうどう?いい感じじゃない〜?」

「すっごい…。これって魔法なの?」

「やるわね。チョコ。出直しちゃったわ」

「出直してどうする?!それをいうなら"見直した"の方だろが」

「わーワイもちゃんとなっとるんやな…ちょっと無理矢理っぽいけど…」

「なかなか似合ってるぜ!みんな!」


チョコの魔法に掛かり、メンバーの服装は豪華なものに変わっていた。
と、言っても男性陣はスーツ、女性陣はドレスなのだが。

黒スーツを着ているソングが恥ずかしげに呟いた。


「黒スーツってどうだよ…。喪服みたいだな…」

「な〜はっはっは。お前にピッタリじゃねーか喪服喪服〜」


そんなソングを馬鹿にして笑うサコツは赤スーツを着ていた。


「赤もどうだよ…」

「いいじゃねーか!髪色と同じで統一してるだろ」

「どっちもカッコいいよ〜。羨ましいな〜」


そのまま口喧嘩になりそうなソングとサコツの間に、白スーツを着たクモマが止めに入った。
二人のことを羨ましいといっているクモマであるが、
意外に彼もスーツが似合っていた。
髪がぼさついているのが気になるところだが。

男性陣が騒いでいるとき、女性陣も騒いでいた。


「姐御〜!ドレス似合ってるね〜!」

「あったりまえじゃない。私だもの」


緑色のドレスを着たチョコに褒められ胸をはるブチョウ。
顔は男なのに、体つきは女のブチョウは、意外にも金色のドレスが似合っていた。
だけど、何とも複雑だ…。


「ねえ、トーフちゃん。この服装なら村の中に入れそうじゃない?」


チョコはハイテンションのまま次は、皆のはしゃぐ姿を黙ってみていた青スーツのトーフに問い掛ける。
服装に慣れていないためか、ぎこちなくトーフが応える。


「これなら、大丈夫やねん。これなら福相に見えるわ〜」

「よかった〜」

「それにしても、あんたが魔法を使えるなんて思ってもいなかったで」

「こういう魔法なら使えるよ。だけど戦闘用の魔法は使えないんだ〜」


だから、戦えないよ。とチョコは笑って誤魔化した。
対し、女の子は戦わなくてもええで。と微笑み返すトーフ。
そんな二人の中にブチョウが割り込んできた。


「さあ、いい加減村の中に入るわよ」


言われて、思い出す。


「そうだったね。村の中に入らなくちゃ」

「…動きづらいな…」

「あ〜キツイぜこれ…」

「きゃ〜サコツ!スーツ脱ぐな〜!!」

「さ〜中に入ろうで。皆、貧相な姿見せるんじゃないで」


ギャーギャー騒ぐメンバーにトーフは一つ注意すると
さっさと村の門を潜り抜けていった。


「ちょっと待ってよ〜トーフちゃん〜」


自分らを置いてさっさと行くトーフを追いながら、メンバーも早々と門を潜っていった。



+ + +


門を潜り抜けると、そこはまるで別世界だった。
チカチカと様々な色に変わるライト。
派手な看板。派手な服を着る村人。
そして、異常な騒ぎよう。
喜ぶ人、悔しがる人、不敵な笑みを浮かべる人、苦い表情を作る人。様々であった。

この村では村人全員が賭け事をしているようだった。


「うわ…」


思わず声を上げるクモマ。
トーフもはじめて見る光景に口を閉ざしている。
サコツはワーワーと興味津々に村を眺めている。
チョコも同様。


「すっご〜い!何これ?ギャンブル?わ〜面白そう〜!」

「賭け事か…いやな感じだな」


対し、眉を寄せて嫌な表情を作るソング。
ブチョウは


「私の眉毛でも賭けてみるか」


禁句を発していた。
呆然と立ち尽くすクモマとソング、落ち着きの無いサコツとチョコ、冷静さが怖いブチョウを見て、笑顔を作ってトーフが言った。


「ほな、ここでいろいろと買物するか」

「待てよ、トーフ」


歩もうとしたトーフをサコツが止めた。


「ちょっとここで遊ぼうぜ」

「うんうん、私も遊びたい〜」

「確かに楽しそうだもんね」


サコツの意見にチョコとクモマまでもが賛成してきた。
対し、ソングは反対した。


「こんなとこいたら頭がおかしくなりそうだ。さっさと買物すませて、さっさと"ハナ"を消したほうが…」

「何言ってんのよ、フロッピー」

「お前が何言ってんだよ?!」


ソングのツッコミを無視してブチョウは続ける。


「ギャンブルは人生を大きく変える遊びなのよ。これを機にあんたも凡からフロッピーになりなさい」

「待ってくれ。それだったら俺は凡のままの方がいい」

「フロッピーをバカにするんじゃないわよ!」

「俺をバカにするんじゃねーよ!」

「そうだ!こいつより俺の方がバカだ―!!」

「お前は入ってくるなチョンマゲ!!」


突然入ってきたサコツにソングは叫んだまま突っ込んだ。
ボケツッコミを交わす二人にトーフも入ってくる。


「ソング以外のみんながここで楽しみたいみたいなや」


ソング以外の全員が頷く。


「ほんじゃ、ここで楽しもうやないか。実はワイもちょっと興味があるんねん」

「本当?」

「さっすがトーフだぜ!話が分かるやつだぜ!」

「わ〜こんなのはじめてだからワクワクするなぁ」

「ほら、凡。行くわよ」

「待てよ。くそ!賭け事なんか嫌いだ…」


泣き言を吐くソングであったが、ブチョウに足を引かれ、無理矢理ギャンブルの世界へと引き込まれていってしまった。


+ + +


「ね〜。一体"賭け事"って何なの?」


純粋なクモマは賭け事の意味を知らないようだ。
クモマはメンバーの中で一番はしゃいでいたサコツに問い掛けてみた。
サコツは非常にいい笑みで、こう答えた。


「知らん」

「知らね〜のかよ?!」


思ってもいなかった回答にブチョウに足を引っ張られているソングが叫ぶ。
彼も忙しいヤツである。


「賭け事とはな」


代わりにソングが答えてくれた。


「金品をかけてする勝負事のことだ」

「え?お金賭けるんだ?」

「ってか、コインだな。コインを賭けて、様々なゲームをするんだ」

「へ〜しりとりとか?」

「アホか?!そんな可愛いゲームのはずねーだろ!トランプとかだよ」

「トランプも十分可愛いような気がするけど…」

「コインを賭けてするからトランプも怖いゲームなんだ」

「へ〜7並べとかするの?」

「何でお前はそんな可愛いことしか考えられないんだ?トランプゲームでもポーカーとかブラックジャックとか…」

「おお〜お前意外にいろいろ知ってるんだな」

「ま〜ギャンブルが好きだった女が……」


ソングはそこまで言うと、その彼女のことを思い出したのだろう、
眉を寄せて急に黙り込んでしまった。


「…何て言ったか?」


よく聞こえなかったらしく聞き返すサコツ。
しかしソングを庇う形でトーフが話題を変えた。


「ほな、みんなここで好き勝手遊ぼうやないか」

「そうだね」


トーフの言葉に頷くクモマ。
サコツは先ほどのソングの言葉が気になったが、話題が変わってしまった以上、首を突っ込まないことにした。
そして、早速メンバーは行動に移した。

…と、その前に、一つ疑点があった。


「…トーフちゃん。お金あるの?」

「あ、そっか。どっちみち金がねーとダメじゃんかよ」

「念力で増やしてみようかしら?」

「…」


ブチョウのボケにソングがツッコミを珍しく入れなかった。
元気の無いソングが気になる様子のトーフであったが、
皆の意見のほうを先に応えることにした。


「…………みんな、ワイが今まで金を使ったことないというのは知っとるやろ?」

「「……………」」

「ばれないように、こっそりと、人のコインを奪ってくるんや」


不敵な笑みを浮かべるトーフ。
こいつ、言いやがった!!

しかし、メンバーはトーフの問題発言に突っ込まず、同意した。


「コイン一枚でもあれば、スロットゲームぐらいなんとかできるはずよ」

「自力で増やせばいいんだな。分かったぜ」

「…あんまり自信ないなぁ…」

「まぁ、そのときは念力で増やしてみるわ」


のみこみの早いメンバーだ。もうトーフの考えに突っ込むのは諦めているようだ。
対し、ソングは眉を寄せたままだった。


「ほな、みんな気をつけるんやで。とにかく一枚盗んで、それから増やしていくんや」


それに全員が無言で頷くと、
全員は別行動を開始し、早速実行に移し始めた。








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私はまったくギャンブルのことを知りませんので
私の頭の中のギャンブルでいきたいと思います。

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