風が吹く。
ザワっと草が音を立てて靡き、
それに伴って僕と隣にいる猫のトーフ(勝手に猫と解釈)の
髪、服も一緒に踊る。
トーフの場合は尻尾も大袈裟に靡いていた。


あぁ………いい風だ。


風は…僕の2番目に好きなもの。


気持ちがいい。










「子供も仕事しないとあかん村…かー」


風に煽られて、トーフがボソリと呟く。
それを聞いて、上の空になっていたクモマが、はっと目を覚ました。
少し間を置いて、トーフの言葉に応えた。


「面倒くさいよね。仕事」


意外な言葉にトーフは驚いた。


「え?何や。この村におる人みんな仕事大好き人間やかと思ってた」

「うん。好きな人もいるよ。だけど、僕は嫌い。不器用だから役にも立たないし。面倒くさいし」


仕事をしていても、邪魔者扱い。
やっていても楽しくない。

その上、面倒くさいのは、嫌いだ。



聞いて、トーフが眉を寄せた。


「ふ〜ん。そうか。面倒くさい…かぁ」


そして口を閉じた。
厳しい表情を作って。



どうも、クモマの言葉に引っかかってしまった。

面倒くさい…って


仕事も出来ないうえにこの少年は
面倒くさがり屋。
しかも先ほど上の空になっていたし…。



本当に、こいつが


ラフメーカーなんやろか?


先ほどの自分の"感"を疑う。
確かに少年から"笑い"を感じた。
握手して、少年がラフメーカーだっということを確信したのだが



少年は、こんな様子だ。
果たして、本当に大丈夫なんだろうか。




不安になってきた。



これでは、

一緒に旅に行きませんか?

とは言いづらい。



自分も、こんな面倒くさがり屋ののんびり屋とは旅をしたくないし…。


だけど、世界のためだ…

だけど………




少年を信用できない。
世界のことなんか、全くどうなってもいいって感じのこの少年のことを…。

……。

こいつは……後回しにした方がいいかもしれない…。
今は、何となく、クモマを誘いたくなかった。


まだラフメーカーがいるかもしれないから、
そっちを探してみよう。



「では、ワイはこの辺でサヨナラするわ」


思考を止めると、トーフはクルっと踵を返した。
一つ自分から離れていくトーフにクモマが叫んだ。


「え?大丈夫なの?」


心配そうに眼差しを送って。


「向こうに戻ったら、また追いかけられるんじゃない?」


「あ!!」


言われて、思い出した。
そういえば自分は食い逃げをして追いかけられていたのだ。
ここまで逃げ切ったところでのんびりと寝転んでいたクモマと出会ったのだった。

って、そういえば


「何で、あんたがそのこと知ってるんや?」


トーフの問いに、クモマが普通に応える。


「だって、普段静かなこの村が一気に騒がしくなったんだもん。何だろうと思って耳を澄ましてみたら、僕の行きつけの酒場(いつもジュース飲んでいる)のマスターの叫び声と、どこかで聞いたことあるような独特な声が聞こえてきたから…」

「あぁーこんな口調で話してるのはワイだけやもんな」

「うんうん」

「それでワイが追いかけられているってのが分かったんか」

「そだよ」


クモマは常に笑顔で


「ここにいたら安全だよ。あんま人通らないしね」


だから、この場所が好きなんだ。

と付け加えた。


そうだけれども…
トーフはまだ引っかかっていた。
クモマの性格に。


「一体キミが何をしたのか知らないけどさ。この平和な村を騒がせたんだから、何かすごい事でもやらかせたんでしょ?」

「…あぁ、まぁな…」


さすがに、何をしたのかとは尋ね難い。
そして、食い逃げしてきました。とも応え難い。


「ま、ここでのんびりとしていたら?」


クスっと笑って、クモマは続けた。


「心身を休めるには、絶好の場所だよ」


のんびりと誘ったクモマの気持ちに
トーフは左右に首を振って否定した。


「それはできへん。ワイは急ぎ旅なんや」


せやから、のんびりしてられへん。と付け加えようとした、が。
旅、という言葉を聞いて、クモマが目を輝かせてすぐに反応したから、無謀であった。


「旅?面白そう!」


予想もしていなかった言葉にトーフは耳を疑った。

面倒くさがり屋でのんびり屋だから、旅なんて嫌いそうだと思っていたクモマが、旅にすごく興味を示していたから。
意外であった。

クモマはワクワクと声を弾ませた。


「旅って、あちこちの村に行ったりするんでしょ?いいな〜。面白そう」


今までと違い、弾けているクモマの声にトーフが驚きを隠せない表情を作った。


「面白そう?」

「うん」


クモマはその問いに即答で返し、理由をあとにつけた。


「僕、幼い頃から旅に憧れていたんだ。いろんな人とふれあい、自然とふれあい、風潮とふれあい…いいよね。ふれあいって」


表情を噛み殺して、ニヤニヤ顔で続ける。


「だから、旅をしてみたいんだ」



ふれあい…


それについて目を輝かして笑っているクモマにトーフは少し、心打たれた。


彼は面倒くさがり屋だけど、のんびり屋だけど


いい性格なのかもしれない

いや、それは初めから”笑顔”が示していたか。



「あぁ、旅はいいで」


トーフが笑った。


「ワイの旅は大変やけどな」

「大変?」


首を傾げてクモマが続けて、どうして?と問う。
トーフは眉を下げて、苦い表情を作った。


「ワイの旅に魔物がつきもんや」

「え、魔物?」


魔物という言葉にクモマの眉がぴくっと動いた。
村人にとって魔物は恐ろしい怪物だ。
尤もふれあいたくない相手。だからクモマは表情を曇らせた。

強張ったクモマを見やってからトーフは小さくため息を吐いた。


「この村だけやろうなー。今の世界のこと知らへんのは」

「え、どういう意味?」


トーフの言葉がよく分からなくて、また疑問符をつけて言葉を出す。
クモマの問いにトーフは先ほどの表情のまま応えた。


「この村以外はどの村も、オカシイんや」

「え?」

「他の村はどこも変な"ハナ"のせいで、村や人々何もかもが可笑しくなってしまってるんや」

「ハナ?ハナって、こういう花?」


そしてクモマは付近に咲いていた桃色の花を指差した。
7枚ぐらいの花びらで構成されたその花は元気良く、天目指して伸びていた。

その花を見て、トーフは思わずぷすっと笑って左右に首を振った。


「ちゃうちゃう。あぁいう可愛いハナじゃないんや。形が決まっていないハナなんや」

「そんな花があるの?おかしい花だねー」

「そうなんや。んで、そのハナが変な力を持っていてな。村や人々を可笑しくしてしまうんや」

「そ、そうなの?」


話を聞いて、冷汗を掻くクモマ。
トーフの話が信じられないらしい。


全く知らなかった。そんなこと。

他の村がそんな大変なことになっているなんて…。



だけど、一つ、気になる点が、ある。



「どうして、この村だけ大丈夫なの?」


クモマの問いに、トーフはしばし、戸惑った。


ここまで話したからには、言わなければならない。
クモマが、ラフメーカーだということを。
だから、この村に"ハナ"が生えていないのだと。

…と、すると、自然にこう話を勧めなくてはならなくなる。

自分と一緒に旅に行きませんか?









しかし、言いそびれた。

目の前の緑の風景に黒味がかかったからだ。

瞬にして汗をかく。
そしてギロっとクモマの後ろを睨んだ。


自分たち以外に影を作っているそれは
会いたくないモノだった。




「クソ!!まさかこんなところに現れるバカがおるなんて!!」


トーフがそう叫んだ瞬間、
トーフは自分の着物の裾から細い糸みたいなものを引き出し、伸ばした。
その糸は瞬にクモマの真後ろにいたモノに巻きつき、捕らえた。


「え?何?」


何が起こったのか分からないクモマ。
トーフの手にはピアノ線みたいな糸が巻きつけられており、その糸は自分を越え、後ろまで伸びていた。
トーフが捕らえているモノを見る。



それは
皮膚がウロコで覆われており
口も大きく、牙も太く、長い。
耳も鋭く尖っていて、目は真っ赤で三角。
そして、体が自分を覆うぐらいに、大きかった。


「…っ」


息を呑む。

体はトーフの手に巻きつけられている糸によって変な形に固定されていたが、顔をこちらに向けて
血走っている真っ赤な目でギョロリとクモマを睨みつけていた。
縛られて苦しいのか、大きな口から緑の舌を蛇みたいにヒュルヒュルと出したり引っ込めたりして空気を取り込んでいた。


「魔物や!!」


トーフがポケっとそれに見つめていたクモマに叫んだ。


「これが…魔物」

「そや!せやからはよ逃げろ!あんた怪我するで!!」


しかし、そこから離れようとしないクモマ。
いや、離れたくても離れられなかった。

足がすくんで動かなかったから。


こんな気持ちの悪いもの、見たことがなかった。
生物なのに、生物の"気"を感じない。
感じるのは、"殺気"


「はよ逃げんか!!!アホ!!」


そして、ギュっと糸を引くトーフ。
それによって魔物に巻きつけられている糸がより縛られる。
イギっと声を出して魔物は、その場に大袈裟に倒れこんだ。
大きいものが倒れた所為で、一瞬場が揺れた。

そして
魔物は、動かなくなった。


「え…倒したの?」


緊張と恐怖で息が荒くなったクモマは、
疲れて息が荒くなっているトーフに訊いた。

彼はまた左右に首を振って。


「わからん。雑魚やったらいいんやけど」

「そう…それで、これが他の村とかにいる魔物なの?」


そして自分の後ろで倒れている魔物に目を向ける。
魔物の様子は変わらない。


「そや。まだまだいろんな種類の魔物がおるで。ま、ワイの本来の敵はこいつらじゃないんやけどな」


そして魔物を縛っていた糸を緩めた。
糸を自分の方にグイっと引き、
糸は自動的にトーフの着物の裾へと戻っていった。


「キミの敵って…?」

「ハナや。ハナ」

「ハナを倒すの?」


そや、と頷いて。


「ハナを消せば、そのハナによって可笑しくなってしまった人たちが元に戻るんや。ワイはそれをする旅に出てるんや」


のん気に説明をするトーフ。
しかしそれにクモマは反応しない。

気になって、ふとクモマに目を向ける。



クモマの表情を見て、一気に冷汗が出た。


彼は目を大きく見開かせて、眉を下げ、
トーフの後ろを見つめていた。


嫌な予感がした。

素早くクモマの後ろに目をやる。
予想が的中した。
そして、また冷汗が出した。



トーフが見た、そこには、


あったはずの魔物の姿が、なくなっていた






そして、すぐに殺気を背後から感じた。


ヒュルヒュルと、舌で息をしている魔物が、

トーフの後ろから聞こえてきた。



――― しまったっ!!



油断した。
バッと後ろを振り向くと、そこには案の定、魔物が片手を上げて構えていて。


――― ヤバイ


それから逃げようと足を後ろへ動かしたが、その瞬間に
その手は真っ直ぐにトーフ目掛けて振り落とされた。



そして、その場に、

何かが刺さった、鈍い音がした。





魔物の鋭く尖ったその手は

完ぺきに、腹を貫いていた。














クモマの腹に







「クモマ―――!!!」


トーフの叫び声を合図に、クモマの腹から血がドバっと溢れ出た。
その血は、トーフ全体に掛かり、トーフを赤くしていった。


クモマは、あの瞬間、トーフをかばったのだ。


その場に、嫌な空気が流れた。





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