これで二度目のボール除菌。
『R』もそのつど魔術を発動しなくてはならないので大変そうである。
けれどもその『R』の行動が他の闇たちに安らぎをうながしていた。

そしてゲーム再開。
先ほど外野から外野へボールが渡ったため、今は『Q』がボールを握っている。
しかし、そこで手を伸ばし『Q』の動きを封じる者が出た。


K「待ってくださいー。あたしに投げさせてくださいよー」


先ほど内野でボールに当たったために今は外野に控えている『K』が『Q』にねだりを見せた。
今にもボールを投げそうな形の『Q』だったけれど、頼まれたからには断るわけにはいかないと思ったのか、文句を言いながらも『K』にボールを渡した。


Q「可愛い子ぶった投げ方すんなよこの野郎」

K「えー何ですかー?あたしは元から可愛いですよー」


『K』の発言に『Q』の心でモヤッと何かが溜まる。
けれども、そのモヤッとした何かを吐き出す前に『K』がボールを投げていた。

場の空気である闇が一瞬にして混ざる。
まるでその空間だけに竜巻が起こったかのよう。

『K』の手は真っ直ぐに内野陣に向けられている。
その手の中には既にボールは無かった。
手の先、一直線上にボールが竜巻を起こして飛んでいく。

ボールは尋常ではない回転をかけて飛んでいる。それなのに勿体無いことに誰もいない空間を切っていた。
すると、そこへ『M』が弾んだ体で現れてくる。


M「俺様に当てちゃってー」

S「馬鹿か!あんなのに当たったら泣くって!」


しかしすぐに『S』に腕を引かれてボールをぎりぎりで避ける結末に終わった。
『K』のボールは勢いを衰えない。
行動を妨げられたために『S』に強く不満を吐き出している『M』の後ろの空間を突き破っていく。
やがてボールは、一人だけ明るい髪色をむき出している『L』の元まで飛んでいっていた。

鋭いボールを投げた本人『K』は遅いけれどここで可愛い子ぶりを披露する。


K「L様ー!あたしの愛のボール受け取ってくださいー!きゃー」

L「いや、"きゃー"ってオレが言いたい台詞なんだけど!」


闇に穴を開ける強烈なボール。これでは『B』が投げる怪力ボールと同じである。
けれども『K』のボールには力の他にも違うものが篭っていた。
それは、彼に対する愛である。


L「んなもんいらねー!!」


そして『L』は自分のチームメイトである『K』のボールを胸に喰らい、撃沈した。


O「L、大丈夫か?」

L「よ、避けられなかった…」


エリート魔術師の動きを封じるほどの威力を持った愛の力。
これぞまさに究極のパワーである。


Q「愛って恐ろしいな…」

K「んもーL様ったら、大胆に受け取りすぎですよー」


自分の仲間を倒しちゃった『K』だけれど、頬に手を当てて紅潮している。
その隣で『Q』が愛の力にビクついていた。

『L』が倒れている隙に『V』がボールを拾う。


V「ぐふふ。あんなゲス女のボールを喰らって小便漏らしてんじゃねーヨ、キャラメル頭」

L「お前、禁句言うなよ!」

V「うるせえヨ。ってかヨ、糞尿を恥ずかしいって思うなんて弱っちいんだヨ」

L「ちょっと待て!俺は決して汚物を垂らしてなんかいないぞ?!」

V「ぐふふ。黙れ」


ボールを両手で担いで区切り線まで歩いていく『V』は、倒れている『L』に向けて禁句を連発していた。
奴はきっと恥ずかしくないのだろうけれど、最も恥ずかしい気持ちになるのは作者の方である。
これから先、少し俯いてすごさなくてはならない。それほどまでに恥ずかしい気持ちでいっぱいであった。

作者が一人恥ずかしい気持ちになっている間、『V』は目の前にいる相手チームに向けて邪悪に口元を歪め、脅しを図っていた。


V「弱き者は処分だヨ。さっさとお寝んねでもしてたらどうだ?」


赤ん坊では無理であろう表情を作って『V』が笑う。
対して、『B』は鼻で簡単に笑っていた。


B「お寝んね?それはあんたがするもんじゃないのぉ?坊やはおしゃぶりでもして寝てればいいのよっ」

V「お前って奴は本気で腹が立つ!」


『V』同様に大胆不敵である『B』が顎をあげて『V』を見下す。
それに腹を立てて『V』がボールを投げた。
しかし、『B』の前に立つのは、喰らうの大好き『M』であった。


M「俺様を甚振ってー」

S「お前いい加減にしてくれよ!俺様疲れるよ!」


けれどもまた『S』に腕を引かれてボールをぎりぎりで避けてしまう結末で終わる。
『V』のボールは真っ直ぐに『B』を狙って飛んでいく。『B』はいとも簡単に受け止める。
激しいボールがあっという間に両手に収まった。


V「どこまで怪力なんだヨ?!」

B「あんたらが投げるボールなんて鼻くそ並よ」


意味の分からない例え方である上、これまた作者を恥ずかしい運命に叩き落す一言だ。
非常識な二人の戦いはある意味汚い戦いでもあった。
しかし、この後すぐに幕を閉じることになる。


B「雑魚は引っ込んでなさいっ!」


『B』が放ったボール、それは先ほどの『K』のボールをはるかに上回る凄まじい威力を持っていた。
やはり『B』が最強であった。
威圧とともに小さな闇が吹っ飛んでいく。
瞬の出来事で『V』も避けられなかったのである。
『V』は小さな体全体でボールを受け止めて、しかし手に収めることが出来ず、後ろにある外野までぶっ飛んでいった。


V「遠慮ねえヨこの巨大女は!」

U「クスクス。派手に飛ばされたなVよ」

V「うお!キモイの近づいてくんなヨ!」


派手に飛ばされてしまい、相手チームの外野で倒れてしまった『V』は苛立ちを募らせながら、自分のところの外野まで歩いていった。
これで『L』たちのチームの闇の数は5つ。
『B』たちのチームより2つ分闇が少なくなった。


L「…やられたな、やはりBちゃんが強烈か」

O「そもそも、ここのチームはBちゃんしか狙わないのところが欠点だと思う」


何故相手チームに勝てないんだ?と悔しがる『L』の横で『O』が切実を物語った。
しかし誰も聞いていないようで、すぐに『G』が『B』に向けて発砲する。


G「貴様何ぞ地獄に落ちろ!」

B「あんたが落ちなさいよおっさんっ」

G「おっさんだとぉぐおおおお!」


『G』が投げたボールを軽く避けて『B』は鼻で笑う。
空振りになったボールを受け取るのは外野にいる『V』だ。
高いボールだったため飛び上がって受け止める。
何気にやる気満々である。


V「ぶっ殺してやるヨB!」


しかし奴も『B』一人を狙っていた。
どいつもこいつも学習能力が極めて低い奴らである。
空中に飛び上がったまま『V』がボールを叩きつける。
強烈なボールだけれど『B』が手を払うことで軌道を変えた。

『L』がボールを受け取る。


L「困ったな…。Bちゃんが手ごわすぎる…!」

B「おっほっほっ。私に勝てると思ってるわけぇ?」

G「魔術では全く敵わんくせに、生意気な口叩くな!」


相手の強さに驚愕する『L』に対して『G』は強気で吼える。
その勢いに乗って『G』は『L』からボールを奪い取って、風を切った。
ボールの道は変わらず、やはり『B』を狙って飛んでいく。
だけれど同じパターンの繰り返しで終わる。


M「俺様を甚振ってよー!」

S「だから大人しくしてろって言ってるだろ!俺様怒るぞ!」


ボールが飛び交う都度、『S』の怒鳴り声が響く。
相方の『M』を抑えるのに必死のようだ。
跳ね飛び回る『M』を追いかけて腕を引いて命を救っていく。
その都度『M』は不満を抱いた。


M「お前は俺様の邪魔するのが好きなのか?俺様は甚振ってほしいんだよ!」

S「アホか!俺様は痛いのが嫌いなんだ!大体、お前一人だけ快感味わおうと思ってんのが間違いなんだ!」

M「ええ?Sも喰らって快感を味わえばいい話だろ?」

S「んなこと出来るか!俺様は甚振るので快感するってのに!」


最終的には二人は言い争いになっていた。
ボールが飛び交う中を無視して争い続ける。
それを狙う一つの闇。


G「貴様ら喧しいわ!」


『G』の攻撃は、ようやく的を『B』からはずし、うるさい二人の元へ飛んでいった。
勢いがある上に争うことに夢中になっていた二人はボールの存在に気づくのが非常に遅かった。
気づいたときにはボールは既に腰に埋まっていたのだから。
強烈な痺れと痛みが腰に響いたことにより『S』はふさぎ込んだ。
腰を抑えて身を丸めた。


S「……………痛い……これ痛い…だめだ死にそう…俺様死にそうだ…」


彼女は非常に打たれ弱かった。
痛みから逃れようと必死に呻き声を上げている。
丸まった『S』を見て心配する『M』は、それからすぐに『G』に向けて叫んだ。


M「お前卑怯だ!どうして俺様に当ててくれなかったんだ!」


相方を思いやって叫ぶのかと思ったのだけれど、やはり奴は自分の道を貫き通していた。
自分の快感のために吼える『M』。

『G』が吼えて答えた。


G「貴様に当てたらきりが無いだろが!」


正統的な意見である。
確かに一度『M』に当ててしまえば奴は調子に乗ってこれからもずっと前に出てボール当たりにいくだろう。
そうすると他の相手にボールを当てることが出来なくなり、非常に不便になる。
そういうことで『G』は『S』に狙いを定めたのである。

それを悟って『M』が地面を転がった。


M「俺様を甚振ってよー俺様に快感ちょうだいよー」

B「うざいわよあんたっ!」


ごろごろと地面を転がって駄々をこねる『M』は、怪力女の下敷きになることに成功し、快感して悲鳴を上げた。
そして強い衝撃を一度に味わうことができたと言うことで満足したのか『M』はそのまま外野まで飛び跳ねていく。
対して『S』は俯いたままである。
彼女の存在に気づいたけれど『B』は容赦なかった。


B「あんたもさっさといきなさいよっ!」


背中を『B』に踏まれて、『S』は頭を垂らして沈む。


L「可哀想に…」


闇たちの戦いは過酷なものでもあった。





>>

<<


------------------------------------------------

ここでは『V』と『S』『M』が倒されました。
まだまだ続きそうなエキセンドッジ。勝敗はどうなる?

------------------------------------------------

inserted by FC2 system