目を覚ますと、何かいつもと、違っていた。


9.テンセイの村


チュンチュンと小鳥の囀りが聞こえてくる。
これらは、自分らに「朝だよー」と伝え、起こそうとしてくれている。
それに応えるように、自分らも、身を起こすのだ。

もう朝だ。
太陽も顔を出しており、清々しいお天気で。

とある村の門前に置かれている手作り車。
その車の中に日差しが漏れて入る。
車の中で寝ているのは6人の人間。
日差しに浴びられ、眩しそうに眉を顰めているのはクモマ。


「……うぅ…ん…」


自分に当てられている日差しから避けるために寝返り打つ。
しかし、それで余計目が覚めてしまった。
クモマは目を開けて、上半身を起こした。


「………もう…朝かぁ…」


目を擦って、意識をハッキリさせる。
何か、自分の声がいつもより低いような気がするが、きっと寝ぼけている所為でそう感じるだけであろう。

外に出て、新しい朝の空気を吸おうと思い、クモマは立ち上がる。
狭い車の中のため皆ならば膝を曲げて移動をするのだが
クモマは背が低いので膝を曲げなくても良い。

しかし、今日は違っていた。


「…あれ…?僕、身長伸びたのかな?」


車の中で膝を曲げている自分に驚くクモマ。
しかも、何か視界も違うし、服装も違うように感じた。

クモマの服はこんなにも肌蹴ているものではなかったはずだ。
なのに、今クモマはスカジャンを身に纏っており、中は何も着ていなく裸だ。

…何か嫌な予感がした。

だけど、信じたくない。だから証明しようと思いクモマは咄嗟に自分の頭に手を置いた。

手のひらに感じるのは、いつものボサボサ髪ではなく、長い髪。
しかもその長い髪は頭の高い位置で結ばれており、チョンマゲヘアーになっていた。


一気に、冷汗が出た。


恐る恐る辺りを見渡してみる。
気持ちよさそうに寝ている皆。
その中の一人は、ボサボサの黒髪の男の姿。
クモマの姿が、あった。


だけど、クモマは、自分だ。
だけど、自分は、
肌蹴た服装にチョンマゲヘアー。
これは明らかに…サコツの容姿であった。

・・・・?


「ええええええええええええ?!!!!」


異常に気づいたときには、サコツ姿のクモマは絶叫をあげていた。
それは車内を越え、辺り中に響き渡った。



+ + +


クモマの叫び声に全員がダルそうに目を覚ました。


「何やねん。サコツ。イキナリ絶叫上げるなんて…ビックリするわぁ」


サコツ姿のクモマに向けて、ブチョウが何故か関西弁で問い掛ける。
サコツと呼ばれてしまったクモマはまだ気が動転している。
その中でトーフが指を指して叫びだした。


「ま、待てよ?!何で俺が二人いるんだ?!!」


トーフの指先にはサコツ姿のクモマ。
それに目を丸くした。


「え?…トーフは…サコツ?」

「お、お前は誰なんだ?!」

「僕はクモマだよ」

「キャ〜!!!!!」


混乱中の車内でまた悲鳴が響いた。
ソングだ。


「え?何で?何で私が作業着着て?え?ちょ…ちょっと待ってよ〜!?」

「待てよ、何キモイ声出してるんだ?ソング」

「何言ってるのよ!私はチョコよ!」


トーフ姿のサコツの問いにソング姿のチョコが怒鳴り声を上げた。
それに応答するのはチョコ姿の…


「…なんてことだ…。まさか俺がチョコだなんて…」

「私の中に入っているのは誰よ?」

「お願いだから俺の姿で内股はやめてくれ」

「……まさかソング?」


頷くチョコ姿のソング。
更に混乱する一同。


「待ってよ!そしたらそこで仁王立ちをしている僕は誰なの?」

「仁王立ちしている時点でブチョウだろ」

「ちょっとソング!私の声を無闇に低く出さないでよ!」

「それはこっちにも言える台詞だ。俺の声でキモイ声出すな」

「き、キモイ声?!失礼ね!私は普通に声を出しているつもりよ!」

「何で1オクターブ高い声出しやがるんだてめーはよ」

「何で1オクターブ低い声出すのよ!」

「待ってくれや、二人とも。見ていてめっさオモロいで」


ソング姿のチョコとチョコ姿のソングの言い争いに、ブチョウ姿のトーフが笑いを堪えながら割り込んできた。

静かになる車内。

混乱しっぱなしで逆に疲れたのだろう。
全員が呼吸を乱し、頭を抱え込んでいた。

沈黙

それを破ったのは
サコツ姿のクモマの嘆きであった。


「これは…一体どうなっているの?」


応えたのはクモマ姿のブチョウ。
やはり彼女は仁王立ちをしている。


「あんたの姿になったら車の中でも仁王立ちができるのね。びっくらこいた」

「……」


ブチョウの発言に落ち込むクモマ。
あれは遠まわしにクモマの身長が低いということを言っている。

事を理解したいためブチョウ姿のトーフが口を開いた。


「全員の中身が入れ替わっているようやな」


トーフの解析に全員がやはりかと苦い表情を作った。
中身だけが入れ替わってしまっているため声も外見も全てその姿の者のもの。


「ねえ、誰が誰の中に入っているのか確認してみようよ」


サコツ姿のクモマが提案した。
同意するメンバー。


そして、確認した結果は次の通りだ。


クモマ → サコツ
トーフ → ブチョウ
チョコ → ソング
サコツ → トーフ
ソング → チョコ
ブチョウ→ クモマ




全てを知ったメンバーの感想はコチラ。


「視界が一気に低くなったなー。さすがトーフ!こんな小さな世界を見てきていたのか」

「視界が一気に高くなったわ。皆こんぐらいの高さから世界を見てたんか。ちょっと羨ましいわ」

「足が長い…っ!身長高い…っ!サコツの体って得してるよね!」

「何いってんのよ。突然短足になってしまった私の身にもなれ!」

「まさかソングの中に入っちゃうなんて…。作業着なんて着たくなかったよ〜」

「何でこいつの服はこんなにも露出してるんだ…。無闇に自分の姿なんか見れねえじゃねーか…」


そして、また頭を抱え込んだ。


「一体なんで入れ替わっちゃったんだ?」


サコツ姿のクモマが問う。


「わからないよ〜!意味わかんない〜!」


ソング姿のチョコが喚く。
そして、トーフ姿のサコツが訊く。


「これってまさかさ〜」


金色の目を光らせて、言い切った。


「"ハナ"のせいなのか?」


場が張り詰めた。
その中でブチョウ姿のトーフは、コクリと頷いた。


「たぶんな。そうとしか考えられへんで」

「やっぱりなぁ…」

「え?それじゃー"ハナ"を消しちゃえば元の姿に戻れるってことだよね?」

「どっちにしろ"ハナ"は消さないといけなかったわけだし」

「なあトーフ。"笑い"が少なくなっているところ、どこにあるか分かるか?」

「…すまん。体がブチョウじゃ"笑い"を感じ取ることができんみたいなんや」

「それじゃートーフちゃんの体に入っているサコツが"笑い"を探知すればいいじゃない〜」

「マジで?!無理だ無理だ!」

「…困ったわね〜。"笑い"を辿っていかなくちゃ"ハナ"の場所もわからないっていうのに…。…はぁ、私はいつまでこの短足を味あわないといけないわけ?」


クモマ姿のブチョウに散々文句を言われたが、クモマは気を取り乱さずに自分の考えを述べた。


「その前に村の中央のほうに行ってみようよ。もしかしたら"ハナ"に関する情報を手に入れることができるかもよ」


しかし、サコツ姿であったため、その案は非常に価値のあるものになった。


「それいいアイディア―!サコツにしては珍しいね!」

「ホントだな。お前にしてはいい案だ」

「今回は見直したで。サコツ」

「マーガレットって感じだったわね」

「いや〜照れるぜ」

「……」


何とも複雑な気持ちになるクモマ。


そして、メンバーはとにかく早く元の体に戻りたかったため、早速村の中央へと向かって行った。







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ソングとチョコの入れ替わりは楽しい(笑

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