「…うぅ…何でこんな目に遭わなきゃならないわけ〜?」
「困ったよねー……でも個人的な意見ではちょっといい気分だったり…」
「え?何で?」
「だって、こんなにも歩幅が…歩幅が大きい…っ!!!」
「ったく、何でたぬ〜の足ってこんなにも短いのよ?おかげで歩幅が小さくて歩きにくいじゃないの」
「………ちょっと早歩きしないと皆に追いつけないから気をつけてね」
「何て不憫な体なんだ…」
「って!ちょっとソング!私の体で大股開かないでよ!見えちゃうじゃない!!」
「…っ!!くそ、そしたらどうやって歩けって言うんだ」
「内股で歩いてよ」
「無茶なこと言うな?!ってかお前も俺の姿で内股で歩くのは止めろよ」
「ええ?何で?」
「「気持ち悪い」」
「そんな皆で声揃えて言わなくてもいいじゃない!!」
「だってよー、ソングの内股なんか見ても気持ち悪いだけだぜ?」
「…確かに…。ゴメンね。今度から気をつける……」
「そう言ってる側から内股になってるぞ!!」
意外にも盛り上がりながら、メンバーは村の中央へ向かうことに無事成功した。
どこの村も、やはり中央付近は民家の塊のようだ。
今も見る限り建物が続いている。
人も一握りであったが、いた。
メンバーは早速この村のことや、"ハナ"についての情報を得ることにした。
まずは、自分らのすぐ近くにいた、青年に話し掛けた。
「あの、すみませ〜ん」
ソング姿のチョコが身を乗り出す。
「一体、この村ってどうなってるんですか〜?」
チョコ、やめて。
キモイよ…。
そして、案の定、その青年は逃げ出してしまった。
「ちょ、ちょっと待ってよー!」
「止めろ。お前が内股なんかして高い声で話し掛けるから逃げてしまったじゃねーか」
「…しまった…。私って今ソングの体の中だったんだっけ…」
「気をつけないと、異様な光景になっちゃうよね…特にソングとチョコのところが」
「全くやな。そこの二人の入れ替わりようはご立派やな」
「ご立派ってこいつ…。ったく、面倒くせぇ。何で俺が女なんかに…」
「何よ!」
睨み合うチョコとソング。
それを打ち破る形でサコツ姿のクモマが話を変えた。
「とにかく、僕らはこの村のことと"ハナ"のことを訊かなくちゃ」
言われて、思い出す。
「そうだったね…。ゴメン」
「…だったら早く訊きこみしろよ」
「分かってるって」
そして、クモマは近くを通った若い女性に話し掛けた。
「あの、すみません…」
「きゃー!胸板もろ見え〜!!!」
顔を覆って女性は逃げてしまった。
「………」
「ま、頑張れよクモマ」
何とも複雑な気持ちになるクモマ。
今度はトーフ姿のサコツが挑戦することにした。
ターゲットは、先ほどの女性より若い彼女
「へいへい、そこの彼女〜」
「うっわ☆なにこの猫たん!めっちゃキャワイイ〜!!」
「ね、猫!猫言うたなあんたら!トラやトラ!!!」
禁句を発した彼女は、ブチョウ姿のトーフに怒鳴られてしまった。
しかし、
「きゃー!カッコいい!めっちゃ好みのタイプ!!大好きです。付き合ってください」
告白されてしまった。
唖然とするトーフの代わりにクモマ姿のブチョウが割り込こむ。
「ちょっとあんたに訊きたいことがあるのよ」
何故男が女口調なのかが気になった彼女であったが、
その男がとっても偉そうに仁王立ちをしていたのに圧倒され、質問するタイミングを失ってしまった。
ブチョウは続ける。
「この体を見て、どう思う?」
「短足だと思います」
「即答だった―!!!」
彼女の即答にクモマは酷くショックを受けた。
「ま、それはいいとしてな」
先ほど彼女に告白されてしまったブチョウ姿のトーフが、話を進める。
「この村について、訊きたいんねん」
「…その口調もそれまた素敵…☆」
もうダメだ。彼女はブチョウの容姿にメロメロだ。
そんな態度の彼女を見てチョコは大きく溜息を吐いた。
「ちょっと〜、ちゃんと話し訊いてよ〜。私たちマジで困ってるんだからさ〜」
「うわ!何この人?!キモイ!!」
「…俺のイメージがドンドン崩れていく…」
ソングのことを皆がキモイキモイと連呼するので、その体の持ち主はへこんでしまった。
チョコの姿で俯くソング。
それを無視して、今度はサコツが声をかける。
「この村ってよー。何か人の中身が入れ替わるようなことが起こっているのか?」
ほぼ単刀直入の質問に彼女は戸惑った。
「え?なに?それ?意味わかんないよ」
彼女の応えに、全員が目を丸くする。
自分らの予想が大きく外れたからだ。
自分らがこの村に来て、一夜経ったらこの事件が起こった。
つまりこれはこの村の"ハナ"がこのような事件を起こしたのだろう。
そう解釈した。
しかし、彼女の応えはそれを覆すようなものだった。
眉を寄せて、トーフが訊ねる。
「あんた、誰かと中身が入れ替わったってこと、あらへんか?」
「何言ってるの?そんなことあるはずないじゃん」
「マジでかよ?」
「それってどういうことなの?」
「俺たちだけなのか…?」
「可笑しいわね」
「"ハナ"の所為じゃないのかな?」
「何言ってるのかわからないよ?」
戸惑うメンバーを見て、彼女も同じく戸惑った。
+ + +
それから、メンバーは日が暮れるまで村の人に訊きこみを試みたが、どれも同じ応えであった。
頭を抱え込んでメンバーは暗くなったその場に座り込む。
もう訳がわからない。
「どうして…何で私たちだけ入れ替わっているの?」
「意味わからねえな。何が原因で入れ替わってしまったんだ?」
「…俺があの時、"トーフになってみてーっ!!"って思ってたのが原因か…」
「思ってたのかよ?!アホか!!」
「何かチョコの姿で口悪く突っ込まれると変な感じがするぜ」
「…ちょっとソング。ちゃんと座り方考えてよね。股開かないでよ〜」
「面倒くせぇな…」
「…とにかく、これからどうしようか…」
クモマの問いに、誰も応えなかった。
場は沈黙に覆われる。
しかし、それはすぐに破られた。
自分らに近づく影が見えたから。
「誰だ」
サコツが叫ぶ。
しかし、応答はない。
自分の武器のハサミを取ろうと腰に手をやるが、自分の姿はチョコだったと気づき、
舌打ちをしてソングが続ける。
「魔物か?」
その質問に、すぐに応答が返ってきた。
「違うでヤンス」
はじめて聞く声だ。
果たして、誰なんだ?
影は徐々にコチラまで近づいてきて、
やがて、暗闇の中でも見えるぐらいの範囲まで迫っていた。
影は、異常に小さいものであった。
目線を下にして。
「「犬?」」
それは、茶色い犬であった。
ついに耳までもが可笑しくなってしまったのかと、表情を一気に青ざめるメンバー。
それをみて、犬は急いで否定した。
「犬でヤンスけど、違うでヤンス」
「犬の声が聞こえるなんて…」
「ぼくは人間でヤンス」
「何かほざきやがったぞ、この犬」
「話を聞いてほしいでヤンス」
犬が寂しそうな目でこちらに訴える。
犬の円らな瞳に全員は釘付けになった。
静かになったその場に、またヤンス声が響いた。
「実は、ぼく…犬と中身が入れ替わってしまったでヤンス」
「「!?!」」
驚くべき発言に目を見開く。
「本当?!」
「あんたも入れ替わってしまったんか?」
「そうでヤンス。村の中央であなたたちが『中身が入れ替わった』と訊き回っているということ聞いて…ずっと探してたでヤンス」
「え?でも、村の人たちはみんな中身は入れ替わっていないって言ってたよ?」
「ほとんどの人が入れ替わっていないでヤンス。ごく一部の人だけが中身が入れ替わっているようでヤンス」
「それはどういうことなんだい?」
「それは…」
言いかけたところで、周りの暗さに気づいて
「もうこんなにも暗いでヤンス。今晩はうちに泊まっていくといいでヤンス」
そして、メンバーの有無も聞かずに犬はさっさと駆けて行ってしまった。
メンバーも有無を言わずとも泊まれるということに目を輝かせて後をついていった。
+ + +
犬に誘われ、メンバーは犬の家にやってきていた。
至って普通の民家。
あるとしたら家の近くに犬小屋がある。それだけだ。
民家の中に入ると、やはり中も普通であった。
普通にテーブルがあり、普通にタンスがあり、普通に丸くなって寝ている人間がいたり…。
「ジョン」
犬が人間に声をかける。
人間は、ピクっと耳を動かすと、ガバっと身を起こして、まるで犬のようにこちらへと駆けてきた。
舌を出してこちらを見上げるのは、まだ小さな少年。
犬が言った。
「これがぼくの本来の姿でヤンス」
つまり、この少年と犬の中身が入れ替わったということみたいだ。
「今日ぼくは一人で留守番でヤンス。遠慮しないでここに泊まるでヤンス」
犬に言われなくてもメンバーは早速くつろいでいた。
「うわ?!行動が早いでヤンス!?」
驚く犬。
そんな犬に椅子に座って体を休ませているトーフが問い掛ける。
「ほな、聞こうやないか。あんたの中身が入れ替わった訳を」
ブチョウ姿のトーフの言葉に、それぞれくつろいでいたメンバーも、一気に視線を犬に向けた。
注目を浴び、犬は少し躊躇いつつも、正直に応えてくれた。
内容は、このようなものであった。
少年は、犬のジョンと一緒に、散歩をしていたらしい。
村の門付近まで散歩していて、いい加減疲れた少年は、その場に寝転がって、ジョンと昼寝をした。
そして、目を覚ますと…
「中身が入れ替わっていたわけね」
「ってか門付近で寝るヤツっているのか?」
「……いるじゃないか」
クモマに言われ、思いだした。
そういえば、自分らも門付近に車を止め、一晩を過ごしたのだ。
「…そっか。そういうことだったんか」
「え?何かわかったのか?トーフ」
「正確にはわからんけどな」
そして、トーフは自分の意見を述べた。
「きっと原因はその門付近にあるみたいやな。門付近で寝ると、近くにいたモノと中身が入れ替わってしまうんや」
納得するその場。
「日が昇ったら、早速門付近に行ってみるで。そしたらあるかもしれん…」
"ハナ"が
「……そうだね」
「明日には絶対に元の体に戻ってやるぜー!」
「ん〜原因が何となくわかってよかった〜」
「これで安心して眠れるね」
「ま、みんな明日頑張りなさいよ」
「お前も頑張れよ」
「…ゆっくりとしていくといいでヤンス。トイレは廊下の奥にあって、風呂場はトイレの手前の部屋でヤンスよ。寝るときは悪いでヤンスけどそこのタンスから布団を人数分取って敷いてくれでヤンス。それでは、ぼくも眠いので隣りの部屋で寝るでヤンスね」
何か原因がわかったようなメンバーの姿を見て
犬は満足そうな笑みを溢すと、早々と隣りの部屋へと駆けて行った。
犬と挨拶を交わし終えて
「なあ…」
ソングが全員に問い掛けた。
「トイレとか、風呂とか、…どうすればいいんだ?」
「「…………あ」」
忘れていた。
そういえば、まだ今日一度もメンバーはトイレも風呂も済ましていなかったのだ。
さすがにどちらも行きたいところだが
体は自分のものではない…。
「ソング!絶対にトイレや風呂に行かないでよ!!」
「無茶なこというな!!……だけど俺もお前のなんか見たくもねえしな…」
「お願いだからブチョウ…。トイレとか風呂とか行かないでくれるかな?」
「何よ?そんなに見られたくないの?」
「いや…その……」
「いいじゃねーかよ。クモマ―。俺のはバッチリ見てもいいからなー」
「い、嫌だよ!そ、そんな…」
はい、放送禁止。
話し合いの結果。メンバーはトイレ風呂等は行ったらいけないことになった。
ま、明日までの辛抱だ。ここは我慢しておこう。
昼間はずっと訊きこみをしていたため、メンバーは疲れていた。
今日は早々と寝ようということで
クモマが布団を人数分敷いて、寝ることにした。
早く、元の姿に戻ろう。
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あぶねーあぶねー。
もう少しで下ネタが入るところだった―(汗
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