クモマを人形にして連れ去ったあの黒づくめと同じような闇の存在の2人なのに、この2人はまるで違っていた。
自称神とは全く違う、自分らと同じような笑みを溢すのだから。


「本当にクモマを助けてくれるの?」

「マジでかよ?信じちゃってもいいのか?」

「何だかうそくさいわね」


チョコとサコツがぐっと闇に身を寄せているその後ろではブチョウが疑いの目を向けていた。
こんないい話、あるはずがない。とブチョウの目が訴えている。

しかし吸血鬼ことBちゃんは綺麗な微笑を作って見せる。


「信じちゃいなさいよっ。私たちはあんたらにいい情報を持ってきてあげたんだからさぁ」

「そうだジェイ!オレっちたちには強い味方がいるんだジェイ」

「味方?」


ジャックが言った"味方"という言葉にソングが眉を寄せ、より追求する。


「味方とはどういう意味だ?」

「そや。ってか、まずワイらはあんたらを味方として捉えてもええんか?」


トーフも問い、Bちゃんが頷いた。


「そうね。こんな怪しい格好をしている私たちだけどっ、まあ信じてみたほうが身のためだわねぇ」

「…どういう意味なのよ?もうちょっと詳しく説明しなさい」


ブチョウは自分より背の高いBちゃんを問い詰める。
度胸はブチョウも負けていない。Bちゃんも負けずに見下ろしているが、表情は笑顔だ。
ブチョウは更に訊ねる。


「あんたらは一体何者なの?」


それにBちゃんは口を横に広げ、牙を見せた。
だけれど表情は変わらない。


「私らは"闇の者"よ」

「や、闇の者…?」


チョコが驚きの拍子で口を押さえて聞き返し、ジャックが元気よくジェイっと頷いた。


「オレっちたちは"闇の者"だジェイ!だから魔法が使えるんだジェイ!」


何じゃそりゃ?
メンバーは理解できなかった。
だけれどジャックは勝手に話を進めていく。


「オレっちの魔法は凄いジェイー!だけどもっと凄い奴がいるんだジェイ!天才エリート魔術師がオレっちたちの仲間にいるんだジェイ!」

「天才エリート魔術師?」

「そう。そいつが"強い味方"よっ」


何と、その天才エリート魔術師が今回の強い味方らしい。
しかし信じていいのやら。


「信じてみちゃいなさいよぉ。損することは無いと思うけどねぇ」


何と、メンバーの心を悟ったのか、Bちゃんが目を細めて言ってきたのだ。
Bちゃんはじっとメンバーに向けて目を据えている。


「私たちはなーんにも悪いことはしないわよっ」

「そうだジェイ!『U』はキモくて強いから、オレっちが『L』に『U』を説得してくれるよう頼んだんだジェイ」

「ちょっと待て。何だそのアルファベットは」

「私たちの名前だけど何か文句あるぅ?」


そしてBちゃんは突っ込んできたソングを見た。
牙を見せているため、怖さ倍増だ。そのためソングは口を噤む。
ソングを黙らせたBちゃんにトーフが見上げて確認をする。


「っちゅーことは、『U』て奴がクモマをさらったキモイ神で『L』ちゅうのがそん天才エリート」

「そういうことっ」


まだ確認の途中であったがBちゃんは頷いて、笑顔を作る。それから牙を隠すため口を小さく動かす。


「とにかくっ『L』は凄いのよ。どう?私たちを信じてくれない?」

「……」

「もう『L』は『U』のところに行ってるジェイ。きっと人形の子を取り返そうとしてくれてるジェイ」

「!」


ジャックの言葉に全員が身を寄り詰めた。


「本当に?今行ってくれてるの?」

「そうっ。きっとあのキモ『U』のことだから人形の子を自分の闇の世界に連れ込んでいると思うのよねぇ」

「あんな危険なところオレっちたちには近づくことは出来ないジェイ」

「むしろ私は近づきたくないわねぇ。あと私には魔力なんてないもの」

「オレっちも魔力が弱いから無理だジェイ」

「つまり、その危険な闇の世界に連れ込まれているあいつを取り返すことが出来るのは、天才エリート魔術師である『L』だけだということだな?」

「そういうことだジェイ!」


ソングが確認を取り、ジャックがまた元気よく頷いた。


「ちゅーことは、ワイらは『L』の帰りを待っていればええんか?」

「俺ら何もしなくてもいいのか?」

「ほ、本当にクモマを助けてくれるの?」


トーフ、サコツ、チョコの同時の質問にBちゃんは一言で返すのみ。


「私たちを信じなさいっ」

「「…」」


突然出てきた闇の者2人の発言に、拍子抜けになってしまったメンバー。
だけれど2人の言葉は全てメンバーの気持ちを躍らせるものだった。

2人はメンバーに、クモマを助けてあげる。と伝えに来てくれたのである。
そのことを知って、チョコはまた涙を流していた。


「……信じる…私…クモマが帰ってきてくれるなら…何でも信じる……」


グスグス涙を拭うチョコの肩を叩きながら、サコツも言う。


「クモマは俺らの大切な仲間なんだぜ。本当にクモマを取り返してくれるっつうなら信じるぜ」

「現に今、取り返しに行っているみたいだからな。信じるしかねえか」

「ちゃんと取り返してきなさいってその『L』に言ってやって。もし失敗なんかしたら大腸引っ張ってやるわ」

「お、怖ろしいジェイ…!」

「この様子から皆信じてくれてるようね?それならよかったわっ。信じてくれてありがとね」


ジャックがブチョウに恐怖を持っている頃、Bちゃんは信じてもらえたことに喜びを感じていた。
お礼を言うBちゃんであるが、お礼を言うのはこちらの方だ。


「ホンマおおきに。ワイらこれからどうするかで悩んでいたところだったんや。せやけどあんたらのおかげでワイらの居場所を見つけたわ」


黒づくめのBちゃんとジャックに向けてトーフが頭を下げる。
そして頭を上げたときには表情を笑顔に満遍なく塗り替えた。


「ワイらはここでクモマの帰りを待ってるで。あんたらを…『L』を信じて」


トーフの表情を見て、他のメンバーも頭を下げて笑顔を作る。
自分らはここにいて、クモマの帰りを待つだけだ。
何もしないなんて、何だか申し訳ない気もするけど、相手は危険な奴だ。自分らには相当敵わないであろう。

天才エリート魔術師の『L』を信じて、メンバーはクモマの無事を願う。



+ + +



「…っ!やっぱ『U』は怖ろしいや…!」


闇の世界。自称神の世界ではあちこちで爆発が起こっていた。
自称神が手のひらで掬った邪悪な光を『L』に向けて飛ばしているのだ。
光は強烈であり、凄い威圧を全身に感じる。風も吹いていないのに吹いているように感じ取ってしまう。
『L』はシルクハットが飛ばされないように左手を頭に固定しながら移動する。


「逃げてばかりだと"お主"を取り返すことはできないぞよ?」


『L』がつらそうに逃げ回っているのを自称神は楽しそうに眺めている。しかしその手には邪悪な光が溜まっている。
クスリッと笑みが零れる自称神に『L』は強気な発言で返す。


「お前も攻撃してばっかりだと逃げ道なくしちゃうぞ」


右手を自称神に向けてまた指を鳴らす。
すると自称神のすぐ手前が爆発した。

それに『L』が悔しそうに目を細める。


「また避けたか…!」


指を鳴らす瞬間に自称神は避けたようだ。
簡単に避けられたことに悪態つく『L』に向けて自称神は笑った。


「クスクス。そちはやる気があるのか?全く"本気"というものが見えないのだが」

「…言っておくけど、オレはこっちの専門じゃないんだよ」

「クスクス。これでは勝ち目が無いぞよ。そちは実力はあるものの使い道を間違っておる」


自称神は逃げ回る『L』を見据えてバカにする。


「オレは……」

「そちからは"殺気"というものを感じ取れないぞよ」


隙を見つけたら自称神はすぐに光を飛ばす。
だけれど『L』も弱くない。むしろ強い。瞬間移動をするような速さを見せて移動をする。
しかし、自称神の言うとおり、殺気はなさそうだ。
赤色に光っていた目も今では黒に戻っていた。


「オレは、戦いはキライなんだ…ってか面倒くさい」

「そのような考えをしておるから大切な人が守れないのだぞよ」

「…!」

「そちは本当にもったいない代物だぞよ。頭脳も高いし、ヘタすれば我よりも怖ろしい人材となる」

「…」

「だけれど、そちに"優しさ"がある限り、我を越すことは出来ないであろう」


自称神に散々言われ、『L』は黙りこむ。
またその隙に攻撃を繰り出す自称神。こいつに遠慮という二文字は見られない。
対して『L』は遠慮がちだ。


「"お主"を返してもらいたければ、そちも"本気"になるのだ。我も一度、そちと戦ってみたかったからな」

「……え…お前と戦うの?」

「何だ?嫌なのか」

「ああ、キモイし…」

「クスクス。弱虫だぞよ」


また小ばかにする笑いを漏らして自称神、


「そちがやる気でないのなら、"お主"の残りのパーツも消すとしよう」


黒マントに隠れているクモマを『L』に見せるためにマントを払った。
『L』はクモマの姿を見てギョッと目を見開く。

自称神の腕に抱かれているクモマは、まるで人形そのものだったのだ。


「………ヤバイな…"精気"を全く感じ取れない……これでは死んでいると等しい…!」

「だろう。もう"お主"は我の人形であるからな」

「やめてくれ、キモイから」


魔術師と言ってもやはり人間と同じで恐怖を感じたら鳥肌をたてるようだ。
腕に鳥肌を立てた『L』は腕を擦って無意識に鳥肌を消そうとしている。その間に自称神はまた笑う。


「『L』よ。本気を出さなくていいのか?この子は完全に人形になってしまうぞよ」

「…あと残っている部分は…『脳』だけか…」

「クスクス。我が次に"お主"の頭を触れたとき、"お主"の脳は止まり、そして完全に我のものとなるのだ」

「…最低だな…」

「褒め言葉として受け取るぞよ」


闇の中、2つの赤い瞳がぼんやりと輝いて見える。
自称神が発光している瞳だ。
対して『L』の目はもう光っていない。ただし、違う意味で光っていた。

目をギッと鋭くして『L』は歯を食い縛りそのまま口元を吊り上げた。


「『U』、その人間が誰だと思って手を出しているんだ?」


また強気な発言をする『L』に自称神は笑うのみ。


「"お主"は我の人形だぞよ」

「違う。この子の心を感じ取ってみろよ」


『L』に言われて自称神は当たり前のようにクモマの胸に手を入れた。
すると目の光を急に弱めた。


「……!」

「この子はなぁ」


また右手を自称神に向けて、『L』は言葉を言い放つ。
その顔には、子どもが悪戯を考え付いたといったような企みの笑みが零れていた。



「"癒しの笑い"を持っている人間だ」



『L』の笑みを見て、自称神は一瞬だけ、ほんの一瞬だけ強張った表情を見せたがすぐにいつものいやらしい笑みに戻した。
自称神も強気だ。


「"癒しの笑い"か、面白いではないか」

「お前は世間がどうなっているのか知らないのか?今、世の中には"ラフメーカー"っていう団体がうろついているんだぞ」


自称神はクスリッと笑う。


「それがどうしたというのだ」

「そいつらが"ハナ"を消しているんだ」


すると自称神、間をあけて笑う。


「……そうか、それは面白い情報だぞよ。『L』は情報をたくさん持っているから面白い」

「ふん、お前が知らないだけだよ」


鼻で笑って『L』が言い切った。



「そういうことでだ。こいつは今の世界にとって必要な存在なんだ。だからお前は見放さなければならなくなる…!!」



そして自称神に向けていた右手の指を鳴らして、
『L』はラフメーカーであるクモマを取り返すために確実に"本気"になるのであった。






+ + +




メンバーがいるこの場所から何キロばかりか離れたところに、大きな爆発が起こる。













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