「トーフが何かと関係しているってどういうことかな?」


トーフをさらった空飛ぶロボット軍団を追うためメンバーはいつもの食い逃げのときのように素早く移動していた。
ロボットたちは高いビルのような建物の中に入っていったのをメンバー全員が見ている。
視力のいいサコツが言うには「一番上の階…たぶん5階だと思うけど、そこに入っていったぜ」とのこと。
メンバーはトーフを助けるため、とにかく気を緩めず走っていく。

あのときロボットが自分らに言った言葉を思い出しクモマがふと訊ね、全員が首を傾げた。


「あいつが何かと関係しているって意味がわからないな」

「トーフちゃんって何かすごい力でも持っているのかな?…あ、"笑い"を見極めることができるその力のこと言っているのかな〜?」

「さあどうかしら?それだったら耳を回転させることの出来る私のほうがすごい力を持っていると思うわよ」

「た、確かに…」

「私、前々から思っていたんだけど」


ブチョウは、言った。


「タマって不思議な感じがするのよね。あの容姿に"ハナ"に対する知識、不思議の塊よね」


大抵こういうときはハトの姿になっているブチョウが今回だけは人間の姿だった。
しかしそれでも足が速いのは鳥族の里で防衛隊として扱かれたからだろうか。
メンバーの中で一番足の速いチョコと並ぶ勢いのブチョウ。彼女のマジメな意見にチョコが頷く。


「そ、そうだよね〜…。私もトーフちゃんをはじめて見たときビックリしちゃったもん。姐御みたいに何かの種族かなって最初は思ったんだけど違うみたいだし…何なんだろう〜?」

「しかも他の平民たちは"ハナ"の存在を知らないのにあいつは当たり前のように知っている。そこも謎だよな」


ソングの意見に全員があっと目を丸くした。
言われて見れば確かにそうだ。
自分らも"ハナ"の存在を知らなかった。"ハナ"が生えていないエミの村の住民だけが知らないことかと思っていたが、違った。
"ハナ"にやられている村の住民さえも"ハナ"について知らないのだ。
それなのにトーフは知っている。

"ハナ"がどの村にも生え、"笑い"を吸い取っているということをトーフだけが知っている。
それは一体何故だ?


「トーフってよー、一体何者なんだろうな?」

「うん…そういえば、トーフって僕たちより年上なんだって。前に聞いたことがあるんだ」


皆で女装をして村に侵入したあの村…ウーマンの村のレストランでトーフと二人きりになったときにクモマはトーフからそう話を聞かされていたのだ。
自分は皆より長く生きているから知識はある、と。

はじめて知った事実に他のメンバーは更に目を丸くしていた。


「あれで年上のなのかぁ?マジでかよ?」

「あんなプリティな顔して年上なの?もう意味が分からないよ〜」

「こう考えてみるとどんどんあいつに対しての疑問が浮かんでくるな」

「タマったらどうして自分のことを話さないのかしら。私たちにばれたらヤバイことでもあるのかしら?」

「俺みたいに正体が"悪魔"ってな感じにか?」

「さあ、どうだろうね?」


ばれたらヤバイことを自分に例えて口にするサコツに一瞬目を向けそう呟くとクモマはまた正面を向いて目的地を目指す。

サコツは自分が悪魔ということをメンバーに知られるのが怖くて今までずっと隠していた。
果たしてトーフもそんな感じなのだろうか?

そしてあと1点、トーフに対して気になることがある。


「ねえ、何でトーフは右目に眼帯をつけているんだろう?」


それは他のメンバーも前々から気になっていたことだった。


「だよね〜!あの眼帯って一体何なのかな〜?右目怪我しちゃったのかな?」

「考えてみればあいつって今までずっと左目だけで過ごしていたんだよな」

「うわーそりゃキツイぜ。片目だけの世界って結構不利だぜ?」

「………まさか、右目はもう使えない、ってことかしら?」


ブチョウの言葉に全員が絶句する。
怪我だとしたらメンバーに告げるだろうしいい加減治ってもいい頃だ。
しかしトーフは今まで一度も眼帯については話さなかった。
つまりそれはメンバーに知られたらいけないことなのだ。

そうだとするとブチョウの意見は一理ある。

思わず沈黙になるその場。
地面に足をつけるたび耳に響く音だけが鳴り響く。


「とにかく」


しかしすぐにクモマの声で沈黙が破られた。
クモマはどんどんと近づいてくる高いビルを睨みながら言った。


「トーフを連れ戻そう。トーフがいないと僕たち何も出来ないんだし」


全員がもちろんと頷き、険しい表情でビルに向かって走る。

そしてトーフを連れたロボットたちが消えた高いビルは目前にまで迫ってた。




+ + +


『オ前 一体 何者 ダ?』


メンバーらがこちらへ近づいているのを察していたロボットたちだがとくに慌てた様子も見せずベッドに縛り付けられているトーフを面白げに眺めている。
自由を奪われたトーフは逃げようと体を動かすが、手首足首胴体全てを硬い器具で固定されているため動けない。
首だけが何とか動かせるようで、言葉を発したロボットを睨むことだけは出来た。


「さあ?あんたらに教える筋合いもないで」


トーフの金色の左目がギラリと光る。
歯を食い縛って、とにかく放してくれと言うのだが案の定放してくれなかった。

ロボットは目をチカチカ光らせながらトーフにまた一歩近づく。



『頑固ナ猫ダ 我々ハ オ前ノコト 知リタイダケダ ドウシテモ話サナイ気カ?」

「な、何や。拷問させる気か?ざけんじゃないで!」


どんどんとトーフに手を伸ばしてくるロボット。
フックになっている手が大きく目に映ってくる。
ロボットはトーフの顔に手を伸ばしていた。


『我々 オ前ノコト 不思議デ タマラナイ』


トーフは睨むだけ。
ロボットは手を近づけながら機械的な言葉で訊ねる。


『オ前 何カ知ッテルダロ?』

「…」

『ドウシテ 話サナイ?』

「……」


トーフは睨むだけ。
ロボットの手は更に近づいてくる。
トーフの右目に。
眼帯に。

そのことに気づくとトーフはとっさに顔を背けた。
奴の手が眼帯に触れないようにとにかく動かした。


「や、やめい?!」

『ドウシタ? ドウシテ ソンナニ 怯エテイル』

「怯えてなんか…!」

『動揺ソテルゾ 何ダ コノ眼帯ニ 秘密ガアルノカ?』

「!!」


ロボットの手は見る見るうちに大きく目に映る。
トーフは叫ぶ。


「ダメや!右目だけはホンマ何もせんでほしい!」


トーフは叫ぶ。


「右目以外なら何やってもええから!せやから右目だけは見逃してくれや!」


トーフの目は誠に真剣。
ロボットもそれには驚いた様子を見せる。


「ワイが何者なのか言うことはできん!せやけど体なら何やってもええで!解体するなり何しても…!」


突然、トーフの視界が赤く染まった。
トーフの視界だけが赤くなる。


「あかん………」


トーフの頬に伝う生温い液体は、ベッドを濡らしていく。
ロボットもさらに驚いた様子を見せた。



『オ前……?!』



+ + +


ついにメンバーはトーフがいるビルのような建物の前までやってきた。
カシャっとクモマが足を踏み止め、その場に音はなくなった。

全員が建物を見上げた。


「ここか?」

「トーフちゃん無事かな?」


オドオドしているチョコの肩をブチョウが叩く。


「心配しないでもいいわよ。とにかくあんたはタマがいると思う5階へ突っ走ればいいわ。あんたは一番足が速いんだから」

「う、うん…」

「それにしてもよー。建物までこんなに機械ビッシリなんてビックリだぜ」

「本当だね。もう気味が悪い領地を飛び越したね」


この建物、見る限り高く広い建物だ。きっとこの村で一番大きな建物なのだろう。
しかしその分不気味だ。赤いライトが点滅していたり、見る限り重そうな場所。
何だか見ているだけで頭が痛くなる。
だが、そんなところでひるんでいる場合ではない。
この建物の中にはトーフがいるのだ。
トーフを助けるためにメンバーはこの建物にやってきているのだ。

とにかくこの不気味な建物の中に突っ込むしかないようだ。


「さあ、行こう」


クモマを先頭にメンバーは建物の中へ入っていった…のだが、真っ先に逃げの準備に入ってた。
建物の1階に足を踏み入れるとそこはロボットたちの集会でもあったかのようにロボットたちがビッシリと詰まっていたのだ。

そしてやはり建物内も足音が機械的な音を発している。
そのためメンバーの足音にロボット全員がこちらに目を向けたのであった。


「げ?!これってヤベーぜ?」


サコツに言われなくても分かるよそのぐらい。
ロボットたちの手や体を見れば一目瞭然。
あるロボットの手は刃物になっていたり銃になっている。あるロボットは腹がマシンガンになっている、ミサイル発射しそうな胸を持っている。
それらをロボットらはメンバーに向けていたのだ。
あぁ、これはヤバイ。
メンバーは早速突っ走っていた。


「「ぎゃああああ〜!!!」」

「殺されるー!!!」


銃の音が散乱する中、メンバーは上の階に行くため走った。走りながら銃弾を避けた。
その中で足の速いチョコは泣き顔を作りながら先頭をぶっちぎる。
ときどき頭上や足元に銃弾が過ぎるので、もう絶叫の嵐だ。


「きゃああ!もうイヤだー!!」


それでも先頭を走るチョコはどんどんとメンバーを置いて突っ走っていた。
その後をソング、ブチョウ、サコツ、そしてクモマと続く。


「怪我したときは言ってね。僕が治療してあげるから」

「助かるぜ!」

「私は大丈夫よ。身代わりの術を使えるから」

「といって、俺を身代わりに使おうとするんじゃねーよ!!」


メンバーとメンバーの間を銃が過ぎり、場は見る見るうちに熱くなる。
意外にも建物内は大きな機械がなく、むしろ何もないに等しい。
そのためたくさんのロボットたちは躊躇なく暴れまわるのだ。


「たーすーけーてー!!!」


わんわん泣きじゃくるチョコと何とか並ぶことが出来たソング。
悪態をついて言った。


「とにかくまずは階段を見つけるぞ」

「わーん!もうイヤだー!トーフちゃん〜!!」

「…」


チョコはソングの言葉に耳を傾けずに自分の世界に突っ走っていた。
怖いから逃げる。何も考えずにただただロボットから逃げようとしている。

目的を忘れているチョコにソングは叫んだ。


「うるせえぞアマ!!泣いてる場合か!俺らの目的を思い出せ!!」


そしてソングは


「何も言わず俺の言うことを聞け!!今すぐ前に屈め!!」


チョコの体を前に倒したのだ。
突然背中を押され、チョコはバランスを崩して転倒する。
無責任なソングにチョコが文句を言おうとしたときだった。

ソングの行動の意味を知ることになる。


『マズハ オ前ダ』


チョコを狙って体を突っ込んできていたロボットがいたのだ。
チョコの身代わりとなってソングがロボットを受け止める。素早くハサミを巨大化させて。

ロボットの威力は強く、ソングはロボットと一緒に壁にぶつかっていた。


「ソング?!」


機械の壁が凹み、そのせいか怪しい煙が立つ。
そのためソングの姿も襲ってきたロボットの姿も見えなかった。

しかしチョコの声にソングは答えていた。


「いいから先に行け!俺はこいつらを仕留める」


また音が鳴った。
それはソングがロボットを切り刻んでロボットを破壊した音だ。
煙はより一層立ち、他のメンバーも何が起こったのかサッパリ分からなったが、とにかく前へ走る。

チョコは不器用に自分を助けてくれたソングにお礼を告げると、メンバーと並ぶため走りを緩め、一緒に上の階へ目指して行った。






この場に1人、武器を構える影。
ロボットは戦いが好きだ。殺意のある奴からまずは仕留める癖がある。
そのためこの階にいたロボットは全員ソングに体を向けていた。


「俺に勝てると思っているのか?このポンコツが」


ソングの不敵な笑みと共に零れた言葉を合図にその場は大きな爆発を生んでいた。
ロボットたちがさらに銃弾をばら撒き、爆発の如く大きな音が鳴る。煙もひどいがその中でもソングは動いていた。


まずは一体。


「テンペストーソ (嵐のように激しく)」


ハサミを全開に開いて嵐の如く強く切り裂いていくソングの姿がそこにあった。
爆発はソングが生んでいく。









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これからソングの戦闘シーンです!
「テンペストーソ」のように音楽用語を技名に使います。

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