動物耳と尻尾をつけたメンバーが変な街の中を歩いていく。


「うわぁ…本当にここって普通の人間がいないんだね…」


自称クマ、だけど本当はタヌキの姿になっているクモマが辺りを見渡しながら呟く。
元から姿がトラ(?)のトーフも頷いて答える。


「ホンマやな。何かえらい変なとこに来てしもうたな…」

「ここにも"ハナ"があるの?」


ウサギ耳のチョコが身を寄せてきた。
目を瞑って"笑い"を見極めてからトーフが首を縦に振った。


「ここの"ハナ"はそこまで侵食しておらんと思うわ」

「お、そうなのか?」

「村人を見る限り、あの姿が風習みたいみたいやし、そん他には異常は見られへんやろ?しかも"笑い"を見極めてみたんやけど"笑い"はあんま吸い取られていないみたいやわ」


トーフに教えてもらい、全員が軽くため息をついた。
ここの村は"ハナ"にほぼやられていないようだ。
今回は楽に過ごせるという意味での安堵のため息だ。


「そしたらのんびりできるね」

「この姿っていうのが嫌だけどな…」

「あんたにお似合いじゃないの。そのカメの姿」

「ぶっ飛ばすぞてめえ」

「非力のあんたが私を飛ばせるはずないじゃないの。あんたバカじゃない?」

「…どうせ…どうせ…」


いじけるソングをブチョウは楽しそうに眺めている。ソングは彼女の玩具扱いされているようだ。
かわいそうなソングのことはいいとして、メンバーは街の中を歩いていく。

街の中を歩いている村人の姿も皆動物の姿になっていた。
耳と尻尾をつけていろんな動物に化けている。
そんな人たちをすれ違うたびメンバーは白い目で見てしまう。

何でこんなところに来てしまったのだろう…。


「それで」


村人の姿を見て無言になっていたメンバーにクモマが話を持ち出した。


「どこに"ハナ"があるんだい?」


するとトーフはまた目を瞑りだした。"笑い"を見極めているのだ。
その間にチョコがちょうど通りかかった店の前に立ち止まった。


「この置物…かわいいな〜」


チョコは置物にメロメロになっていた。
しかしメンバーは厳しい。


「また車の中に置物を増やす気なのか〜チョコ」

「そうだよ。ただでさえ車の中は狭いんだから」

「全くだ。無駄なスペース作るぐらいなら俺の座るスペースを作ってくれ」


実はソング、今までずっと車の中では立ったまま過ごしていたのだ。
荷物の場所やブチョウが豪快に座っているため彼の座るスペースがなくなってしまい、微かにあった場所に足を入れていた。
今までよく文句を言わずにここまで来れたな、とメンバーは改めて感心しまう。

しかしそんな彼にチョコが痛恨の一撃を食らわせた。


「今、車の中に置物がないのにソングの座る場所ってないじゃないの〜。無駄な考えはやめなってソング〜」

「……そうだな」


ソングはガクっと肩を落とす。
それからすぐにトーフが目を開いた。"ハナ"の場所を見つけたらしく、口を開く。


「"ハナ"ん場所、見極めたで」

「「おお!」」


それからトーフは言った。


「"ハナ"はあん中にあるんや!」


トーフの指差す先、そこは
この村の中心に立っている"タワー"であった。


+ + +


メンバーは"ハナ"があるというタワーにやってきた。
今回の"ハナ"はそこまで笑いを吸い取っていないらしく楽に消せるということでメンバーの顔色も晴れていた。

高いタワーを見上げそして中に入ろうとしたメンバーを、猫耳をつけたお姉さんが止めた。


「あなたたち何処へ向かうつもり?こっちにある"エレベーター"を使いなさいよ」


クスクス笑うお姉さんにメンバーが目を丸くする。
初めて聞く単語の意味について問いかける。


「エレベーターって何?」

「あら、エレベーター知らないの?…あ、あなたたちこの村の人じゃないのね」


また笑って、それからお姉さんは教えてくれた。


「エレベーターとは上の階に行くときに使う"箱"よ。箱がロープで上下に上がる仕組みになっているの」

「「へえ〜!」」


そんな便利なものがあるのかと感動するメンバーにお姉さんはまた笑う。


「本当に何も知らないのね。ふふふ。それじゃあ一緒に上に上がりましょうか」


そしてお姉さんに誘われメンバーは"エレベーター"に乗り込んだ。


+ + +


エレベーターの中は本当に箱みたいだった。
密封された箱の中、メンバー6人とお姉さん。


「あなたたち、何階へ向かうんですか?」


猫の尻尾をフワリと動かすお姉さんの質問にメンバーは戸惑った。
"ハナ"がタワーのどこにあるのか、わからないのだ。

トーフが答えた。


「行けるとこまで行ってくれや!」

「何だその変にカッコいい言葉は!」

「えっと…何処でもいいです…」


突っ走るトーフをソングが止め、クモマが適当に誤魔化した。
お姉さんはまた笑って、そして


「それじゃあ5階に行きましょう。私も今から5階に行くところでしたし」


エレベーターの脇にある「5」と書いてあるボタンを押した。
するとエレベーターはガタンと動いて上に上がっていく。
はじめてエレベーターに乗ったメンバーはその感覚がとても


「うわあ!!」

「変な感じがするぜ!何だこれ!上に上がっているのか?!」

「き、気持ち悪くなってくる…」


気分が悪くなっていた。
お姉さんは楽しく笑う一方。



エレベーターは上に上がっていく。
その間も話が行われていた。


「あなた方って一体何処からいらしたんですか?」

「あぁ、エミの村っていうところから来たんだ」

「へえ、知りませんね」

「エミの村はそこまで大きな村じゃないからね」

「だけどいい村だったぜ!俺あの村好きだ!」

「そういえばサコツってエミの村出身じゃなかったよね〜?」


チョコに話を向けられサコツは焦燥する。


「え、そ、そうだけどよ〜」

「ん〜?サコツってどこの村出身なの?」


ウサギ耳が近寄ってきてサコツは後ろに下がる。
しかし大きなリスの尻尾の所為でそれ以上後ろに下がることは出来なかった。


「…まあ、どっかだぜ」


非常に冷や汗をかいているサコツ。
なぜこんなに汗をかいているのだろう。
故郷を聞いているだけなのにこんなに焦燥しているということは、何かあったのだろうか。
気になったが話しをサコツにそらされたため聞けなかった。


「ってかよ〜この中やけに暑くないか?」


言われて、気づいた。
確かにこのエレベーターの中はやけに暑い。

熱気が篭っているエレベーターの中でお姉さんが少し身を崩した。
それをクモマが支える。


「だ、大丈夫ですか?」

「あ、うん…大丈夫よ」

「何でこの中こんなに暑いわけ〜?」

「おかしい暑さだな。一体何でだ」

「誰かおならでもしたんじゃないの?」

「どんなおならだ!熱気の篭ったおならとか相当なもんだぞ!」

「お前ももっと普通のツッコミしろよソング」

「…何や嫌な気がするわ…」


トーフの呟きはみんなを硬直させた。


「おいおい〜、冗談言うんじゃねーよ〜」

「冗談じゃあらへん。何かさっきから変な"気"を感じるんや」

「………そうね。何か感じるわね…上から」


ブチョウも頷いていた。
彼女は昔から魔物と戦っているため"気"とか感じるのは得意らしい。

二人が頷いているのを見て、チョコが眉を寄せた。


「ちょっと待ってよー。上からってこの上って何があるわけ?」

「…もしかしたら…」


ブチョウが言いかけた、その瞬間。
エレベーターの中が赤く光りあがった。
ブーブーと音も鳴り出す。


「え?な、何?!」

「何の音だ?」


次はガタっとエレベーターの中が揺れた。


「うわ〜!!」

「え!!何なの?!何これ!!」

「これ一体なんだよ!」


暑い中で揺れ上がるこのエレベーターは、まさに地獄であった。
お姉さんは気持ちの悪さについにダウンしてしまった。


「猫耳お姉さん!」

「…クソ!これはどういうことなんだ!」

「揺れないで!!揺れないで〜って、きゃああ!!」


悪態つくソングの前に立っていたチョコが後ろに倒れ掛かってきた。
ソングが受け止め、無事倒れずにすんだ。


「おい、気をつけろ」

「ごめんねソング」


しかしエレベーターの揺れは治まらない。
チョコは更に後ろに倒れこむ。
ソングも堪えるが、ついには一緒に倒れてしまった。


「ああ!」

「っ!!」

「だ、大丈夫!2人とも!」


倒れたソングとチョコを心配するクモマに、チョコは「平気よ〜」と言って無事立ち上がる。
ソングも立ち上がろうとしたのだが。


「………っ!!」


背中についている甲羅が邪魔で立ち上がれなかった。
仰向けでもがくソングをブチョウがまた面白そうに眺める。


「カメはひっくり返ったら立ち上がれないのね」

「…くそぅ!!」

「ソング、僕の手に捕まって」


かわいそうなソングに救いの手を出すクモマであったが、エレベーターの揺れは激しい上に赤く光りあがっているエレベーターの中だ。
クモマは自分のことで精一杯であった。

暫く騒いでいるとき、上から声が聞こえてきた。


『だはははは!ざまあみろラフメーカー!!』


不細工な声が聞こえてきてメンバーの表情が一気に強張る。
上には本当は誰もいないはずなのだ。メンバーがいるところはエレベーターの中なのだから。

このエレベーターの箱の上に誰かが乗っている。

トーフが叫んだ。


「魔物か?!!」

「「!!!」」

『だはははは!そうだ!お前らを倒しにきた!』


トーフに正体を破られ魔物が豪快に笑う。
魔物が笑う度にエレベーターの中が揺れる。
メンバーはソングのようにならないように踏ん張る。


「倒すって……いやな予感がするよ…」


このエレベーターはお姉さんの情報によるとロープでつるされている。
そうするとそのロープを切ってしまえば
エレベーターの箱は下へ落っこちてしまう。


そしてその感は無念なことに


『落ちろ、ラフメーカー』


当たってしまった。
魔物は箱を吊るしてあるロープを勢い良く切り、エレベーターの箱は下へ落ちてしまった。






>>


<<





------------------------------------------------

ってかエレベーターをファンタジーに使う自分って(笑

------------------------------------------------

inserted by FC2 system