見る見るうちに、自分達が乗ると思われる車が壊れていく。
一人の少年の手によって…。


2.車作り


トンカチ片手にクモマがぎこちなく釘を打っていく。
打たれた釘は様々な方向に曲げられ、
釘だけではなく車を打ってしまうときもしばしばある。
その度、車から破片が飛び散るのであった。


「…ふう。疲れた」


クモマが額の汗を軽く拭う。
汗は太陽光を浴び、キラキラと輝いてみせる。

いい仕事をした。と言わんばかりのいい表情のクモマに
ツッコミ上手のソングが早速突っ込んで来た。


「前より酷くなってないか?車…」


対しクモマはいい表情のまま。


「そう?頑張って作っているところなんだけどね〜」

「一つ、お前に言いたいことがあるんだが」


そこでソングは言った。


「お前、向こうで上の空しとけ」

「え?何で?」

「車が可哀想だ」

「何だよ?それ!大体この車は僕が作った車なんだよ!」

「それは分かっているんだが…これはあんまりだろ?」


そしてソングは目の前の車を指差した。
指されてクモマも見る。

車と呼ばれたその"箱"は、
様々なところから醜い姿の釘を刺しており
一部は破損。
一部は凸凹。
車輪は四角から三角へと進化を遂げて。

とにかく、見る限りこの"箱"は車と呼べそうになかった。


「俺が修理する。お前はとにかく向こう行ってろ」


トンカチをクモマから奪い取り、無理矢理その場から離させた。
クモマは不満そうだ。
ソングは気にせず、さっさと車の修理に取り掛かる。


「ソングはこの車直せる自信あるの?」


自分の仕事が取られたのが相当不満だったようだ。
問われ、ソングはクモマを見ずに、作業を続けながら応えた。


「器用さには自信ある」

「ふーん。でもさ、一人でこの車修理するのは大変じゃないか。僕が手伝ってあげるよ」


するとクモマはどこからともなく別なトンカチを取り出した。


「え?ちょっと待て!」


ソングの止めも無視してクモマはトンカチを車に刺さっている釘目掛けて
勢い良く、振り落とした。

その場に、綺麗な星が飛び交った。

打たれた一部はすぐに破損し、欠片は宙を舞った。


さらに醜い姿になってしまった車に絶叫するソング。


「お前――――っ!!!」

「あ、ゴメン」

「ゴメンですむか!これ俺達が乗る車だぞ!」

「わかってるよー」

「おいおい!何、ドサクサに紛れてまた釘打ってんだよ!しかもまた穴空けやがって!!」

「これもデザインの一つってことじゃダメかな」

「ダメだ」

「そんな即答しなくても!」

「俺はとにかくこんな穴だらけの車に乗りたくねぇんだ」

「…ぅ〜ん…ゴメンね…」

「謝っている暇あるなら、どいつかの手伝いでもしとけ。…って、おい!!手打ってる!自分の手打ってる?!」

「あいたたた」

「棒読みで言うな!」

「よ!たぬ〜と凡」


二人で言い争っているとき、背後からハスキーな女の声が聞こえてきた。
そちらの方を振り向く。
そこには偉そうに仁王立ちをしたブチョウの姿が見えた。

ところで、たぬ〜と凡って…?


「待て。今、お前何て言った?」

「ジョナさん?」

「違ぇよ!しかも誰だよ!ジョナさんって!」

「ねえ、ブチョウ。たぬ〜と凡って誰のこと?」


クモマの問いに、ブチョウは指を差しながら応えた。


「たぬ〜があんたで、凡がお前」


指を差された順は、前者がクモマ。後者がソング。

つまり、たぬ〜と呼ばれたのがクモマで、凡と呼ばれたのがソングとなる。

言われ、二人が同時に目を見開いた。



「「待て待て待て待て!」」

「たぬ〜って何?たぬ〜って!」

「凡って失礼だな!お前!何で俺が凡なんだ?」


声が重なる二人の質問をブチョウは聞き分けることができたらしい。
ブチョウは簡単に質問に答えた。


「たぬ〜はタヌキから由来」

「タヌキ…」

「凡は明らかにあんたが凡人だからよ」

「凡人…」

「DO?私ってなかなかネーミングセンスよくない?」


そして、胸をはるブチョウ。
DO?って言われた二人はギャ―ギャ―騒ぎだした。


「よくない!よくない!タヌキって失礼だね!僕がタヌキに似ているっていいたいの?ねぇ!」

「明らかに凡人〜って何だよ!こいつの方が明らかに凡人だろが!」

「な…!何言ってるの!僕が凡人だって?失礼だね!僕はキミよりかは凡人ではないと思ってるよ!」

「何だとぉ〜!」

「はいはい。どんぶりのカツ丼はやめなさい」

「待て!何ていったか?"どんぶりのカツ丼"?」


ブチョウの謎の言葉に隙を入れずにソングがツッコミを入れた。
続けて、クモマが言った。


「…それって、"どんぐりの背比べ"じゃない?」

「分かったのか?!」

「そうよ。さすがたぬ〜。なかなかいいセン言ってるじゃない」

「あってたのか?!酷い間違いようだったぞ?!」


ソングはツッコミのときだけやけに元気が良い。


「凡。あんたはさっさと作業でも進めときなさい。たぬ〜もよ」

「何偉そうに言ってんだ!お前は何もしねぇのか?!」

「私は、助監督よ」

「「監督は誰だ―っ!!」」

「私よ」

「「お前かよ!!」」


思わず、声をそろえてツッコミを入れるソングとクモマ。
そのままクモマが続けた。


「ブチョウは何もしないの?」

「私はここに立っているのが仕事よ」

「何て楽な仕事なんだ…」

「いいな〜僕も作業止めて雲の流れでも見ていたいなぁ…」


ブチョウの発言にクモマは目を細めるのだが


「なら、お前は作業止めて上の空にでもなっとけ!!」


遠慮ないソングのツッコミを浴びた。
しかし、クモマはやはりソングの言葉を聞かない。
一方に車から離れず、釘…いや車を打ち続けた。
その度、車が破損する凄まじい音が響き、
そしてソングの絶叫、怒鳴り声も後を追って響いていた。





そのころ、他のメンバーは。


「ワイらはこの車を引いてくれるモノを探すで〜」

「アイアイさー」

「了解―!」


トーフをはじめ、サコツとチョコは車引き用のモノを探す作業に取り掛かっていた。
しかし、そこでサコツが疑問を飛ばした。


「車を引いてくれるモノって何だ?」

「…さあ?」

「やっぱり動物かな?私動物と会話できるから聞いてみようか?」


チョコが自然に言葉を吐いた。
その発言に驚くサコツ。

そう、チョコは実は動物と会話ができるという不思議な能力を持っているのだ。
本人はその能力にあまり自信が無かったらしいのだが。


「すげーな。チョコ。お前天才?」

「いや〜照れるわ」

「ほな、チョコの言うとおり動物に引いてもらうか」

「そうだな。動物が一番いいと思うぜ」

「うん、そうだね〜。そしたらちょっといい子探してくるね〜!」


確認を終えるとチョコは早々と動物達の元へ行き、何か会話をしだした。

ついでに今彼らがいるこの場は、村の門から抜けて数メートル離れた場所。
来た道を見返すと、まだ自分達がいた"エミの村"の門の姿が見える。

この場は意外に野生動物がたくさん住み着いているらしく、見渡すと多数の動物達がこちらを不思議そうな顔で見ている。
驚いたことに牛や馬などもいた。

そんな動物と普通に会話をしているチョコを見て、サコツが溜息吐いた。


「すげーなー。本当に動物と会話できるんだ…」

「ホンマやな…。ワイも初めて見たわ…」

「人間不思議だらけだな」

「そうやな。…ってかワイはあんたが妖精さんやったことに驚いたわ」


急に自分の話に変えられ、焦燥した様子でサコツが返した。


「あ〜そっか?外見からして俺は妖精さんじゃねーか」


無茶な注文してくれる。


「…いや、あんた外見めっちゃ悪人面やで。ホンマに」


トーフちゃん、あんたハッキリ言いすぎ。
悪人面と言われ、サコツは大胆に笑った。


「お前失礼だな〜☆ま、そういうところが可愛いんだけどな☆」

「か、可愛い?またあんたワイのこと可愛い言うたな!ワイはそれ言われるのが一番嫌いなんや!!」


カッと怒り出すトーフにさらに笑い声を高めるサコツ。


「あんたの方が失礼やねん…ホンマ腹立つわ〜」

「な〜っはっはっは!。ゴメンコゴメンコ!な〜っはっはっは………っ」


そして、サコツは急に笑い声を止めた。
突然のことに目を丸くするトーフ。


「どないしたん?」

「……ちょっと待っとけ。トーフ」

「…?」

「……………」


トーフの動きを止めるとサコツはゆっくりとその場から動き出した。
ゆっくりとゆっくりと…前進して。
獲物を狙うサバンナのライオンのごとく。
サコツはゆっくりと慎重に歩いていった。


そして、ある程度近づいたところでサコツは
素晴らしいスピードでその獲物を捕らえることに成功した。


「ブヒ―――――っ!!」


それは、桃色の豚だった。


「豚ゲッチュー!!」

「わー!何捕まえてるんやねん!あんた〜!!」


サコツの行動にトーフは叫ぶ。
サコツの腕の中に埋もれている豚も同じく叫ぶ。

そんな豚を見て、トーフは先ほどの調子で訊ねた。


「その豚どないする気やねん?」


対し、サコツはニンマリと笑った。


「さあ?」

「何やねん!なんとなく捕まえただけかいな!」

「だってさ、目の前にさ、豚がさ、いたからさ、ついさ、捕まえてしまったさ」

「なに文節分けるときのような発言しとるんや?!」

「ブヒブヒ―――!!」


「な、何なに〜?豚の鳴き声が聞こえたけど〜?!」


豚の悲鳴を聞いて、動物と会話中だったチョコが駆けつけてきた。
そして、サコツの腕の中にいる豚を見ると、困ったように笑った。


「捕まっちゃったのね。豚ちゃん」

「ただのサコツの気まぐれでなんやけどな」

「照れるぜ!」

「褒めてないわよ?!」

「せやけどせっかく捕まえた豚やし…どないするかな」

「食べるか」

「ブヒ―――!!」

「めっちゃ嫌がってるよ!食べるなんて可哀想よ!」

「んじゃ、他に豚の使い道ってあるか?」


サコツは腕の中に埋もれている豚に目を向けた。
キラキラとお星様のように煌く瞳。
愛らしい桃色の皮膚。
そしてちょっと太目の体。

それらを見て、サコツ。


「………………可愛い………」



「「………は?」」


突然の告白に耳を疑うトーフとチョコ。
サコツは気にせず捕まえた豚を見続けた。


「こんな可愛い奴、見たの始めてだ…なんて可愛い奴なんだ…」

「ど、どないしたんや?サコツ…」

「告白されて豚も驚いてるよ」

「いや…マジで可愛い…うわ、どうしよ。何だよこいつ…」


非常にいい笑顔を作って、言った。


「もう、俺のものだ」


「「何か言っちゃった―――っ!!!」」


叫ぶ二人を無視する形でサコツは豚を見つめ、淡々と言い放つ。


「もう俺のものだ。エリザベス。俺はお前の虜だぜ☆」

「あかん。名前まで勝手に付けてしもうたわ」

「豚も何がなんだか分かっていないみたいよ…」

「エリザベス。今度から俺と一緒だ。俺達は一心同体だ」

「もうそんな仲までいったんか?!」

「一心同体は言いすぎでしょ?!」

「げへへ。可愛いなーエリザベス…エリザベス………はっ!!」


突然声を上げるサコツにまたもや驚く二人。
恐る恐るトーフが聞き出した。


「どないしたんや…?」

「エリザベスを使おうぜ☆」

「え?何に〜?」

「車引きにだよ!」

「「……はっ!!」」

「そしたら俺らはずっと一緒だー!げへへー」

「あかん。重症や…。一目ぼれって怖いわ…」

「ってか、待ってよサコツ!まだこの子の意見も聞いていないし…」

「何言ってんだよ。意見聞かなくてもエリザベスも同意見に決まってるぜ」

「…ホンマか?」

「ううん。すっごく否定してるよ。嫌だ嫌だ言ってる…」

「行こうぜエリザベスー。俺達の愛の馬車へー」


するとサコツは豚を抱いたまま早々とクモマたちがいる車の元へ弾んで行った。
花を舞って走るサコツに置いて行かれる二人。
サコツのボケにトーフが遅いながらもツッコミを入れた。


「その馬車を引くのがその豚なんやけどな…」

「待って、やっぱり車引くのってあの豚なの?」

「仕方ないわ。サコツがあそこまでベタ惚れしてるんやで?…楽園に行かせたれ」

「……かわいそうなエリザベス…」


無理矢理車引きに使われてしまう豚(命名エリザベス)のことを考えると複雑な気持ちになってしまう。
トーフと目を合わせると二人で苦笑いを作り、そしてスキップしているサコツの後を追いかけて行った。






「よし、出来た」

「すごいね。ソング」

「意外に器用なのね凡」


場は戻る。
一汗を拭うソングにお褒めの言葉を飛ばすクモマとブチョウ。

何とあのボロボロになっていた車をソングが全て一人で直したらしい。

手を打ってクモマがもう一度褒め称えた。


「ホントすごいよ。よく直せたね」

「お前が邪魔しなければもっと早く直せたのにな」


本当にソングは器用のようだ。
ボロボロの車は、まだ名残があるのだが、"箱"から"車"の形へと化してた。
穴のあいていた部分は全て剥ぎ取って新しい板を貼り、
三角になっていた車輪も今では立派な丸になっていた。
おまけに屋根もつけたらしい。
骨組みを作って、その上にシートを敷き、日陰、雨避けを作った。
これで日差しや雨、雪にやられることは多分ないだろう。

*車をイメージできない方は、ここをクリックしたら画像が出てくるぞ!


暫し車を眺める三人にある一人の男が非常にいい笑顔で駆け寄ってきた。
そいつから発される声も非常に弾んでいた。


「ヤーヤーヤー。元気かい?皆の衆〜え?俺か?俺は元気いっぱいだぜ☆」

「誰も聞いてねえよ」


あまりにもいい弾みように思わず冷たい視線を送って返すソング。
それをカバーする形でクモマが普通に挨拶を交わした。


「あ、サコツ。おかえりー」

「その美味そうな豚は何よ?チョンマゲ」


クモマに続けてブチョウも発言するのだが…またもや謎のネーミングがされていた。
チョンマゲとはサコツのことらしい。
確かにサコツは長い赤髪を高い位置に束ねているヘアスタイルをしているのだが…。

変なネーミングをされていたのにも関わらずサコツは気にせず、三人に言った。


「こいつ、エリザベス。今度から俺らの車を引いてくれることになったんだ」


非常にいい笑みをされ、焦燥しつつもソングが訊いた。


「豚が引くのか?」

「おう!」

「…大丈夫か?」

「心配ご無用!」

「自信満々だな」

「逆から読んだら"んまんまんしじ"ね」

「逆から読む必要あるの?!」


途中で紛れ込んできたブチョウとクモマの発言は気にしないでおきましょう。

その間に、トーフとチョコもこちらへとやってきた。
そして、目の前に立派な姿で立っている車に感動した。
目を輝かせてチョコが叫んだ。


「何、この車―!すごいじゃないー!」

「ホンマすごいわー。よぉあの無様な姿の車をここまで変えることができたな」

「照れるわね」

「お前が照れるなよ!」


おかしいブチョウにツッコミを忘れないソング。
目線を変えてサコツの腕へ向ける。
そこには困った表情をしているエリザベスこと豚の姿が。


「んで、この豚がこの車を引くんだな?」

「そうだとも」

「本当にか?」

「ああ。俺のエリザベスだからな」

「は?」


危険な言葉を吐いたサコツにソングは眉を寄せる。
同じく眉を寄せたチョコが付け加えた。


「サコツがこの子にベタ惚れしちゃったの」

「…豚にか?」

「人種を超えた愛ってことやねん」

「…すごいね…」


感嘆な声を上げるクモマを打ち消すようにトーフは手を打ち、メンバーの動きを止める。
全員分の視線を浴び、トーフが満足そうに、微笑んだ。


「ほな、これで車が完成したわ。皆のおかげでこれからいい旅ができそうやねん」


トーフの微笑みに、皆も同じく返す。


「いえいえ。僕は何もしていないよ」

「むしろお前は俺の邪魔をしてくれたな」

「私は仁王立ちでその場に立派に立っていたわ」

「車引き用の動物も見つかってよかった〜」

「エリザベスは俺のものだ!」


「ほな、早速作った車ん中に荷物入れて、空いた場所に皆座るで」


トーフに言われ、頷き、行動を開始する。
皆それぞれの荷物を持ち、それをシートに覆われている車の中へ入れる。
その作業をするために皆は車の中へ入ることになった。

そして、車の中に入ると、さすが全面覆われているだけあり、真っ暗だった。


「ちょっと?!真っ暗じゃないの!」


叫び声を上げるチョコ。


「…しまった。ランプがないんだよな…」


苦い表情で返すソング。


「これじゃあ真っ暗のまま旅をするの?」


不安げに質問するクモマ。


「どこかで買い物するしかないわな」


冷静に返すトーフ。


「エリザベス、頑張って引いてくれよ」


ベタ惚れ中のサコツのことは放って置きましょう。


「豚の丸焼き、豚の丸焼き」


不吉な言葉を吐いているブチョウのことは無視していてください。


「…ちゅ〜ことは、まず始めに近くの村で買い物といくか」

「そうしようか」

「賛成〜☆」


簡単に計画を立てている間に、全員の荷物を置き終えた。
無駄に多い荷物は見事、車の半分を使ってしまい…


「…どこに座ればいいの?」


クモマの何気ない問いに全員が無言で返した。

空いた車のスペースを見る。
明らかに狭い空間。
1畳半ぐらいしかなさそうなそんなスペースに6人が座らなくてはならない。


ハッキリ言って、無茶な注文だ。


「……………」


暫し、空いたスペースを眺めるメンバー。


「僕、6人は無理じゃないかと思うんだけど…」


無言のメンバーに自分の意見を主張するクモマ。
彼の意見に全員が同意した。


だけど


「マイナス思考になっちゃダメだぜ!ここはプラス思考でいこうじゃねーか!」


先ほどから機嫌のいいサコツが言った。
対しソングがツッコミを入れる。


「待て!プラス思考になっても無理なことは無理だろ!」

「でも、頑張れば大丈夫かもしれないよ?」


ソングの否定をクモマが無に変えた。
同じくそれに肯定するチョコ。


「そうそう!一回座ってみようよ。そして無理だったら考えよう」

「そやな。ほな一回座ってみるか」


トーフの言葉を合図に、全員が狭い空間に座ってみせた。


真ん中に堂々と座るブチョウの左右に、何とか座るトーフとクモマ。
トーフの隣にチョコ。
クモマの隣にサコツ。そしてその間にソングが、立って入っていた。


ぎゅうぎゅうであったが、見事全員が座ることが出来た(一名立っているのだが)。


「驚いたことに、皆座ることができたね」


のんびり口調でクモマが最初に言葉に出した。
応答するトーフ。


「ホンマやな。ワイはてっきり座れへんかと思ったわ」

「頑張れば人間強くなれるわね」


何かカッコいいような発言をするブチョウにどうしてもソングは言いたかった。


「何でお前はそんなに堂々と座っているんだ!!」

「何であんたは立っているのよ」

「お前が優雅に場所をとっているから俺の座る場所がなくなったんだろが!!」

「あ〜りゃま」

「てめぇ……っ」

「まあまあ、これで落ち着いたことだし、このまま旅に出ようじゃないか?」

「そうやで。こんなところでぐずぐずしとる場合じゃあらへんで。早速出よう〜」


二人の言い争いにクモマとトーフが割り込み、中断させる。
そして、それにチョコが頷いた。


「そうだね。このまま行っちゃお〜う!」

「なら、俺はエリザベスに縄縛り付けてくるぜ」


そう言い残すと車の出口に一番近いところに座っていたサコツは車から出て、豚の元へ走りよっていった。
豚を捕まえ、腹部に縄を結ぶ。
その縄は車と繋がっている。
この縄を引けば、車も一緒に動くという簡単な仕組みだ。

この役目をこの豚、エリザベスが引くことになった。


「よろしく頼むぜ!エリザベス!」

「……ブヒ…」


乗り気のサコツに対し、全く乗り気でないエリザベスであったが、サコツは無視してまた車の中へと戻っていった。
そして、エリザベスは、のんびりと、前進し、それに伴って車ものんびりと動き出した。



いざ、出発。ラフメーカー。










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