闇のように暗い森の中で、二人分の声がうるさく響く。


「道に迷ったって、あんた何無責任なこと言ってるのよ〜!」

「おれだって好きで迷ったんじゃねーよ!まずてめえがおれを追いかけてくるのが一番悪いんだ!びびって迷子になっちゃったじゃねーかよー!」

「はあ〜!?何いってんのよ!元はといえばあんたらがトーフちゃんを売ろうと突っ走らなければよかった話じゃないの!勝手に人の所為にするんじゃないよ」

「何だよ!おれらはおれらの考えがあるんだ!邪魔するてめえらが何より悪いぜ!」

「邪魔をするに決まってるじゃないの!トーフちゃんを売ろうとするなんて!トーフちゃんは私たちの大切な仲間であって友達なのよ!」

「へへーんだ。このボンビ兄弟に狙われたのが悪運だったな〜!もうこいつはおれらのモノだぜぃ」

「く、クソガキぃ…っ!」

「クソは付いてねーよ!失礼な奴だぜぇ」

「あんたみたいな奴、存在自体がクソよクソ!」

「何だと〜!俺はう○こじゃねー!そういうてめえこそがう○こがついてんじゃねーのか?」

「レディに失礼なこというね!誰がう○こつけてるって?!あんた目が可笑しいんじゃないの?」

「そ、そうかもしれない…言われて見れば何もかもがう○こに見えてくるような気がするぜ」

「う○こ症?!こわ!」

「やめろ!う○こ、近づくんじゃねーよ」

「誰がう○こよ!」

「もう皆う○こだ〜!世の中う○こだ〜!」

「う○こう○こうるさいわー!!!!!」


二人の危険な会話を聞いて、トーフは注意をするためこの世に復活した。
突然起き上がったトーフに両者驚く。


「「わあ?!」」

「トーフちゃん!」

「う○こがしゃべったぜ」

「何言うてるんやあんた!!」


今目を覚ましたばかりなのでまだ状況が上手くつかめていないトーフであったがボンビ弟の危険な発言にはツッコミを入れずにはいられなかった。
元気なトーフの姿にチョコはよかったと胸をなでおろして。


「トーフちゃんが目を覚ましてくれて助かったよ」


手を差し伸べる。


「さあ、皆のところに帰ろう」


トーフの腕を掴んだ。
しかし、次の瞬間には


「こいつはおれらの獲物だぜ!取られてたまるかよ!」


ボンビ弟がもう片一方のトーフの腕を捕らえていた。
そんなボンビ弟の態度にチョコは


「何言ってるのよ!トーフちゃんは渡さないわ!」


掴んでいるトーフの腕を自分の方に引く。
同じくボンビ弟も


「獲物は逃がさないぜ!」


トーフの腕を引っ張る。
グイグイ左右に引かれてトーフは自由を奪われてしまった。
暫く同じことを繰り返す。
両者に引っ張られているトーフ。
ついに


「じゃかあしいわ!!!あんたら〜!!!」


怒鳴り声を上げていた。そして荒々しく両者を退ける。
驚いて同時に短く悲鳴を上げる二人にトーフは言い放った。


「ワイを玩具みたいに扱うんじゃないわボケ!ワイはトラやトラ!」

「と、トラ?!お前トラだったのか!」

「どう見たってトラやないか!」


どう見たって猫にしか見えませんが。


「そうか!トラか。珍種のトラ!猫に見える珍種のトラだな!」

「そうや!ワイは珍種の…ってちゃうわい!ワイは珍種でも何でもあらへんわ!普通にトラやねん!」


憤慨するトーフをボンビ弟は面白げに眺める。
チョコは二人言い争ってしまって戸惑っているようだ。
それから暫く言い争った後、ボンビ弟が笑い声を楽しくあげていた。


「わっはっはっは!面白いぜ!こいつ猫っぽいのにトラって言っているし、口調も愉快だし。面白いぜ〜!!」


突然上機嫌になるボンビ弟にトーフはついていけなかった。唖然としている。
ボンビ弟は愉快にものを語る。


「やっぱお前売る価値あるってよ〜!だからおれらの金になってくれ〜」

「だからダメだって言ってるじゃないの!」

「全くやねん!ワイは売り物じゃないわ!」


きっぱりと断られてボンビ弟はシュンと肩を竦めた。


「ちぇ。つれねえ奴らだぜ…。いいじゃねーかよ、おれらは金がほしいんだ。力になってくれたっていいじゃねーかよー」

「ちょっと待って」


物寂しげに声を出すボンビ弟を見てチョコが素早く突っ込んだ。
疑問点を述べる。


「何でそんなにお金がほしいの?あんたらに何があったのよ?」


トーフも同意見だったのか、チョコと同じような目をしてボンビ弟を見る。
視線を浴びてボンビ弟は口を尖らすと


「…………いろいろあって…」


この村が突然身分の激しい村になってしまったことを告げた。



+ + +


仲良く手をつないで歩くサコツとボンビ兄を先頭にメンバーも動いていた。
場所はだんだん薄気味悪くなっていく。
その様子にクモマは冷や汗を流す。


「ねえ。本当にこのまま進んじゃっていいの?」

「…全くだ。何かさっきから辺りが暗く感じるが」

「何か出そうね」

「で、出るって何がだよっ!」

「タヌキが」

「マジで?!タヌキが出るってめっちゃ…怖くねー!!!」

「ソング動揺しすぎだよ!?」


辺りが薄暗くなっているということはもしかしたらお化けあたりが出るかもしれないかと思っていたソングは心が不安定になっていた。
彼はお化けが嫌いなのだ。
そんな光景をサコツが大いに笑う。


「な〜っはっはっは!ソングは臆病だぜ!そんなにビクビクするんじゃねーよ?」

「だ、誰もビクビクしてねえよ!」

「こんな姿、彼女には見せられないね」

「…いいんだ。メロディにもばれているから…」

「ばれていた?!」

「それでひどくバカにされたことを覚えている」


このときメンバーは、やはりソングってダメ男だ。と思った。

それから
それにしても、と接続語をつけてクモマがサコツに言う。


「サコツって子ども好きなんだね」


そして全員の視線はサコツに向けられた。
サコツの手にはボンビ兄の手がつながれている。
背の低いボンビ兄のために少々腰を低くしているサコツにソングは表情を顰める。

やがてサコツは無邪気に笑って答えてくれた。


「俺は子どもが大好きだぜ!だってよー可愛いじゃねーか!」


悪人面をしている割には可愛いものが好きらしい。
何ともオチャメですね☆

そんなサコツにクモマも思わず笑みを溢す。


「そうだね。無邪気なところとか子どもは可愛いよね」

「…そうか?俺はどうも子どもは気に喰わないが」

「あぁ。凡は子どもにもバカにされるから苦手なのね」

「お前にとって俺ってそんなに弱い存在なのか?!」

「水をかぶってしわくちゃになったパン並にね」

「相当だ…っ!」


顔を覆うソングを無視して、話は弾む。


「子どもと仲良くしているサコツってちょっと意外だったなぁ」

「そうか?いいじゃねーかよ。子ども好きなんだからよ〜」

「おれは子どもじゃねーよ!兄貴」

「子どもじゃないって言ったらあんたは一体何なのよ?ナメクジ?」

「ナメクジではないな!」

「そ、そしたら、あんたは…一体何なのよ?!」

「何で動揺してるんだい?!」

「え?お、おれって…ナメクジだった…かな…?」

「間違っているよ!キミは人間だよ!…あぁ僕だけじゃツッコミきれないよ。ソングも手伝って!」

「…くそ…しわくちゃになったパンだなんて。新しいパンもらわなきゃ役にたたねえじゃねえか…」

「ダメだった!すっごいぐちぐち言ってる!」


こうやって賑わっている中でも場は暗くなりつつある。
果たして何故こんなにも暗いのか、理由はあった。


「…あ!やっと道が分かったぜ!」


ここでボンビ兄が声を上げた。
ボンビ兄は自分の頭の地図がようやく結ばれたようで嬉しそうな表情をしている。
サコツもつられていい表情。


「おお!本当か!それはよかったぜ!」

「やったぜ兄貴!おれ道を思い出したぜ!」

「よかった。これでもう不安な気持ちにならないですむんだね」

「…この暗いところから抜け出せるのか?」

「おうよ!こっち側に行かなければ全然平気だ!」


そしてボンビ兄はある方向を指差した。
右に伸ばされた指先の方をメンバーも向く。
するとそこにあったものは、辺りを暗くしている原因モノがあった。


「…何だいここは?」


クモマがそこを凝視しながら訊ねる。
ボンビ兄が答える。


「あそこは"エバーダーク"という森だ」


トーンを落としてボンビ兄は語る。


「暗闇のような森で、中に入ると出るのに一苦労するという厄介な森だぜぃ!」


目線をはずして、ボンビ兄の目線はメンバーに向けられる。
メンバーの表情は優れていない。
こんな厄介な森があるなんて、と表情を固めているのだ。


「…まあ、近寄らなければ大丈夫だぜ!安心してくれ!」


メンバーの表情を見てボンビ兄は慌ててそう言うと
手が繋がっているサコツを引いて"エバーダーク"を退けて歩く。
メンバーも後につられて不気味な森から離れていく。

すると驚いたことに辺りは徐々に明るくなっていった。
あの暗さはやはり"エバーダーク"の仕業だったらしい。

安堵を付いた表情をしてメンバーは豪華な街へとまた近づいていく。



+ + +


「はあ?ちょっと待ってよ!」


その"エバーダーク"の中には3人の座る影があった。
チョコが叫び声を上げ続ける。


「ここってそんな危険な森なの?」


ボンビ弟はチョコとトーフに金がほしい理由と村の状況を話した後、この場所についても教えたらしい。
森の不気味さを知って冷や汗かくチョコの隣にはトーフが真剣に考え事をしている。
ボンビ弟は構わず話を進めた。


「ゴメンな。どうしてもおねえちゃんから逃げたくて勢いで森に突っ走っちゃったんだ」


おねえちゃん、と呼ばれて一瞬ドキっとするチョコ。
しかし、今はそれどころではない。自分たちは厄介な森の中に入ってしまったのだ。
脱出する方法を考えなければならない。


「…う〜ん…何か方法はないの?ボンビ弟」

「……ごめん。おれバカだからわかんねぇやぃ。でも聞いた話だと」


目線をチラっと不気味な森の奥を見て、そしてチョコに戻す。
そして苦い表情を作って


「この森の中に入ったら最期らしいんだ」

「……っ!!!」


ボンビ弟の発言にチョコは表情を一気に強張らせた。
もう冷や汗びっしょりだ。
目にも少し泪が浮かびあがっている。


「そんな…」

「……どうしよ…」

「……」


この場は沈黙になる。
3人が声を出さないため、森の中は不気味に、本当に不気味に静かだ。
凍りついたような世界。
何もないような世界。そこに閉じ込められた3人。

チョコは泣きそうになった。しかし堪えた。泣いてどうする、と自分を叱る。
ボンビ弟はずっと下を向いている。自分が犯した過ちにどう対処すればいいのか分からず黙って下を睨んでいる。
そしてトーフは


「……………まさか…」


突然その場に立ち上がると、二人の視線を浴びているのも気にしない。
ゆっくりとこう言い放っていた。


「…ここに…"ハナ"が…あるんか…?」









>>


<<





------------------------------------------------

inserted by FC2 system