「「おめでとー!ブチョウー!!」」


そして今は夜。
計画通りパーティが開かれていた。場所はフウの家である。
お盆に出来立てほやほやのカツ丼を載せてフウが全員にカツ丼を配る。


「おいしそー、さすがダフウのカツ丼〜!」

「本当よね。何せ私はダフウのカツ丼に惚れたんだもの」

「ええ?!そうだったの?!」

「ウソよウソ。私はダフウの全てに惚れたのよ」

「て、照れるなぁ…」

「ほら、ダフウ。早くカツ丼こっちにも配れよ」

「あ、は〜い」


無事にカツ丼が全員に渡り、ジュンが指揮をとる。


「ミミがブチョウという称号を与えられた、そのパーティを今から開こうと思います」

「ブッチョー!!」


落ち着きのないヒヨリは先ほどからブチョウと連呼している。
ミミの昇格が相当嬉しかったのだろう。
無邪気なヒヨリにジュンは微笑みながら進行を進める。


「まあ、まさかミミが王の護衛まで任せられるなんて驚きだな」

「そうだね」

「あ、そういえば…」


ここで今まで黙っていたユエが口を開いた。


「王は今日ここに来れないってさ。…ゴメンね」


ユエはここに来る前に、王のところに行ってパーティに招待したようだ。
王は行きたがっていたらしいが、大臣に止められ、無念なことに参加できなかったらしい。

苦い表情を作るその場であったが、ミミことブチョウが偉そうに、しかし綺麗な声で言った。


「まあ、いいじゃないの。あんなチビいても変わらないわよ。ってかダフウ、カツ丼おかわり」

「仕方ないことだよね。今、彼はみんなの王様だから…。って、食べるの早いよ!まだ乾杯もしていないのに」

「ダフウ〜!私もおかわりー!」

「私も欲しいわ。ダフウ」

「次はもっと大盛りにしろよ」

「みんな食べるの早いから!少しは我慢してよ!」


そう言いつつも両手にはカツ丼が持たれている。そして全員にまた配る。
しかし、それを瞬時で平らげてしまうブチョウ。


「だからもうちょっと我慢してよ!ってかいつ食べたの?!」

「全てはうんだば様の力よ」

「誰それ?!ってかそんな人の力を利用しないでよ!カツ丼食べるためだけにさ!!」


このメンバーの中ではフウだけがツッコミのようだ。
ジュンは臨時のときだけツッコミ側に回り、ハリセンツッコミを繰り広げている。
その他は全員ボケらしい。


「まあ、うんだば様をバカにする無礼者は放っておいて」

「待って!だから何でそんなにうんだば様を崇拝しているの?!」

「私を称えなさい」


途中割り込んできたフウのツッコミを無視してブチョウは胸を張った。
自分で自分のことを称えろと言うなんて、さすが彼女だ。


「ブチョーウ!ブッチョーウ!」


言うとおりにブチョウを称えているのはヒヨリ。何て素直な性格なんだ。
しかし、周りもすぐにヒヨリのようにブチョウを称え始めていた。


「ブチョウすごいわね。尊敬しちゃう」

「ミミ…じゃなかったな、ブチョウもついにそこまでランクがあがるなんて、世の中すごくなったものだ」

「これから、王様を守ってあげてね。ブチョウ」

「はい、カツ丼」


「みんなありがとう。ありがとう、みんな」


思っていた以上に褒め称えられたのでブチョウは無邪気に微笑んでしまっていた。
口元を吊り上げて、微笑みの表現をして


「そこまで言われると、勢いでへそから出そうだわ」

「何が?!」

「ヨダレが」

「ヨダレはそんなところから出ないよ!」


さすがブチョウだ。こんなときでも可笑しかった。


「そうだよ!ヨダレは耳から出るんだよ!」

「それは耳垂れだよ?!!」

「全く、ブチョウもヒヨリもバカだな。…確かヨダレって口から出るんだろ?」

「あ、さすがジュンさん。知っていたね」

「まあね。ヨダレは歯が抜ける勢いで出ると聞いているし」

「それは可笑しいよ!歯が抜ける勢いって相当だよ?!」

「ヨダレとダンゴムシって相性ばっちりって言うのは本当なの?」

「ウソだよ!ユエさん騙されているよ!ってか誰から聞いたの?」

「ヤシロからよ」

「ヤシローっ!!」

「ワタシ、何モ言ッテナイデェ〜ッスヨ〜」

「バレバレだよ!方言葉の時点で怪しすぎるよ!」


…全員が可笑しいみたいだ。一人ツッコミでフウも大変そうだ。


「もう…王様もこの場にいてほしかった…」


ポツリと泣き言を吐く。
この様子から、王もこのメンバーと仲がよかったと思われる。しかもツッコミ派らしい。


「もうあいつは私らに届かない存在なのよ。諦めなよ、ダフウ」

「……ツッコミ一人はキツイなぁ…」

「のっぺりは〜!せいぜい頑張りなさい。ダフウ」

「何その笑い声?!可笑しいよブチョウ!!」


そして、フウは頭を抱え込んだ。


「何でパーティで僕一人だけツライ目に遭っているんだろう…」

「あんたがもずくみたいな頭しているからじゃないの?」

「そんな変な頭してないよ!失礼だね!!…もう、ブチョウは声は綺麗なのに言っていることが変なんだから」

「そうだよねー」


フウの喚きにヒヨリが頷いてきた。
ブチョウに身を寄せながら


「ブチョウってさ〜綺麗な声してるよね〜!私うっとりしちゃうもん〜」

「本当ね。私ったら白鳥のくせして全く綺麗な声じゃないもん」

「ペンギンに声なんて必要ないわ☆愛だけで十分よ。ダフウへの愛だけで!」

「な、何言ってるんだいヤシロは…恥ずかしいじゃん…」

「…まあ、確かにブチョウは綺麗な声だよな。私も女のくせして声低いし…」


再び全員に褒め称えられて、ブチョウは調子に乗る。


「さすが私ね。みんなの憧れの的だわ」


自慢しているその台詞にあわない表情でブチョウは言う。
ブチョウは非常に嬉しそうだったのだ。

鳥族にとって"声"とは命の次に大切なものだ。
鳥の囀りは美しいメロディを奏で、その場を潤してくれる。

"声"の綺麗な鳥は、羨ましがられる存在なのだ。

ブチョウの"声"は、本当に美しい声をしている。
透き通るように滑らかなその声は、"幸せ"と"平和"を一緒に運んでくれる。


白ハトは、平和の象徴。


「本当、羨ましいな、ブチョウの声は。私の声と変えて欲しい気分だ」

「ジュンのその"ヒキガエルが潰れたような声"には私なりたくないわよ」

「失礼だな。てめえは!!」

「ぶ、ブチョウっ!ジュンさんの手にハリセンが…!」

「ああー!ブチョウが天に舞った!!」

「ジュンのハリセンが見事にブチョウの腹を捕らえたわ!!」

「すっごい腹が凹んでる!!」

「それにしても綺麗に天を舞ってるよブチョウが!!」

「ブチョウー!!!」


盛り上がるその場。
笑い声が絶えない夜は徐々に更けていく。




「…あら、もうこんな時間なのね」


太陽の微かな光に気づき、


「ヤシロ〜今何時〜?」

「おやじ でんぷん がびょう、よ」

「ええ?!」

「なるほど。4時21分26秒ね」

「分かったの?!あの意味不明な伝言で分かったの?!」

「もうそんな時間なの。時が経つのは早いのね」

「…くだらない話しかしてなかったな」


部屋に入ってくる光を見て、全員が目を細める。
楽しいことをしていると時間を忘れるというのは本当なんだなと実感する。

と、そこでヒヨリがまたブチョウにねだり始めた。


「ねえ、ブチョウ。お願いがあるんだけど…」

「ん?何よ?5文字以内のことであれば聞くわよ」

「ええ?!」

「あのね、えっと」

「5文字を無駄に使っちゃダメだよ?!」

「なるほどね。分かったわ」

「分かったの?!あの呻きだけで分かったの?」


気を取り戻して、ヒヨリは続けた。


「私、ブチョウの歌声聴きたい!!」


目を丸くするブチョウに、全員は構わず同意した。


「いいねー。ブチョウの歌声はいいよねー!」

「綺麗だもん〜あれは癒されるよね」

「しかもブチョウは歌上手いしな。私も聴きたいな」

「ヒキガエルの潰れた声は引っ込んでなさいよ」

「また打たれたいか?てめえはよ」

「わー!ブチョウがまた天に舞った〜!!」

「ありえないほど回転してる?!しかも前転だ?!」


気を取り戻して


「歌声ね…。まぁ別に歌ってあげてもいいけど」


意見を取り上げられ喜ぶ一同。
ブチョウは頭を掻いて、面倒くさそうに進める。


「何を歌えばいい?」

「そうだね〜…やっぱあれじゃない?」

「あぁ、あれね。あれは曲も歌詞もいいもんね」


そして一斉に同音を言った。


「「"絆"」」


「…」


ブチョウもやはりか、と言ったような表情をとって、頷く。


「しょうがないわね。"絆"ね、"絆"」

「「ミュージックスタート〜!!」」





+ + +


今までずっとずっと 一緒にいたから

僕らは 知らぬ間に 繋がれていた


見えない鎖に繋がれ 一緒に歩んで

僕らは 知らぬ間に 絆を築いた



切りたくても切りたくても切れない間 それが絆
喜びも辛さも乗り越え 強くなる鎖

ほら、見てごらんよ。僕らの心を
ほら、繋がっているよ。見えない鎖が



離れ離れになったとしても

僕らにはある 嬉しい絆が


もしあなたが消えてしまっても

残っているから 絆の鎖が


だから大丈夫。安心してください
僕はあなたを忘れないし、忘れられない。

今までずっとずっと一緒にいたから 強くなった その絆


今までずっとずっと一緒にいたから 笑いあえる 僕たちは

・・・・・・・






綺麗な白ハトの声は、朝日と共に訪れる。
歌声は澄んだ空気を震わせて村中に響く。



「…………ブチョウさん…」


村の一番上にある"宮殿"の庭園に、王冠を被った背の低い王様が目を細めて
朝を、歌声を、堪能していた。









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ブチョウの新事実がまた発覚!
実はブチョウは歌が上手かった!

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