太陽の光によって光り輝く。そんな色が好きなのだ。


16.シルバーの村


かんかん照りの太陽の下、メンバーは車の中でぐったりとなっていた。
太陽の熱が車を覆っているシーツを越えて中のメンバーらを苦しめる。


「……何やねん、この暑さ…」

「ホント…暑い〜…」

「水とかねえんか?水はよぉ…」

「ないよ。この前チョコが水浴びしてなくなっちゃったんだ…」

「おいおい何無駄遣いしてるんだよ」

「だって〜…」

「チョコ、そういうときは自分のヨダレを使いなさい」

「無理だよ!そんなにヨダレ出ないってば〜」

「そっちの問題か?!」


喚くメンバーの乗っている車を引いてエリザベスと田吾作は次の村へと歩いていく。
しかし彼らも暑いために相当疲労しているようだ。いつもの倍に歩みが遅くなっている。
のんびりとのんびりと車は動く。


「次はどんな村だろうね…」

「食い物がぎょうさんある村がええなぁ」

「そうよね!この前の村も結局食料買わなかったから次こそは万引きしなくっちゃね!」

「…僕らもよくこんな状態で旅が続けられたものだ…」


しみじみと思いながら、クモマは話を戻す。


「次の村はどんなところか楽しみだ…」

「風潮がまともなところがいいな」

「大丈夫だって!変な風潮のところは全て私が解決してあげるから!」

「それが嫌なんだよ!」

「ええ〜?」


ソングに否定されチョコは頬を膨らませた。
そしてソングに反論しようとした、そのときであった。

車が大きく揺れたのだ。

続いてエリザベスか田吾作どちらかの悲鳴も聞こえてきた。
チョコが叫ぶ。


「どうしたの?!」


答えるように豚の鳴き声が聞こえてくる。
その後を追って激しい轟音が。


「な、何だい?これは?」


更に揺れる車に何とかしがみ付きながらクモマが問う。
チョコが悲鳴に近い声で答えた。


「敵襲よ!!」


思いもよらなかった言葉に全員が変な声を出した。


「まてよ!何で敵襲なんかが?」

「おいおいおい〜!誰だよ一体!」

「あかんわ。何か大砲でも撃っとるんやろか。さっきから激しいわ」

「どうにかしなさいよ」

「くそ!戦うか?」

「う○こは戦わないわよ」

「何言ってんだてめえは!」

「待てよ。俺は戦いたくねえぜ?」

「私も戦う術がないから無理無理〜」

「クモマ、あんた戦ってきいや」

「嫌だよ。僕だって無闇に戦いたくないよ」

「私は戦うのなんて面倒くさいからもちろん戦わないわよ」

「ワイも大砲相手に糸で掛かるんは死にに行くのと同じやねん…」


そしてメンバーの視線は自然にソングに集まった。
ソングは眉を寄せた。


「はあ?ちょっと待てよ。俺だけが戦う気満々か?」

「俺らってほら、優しいから戦いはしたくないんだぜ」

「んだよ。……ったく」


メンバーの熱い眼差しにソングは耐えられなくなった。
舌打ちを鳴らし、腰に手を当て武器があるのを確かめると、車の出入り口へと中腰になりながら近寄る。


「大砲当たらんよう気ぃつけや」


トーフの声援は逆に恐怖を持たせてくれた。
大砲が飛び交っているこの外へ出るのか…。

やがてソングは外へ出た。
そして


「「…………」」


無言になるその場。
伴って無音になる現場。

突如シンと静まった外の世界に全員は疑問を抱いた。

先ほどまであんなに鳴っていた大砲の音もなくなり、本当に静かになったのだ。
原因が知りたくて、いてもたってもいられなくなったメンバーは車から出る。
すると現場を見た者から動きが止められてしまった。

驚きのあまり絶句しているのだ。
おかげで暑さも一気に引いた。
何故そうなったのか。それは


「あなたは、神です!我々にとっては神、間違いないです」

「その美しい銀はまさしく神です!」

「神様ー神様ー」


なんとソングが大勢の人に崇められていたからだ。
ソングは何が起こったのかわからずただ呆然としている様子だ。


「な、何なんだ?」


太陽光を放っている太陽の下。
銀色の髪が輝いてその場を明るくしていた。


+ + +



車の中にいて気づかなかったのだが、実は村のすぐ近くを歩いていたらしい。
村人に歓迎されながらメンバーの車は村に運ばれる。
そしてソングは大勢の人に持ち上げられ村へと運ばれる。
メンバーはその光景を眉を寄せながら眺める。


ようやく村の中に入って、人々が静まったところで、早速トーフが訊ねた。


「一体どないしたんや?最初はワイらのこと撃ってたやないか」


しかし村人は全てソングを見て崇めている。
無視か…とションボリするトーフが可哀想に思ったのかソングが訊ねてくれた。


「おい、一体何の騒ぎなんだ」


それにすぐに村人が反応した。


「あなたは我々にとって見れば神なんです」


やはり言っている意味が分からない。
更に問う。


「どうしてそう言いきれる?」

「理由は簡単です」


村人は即答。


「我々は"銀"を神として扱っているからです」

「「…銀?」」


メンバーはソングに目を向ける。
そして少し目を細めた。

ソングの髪色は立派な"銀"だ。
その銀色は太陽の光を反射させ、ソングの存在を強くさせている。

村人は続けた。


「"銀"は太陽の子。太陽の光をうまく使って光り輝いている。我々はそんな"銀"が好きなんです」

「だから我々は"銀"を大切にしてきました。"銀"を使っているものは全て慎重に扱っています」


例えば、このアクセサリー、と言ってメンバーの前に銀を使ったアクセサリーを見せてくれた。
その銀は太陽によって美しく光り輝いている。
思わず感嘆の声をあげるのはチョコ。


「綺麗だね…」

「そうでしょう?やはり"銀"は美しい」


村人も美しい銀の輝きに目を奪われている。
ソングは何とも複雑な表情になっている。


「それで」


ソングが訊いた。


「お前らは俺の髪色に惚れたってことか?」

「はい、まさしくそうです」


ソングの質問には村人は必ず即答。
再びソングの銀の髪を見てうっとりとしながら。


「綺麗な銀の髪です…あなたはまさに我々の神に相応しい人物です」

「ちょ、ちょっと待ってよ」


村人全員がうっとりとため息を吐いているとき、クモマが割り込んだ。


「"銀"が好き、というのは構わないけどさ、会って早々いきなりこんな扱いされたらソングも困っちゃうよ」

「うわ!黒髪!不吉な色ですね!」

「黒は光を吸収して光の美しさを掻き消すのですよ!」

「黒は向こう行け!」


冷たく反論され、クモマは俯いてしまった。チョコが彼の肩を叩いて慰める。
話がずっと"銀"についてだったので、ブチョウが珍しく話を変えた。


「凡の髪色のことはいいとして、何で最初に私たちを撃ったのかしら?そんなに臭かった?」

「いや、臭くはなったのですが、我々はあまり村に人を近づかせないようにしているのです」

「何で?」


首を傾げてチョコが訊き、ソングの銀色を見ながら村人は答える。


「余所者に"銀"を汚されたくなかったからです」

「そ、そこまでして…?」

「そんなに銀って綺麗かしら?むしろこの色のほうが綺麗じゃないの」


そしてブチョウは懐から変な置物を取り出した。
色は、どどめ色であった。


「「きったねー!!!」」


思わずその場全員で叫んでしまった。


「ってか、何だい?その置物は」

「勝手についてきたのよ」

「うわ!それ、こわ!」


話を戻して。


「ま、ワイらが入場許可されたんはソングの銀の髪色のおかげちゅうことやな?」


トーフは確認を取り、村人は頷いて応答する。


「そうです。我々は村の"銀"を守るために今までこうやって外部からの侵入を防いでいました。しかしこの方には驚きました。まさか銀の髪色だなんて…」


世の中には様々な髪色をした者がいる。
クモマみたいに真っ黒な髪色だったり、サコツやチョコみたいに鮮やかな髪色だったり。
色によって部族が違うらしいが、それは昔の話らしく今ではあまり髪色は関係ないらしい。

村人は銀髪をマジマジと眺めながら目を輝かせている。


「それにしても美しい髪色です。あなたみたいな方を見たのは生まれて初めてです」

「我々はあなたの髪色を長く拝めていたい。ですので今日はこの村に泊まってみてはいかがでしょうか?」

「全力を尽くして神を称えます」

「神様ー神様ー」


突然拝み始めた村人にソングは焦燥した。


「おいおい、勝手に話を進めるな。俺はお前らなんかに拝まれる筋合いはねえ」

「「よろしくお願いします!」」

「おい?!」


ソングの反論を無視してメンバーはこの村への停留を喜んでいた。
辺りを見渡すと手を組んだ村人の姿。
ソングは大きくため息をついて、黙って拝まれていた。



+ + +


「"銀"が神だなんて、面白いこと考えるものだねー」


ソングが拝まれ始めてから暫く経ったころ。
メンバーはこの村の街を歩いていた。
見渡す限り広がる色は全て"銀"。
この様子から本当に"銀"が好きというのがわかる。


「まぁ、確かに銀は綺麗やと思うけどな〜」

「あれは大げさすぎだぜ〜。銀なんて眩しいだけの色じゃねーかよー」

「でもそれが好きなんだろう?銀の輝きは太陽の光を反射したもの。つまりは太陽を受け継いでいる太陽の子。そういうことで"銀"は縁起のいいものとしてこの村では奉られていた。ってことかぁ…」


クモマの解説にメンバーは納得し、頷く。


「変なの〜。何で色にそこまでこだわっちゃうんだろうね〜?」

「まだこの置物の色のほうがいいわよ」

「それはあかんやろ。そん置物はモザイクをかけんと子どもは見れんで」


大げさにものをいうトーフにメンバーは笑いながら、とある店へと入っていった。
そこは主に食品を扱っている店。

メンバーは食べ物をまず手に入れようと考えたようだ。


「皆、今回は安心して盗れるで」


トーフは含み笑いを作って、メンバーに告げた。


「今村人はソングのとこに行っててここにはほぼいない状態や」


言われて気づいた。
確かにここまで来るとき村人はいなかった。
そしてこの店にも人はいないと言っても過言ではない。

自然に不適な笑みを溢す。
辺りを見渡してトーフは言い切った。


「思い切り万引きできるわ。足らんかったモノ全てこん村でゲットするで!」


それが合図に、メンバーは一斉に動き出していた。









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