村の中を学生服のメンバーが歩いていく。
見渡す限り広がるのは、高い建物や工場。
ここは働く人間が住んでいる村。そのため村人皆仕事をしている。
そしてメンバーは『学校見学をしにきた学生』としてこの村に侵入。


「すっご〜い!何か仕事大好きお父さんって感じのとこだね〜!」

「皆スーツとネクタイ…すごいなぁ…見るからに仕事が盛んな村だね」

「その中で学生服を着ている俺たちって浮いてるな」


いつものことなのだが、メンバーは村の街を歩くとき、周りをキョロキョロを見渡してしまう。
傍から見ても余所者だと分かる行動だ。
しかもソングの言うとおり学生服のメンバーは妙に浮いている。

村の地図を持っているのはトーフ。
彼は地図をきちんと読めるらしく、正確にルートを辿っていく。
トーフが持つ前はサコツが持っていたのだが、彼は極度の方向音痴。すぐに道に迷ってしまい、トーフが皆を誘導することになったのだ。
地図と道を睨めっこしているトーフにクモマが訊ねた。


「あとどのぐらいで着きそうなんだい?」


睨めっこに夢中になりながらトーフが軽く返す。


「もうちょいや。こんまままっすぐ行けば学校へつくで」

「まっすぐまっすぐ」

「おいおい!言ってるそばから回れ右してるぞ!」


思い切り道を間違えているサコツにソングが慌ててツッコミを入れる。

メンバーらは少しの間学校を見学をしようと学校へ向かっているのだ。
幼いころから学校に行かずに仕事をしていたクモマとソング。
スピークの村で孤児だったチョコは学校なんてものは行きたくても行けなかった。
サコツはこの様子から学校なんていうものを知らないだろう。
ブチョウも別な村の出身なのだが、自分のことをあまり話さないのでそこのところはよくわからない。
けれども全員が学校に行っていないようだった。


「ごめんね、トーフちゃん。私のワガママ聞いてくれて」

「ええでええで。検問所の役員の人もこん学校を熱く勧めていたとこからしてきっとええ学校なんやろな。ワイもちょっと興味あんねん」

「だよねー。学校ってどんなところなんだろう?」

「きっとアレよ。恥ずかしいものがビッシリなのよ」

「また恥ずかしいものか?!お前本当に好きだな!」

「まず今から行く学校はどんな専門の学校なんだろう?」

「気になるよね〜!楽しみだな〜!」


ワイワイ盛り上がるメンバーに、トーフが叫んだ。


「見えたで!学校や!」


トーフの指差した先には、大きな建物があった。
コンクリートで出来ているこの建物は、見るからに学校って感じ。


「すっごーい!」

「へえここが学校」

「勉強とかするんだろ?すげーぜ!皆天才なんだな!」

「お前から見たら全員が天才だろうな」

「見るからに恥ずかしいところね」

「どこらへんが恥ずかしいんだ?!」

「ほな」


学校という建物を見て感動しているメンバーにトーフが促した。


「中に入ってみようで」


しかし、問題があった。


「ねえ、門が閉まっているよ?」


時間帯的にもう授業の始まっている時間。
外部からの侵入を防ぐために学校の門は閉ざされていた。
顎に手を当てて唸り出すのはクモマ。


「どうしようか…門が閉まっていたら中に入れないじゃないか」

「困ったぜ!非常に困ったぜ!」

「あきらめるか」

「ええ…」

「たぬ〜。あんたこの門を抉じ開けなさい」

「「おいおい!」」

「わかった」

「「コラ?!」」

「ちょっと待ちぃ!」


門にしがみついているクモマをトーフが止めた。
ワイにええ考えがあるで。と話を持ち出す。


「マジでかよ?!一体どんな方法だ?」

「まあ、簡単なんやけどな」


そしてトーフは


「こうやって」


門によじ登って


「涼しい表情で、入るんや」


見事門を乗り越えた。
ずばり、これは…


「「不法侵入かよ?!!」」

「さあ皆はよやるんや」

「してたまるか!」


大きく否定するソングであるが、他のメンバーは


「これなら簡単に入れるね」

「躊躇なくやってる?!!」


不法侵入していた。


「足が門に届かない……っ!!!」

「やめろ。悲しいことを言うのはやめてくれ」

「クモマ、ファイトや」

「あの猫が登れて、何でこいつは登れないんだ…」


足が短い所為で門に登れないクモマを見てソングが疑問を抱いたが、無事に彼は登ることが出来たようだ。
残るはソングだが…。


「ほれ、あんたもはよこんか」

「クソ!不法侵入なんかしてたまるか」

「う○このことはいいとして。凡、ここまで来たらあんたの好きなキュウリあげるわよ」

「キュ、キュウリ……っ!!」

「「動揺してる?!!う○こについてのツッコミをせずにキュウリに動揺している!!」」


思わず全員で声を合わせて突っ込んだ。
その間にソングはブチョウの言葉に引き寄せられ門を乗り越えると、メンバーらの元へやってきた。


「「うわ!キュウリのために不法侵入してる!」」

「よしよし、よく来たわね。凡」


そしてブチョウは身を纏っていた白マントの中から緑色の細長い物体を取り出した。
ソングに渡す。


「キュウリよ」


受け取って


「ヘチマじゃねえか!!!」


ソングは悔しそうにツッコミを入れた。
本当に期待していたようだ。


「それ食べたら大きくなるわよ」

「ならねえよ!お前はなったみたいだが普通はならん!!」

「ヘチマとペリカンってどう違うんだ?」

「きっと匂いが違うと思うよ」

「全てが違ぇよ!ペリカンは鳥だ!!」


調子に乗るメンバーにソングはツッコミの連続だ。
そしてこのざわめきは学校に影響をかけてしまったようだ。


「ヘチマって美味いって話を聞いたで。ホンマなんか?」

「嘘だ。ヘチマはスポンジの原料だ!」

「あぁ〜ヘチマで体とか洗うもんね〜」

「いや!ヘチマで体は洗わねえよ!」

「…………ゴホン…」


咳払いが会話を妨げた。
咳払いは更に続く。


「…ゴホン」


メンバーは口を閉ざす。
突然現れた老人の姿をじっと見ていた。
メガネを掛けていて頭が眩しいそんな老人を。


「…あの…」


やがてクモマがその老人に問いかけた。


「何の用ですか?」

「お前らのほうが何の用じゃ!!」


逆に怒鳴られた。
老人はそのまま続けた。


「我が学校に何の用じゃ?!どうやってここに入ってきたんじゃ?!」

「カルピスね」

「ミラクルの間違いじゃろ!」

「分かったんだ?!」


ブチョウの間違いを言い直した老人に驚くメンバー。しかし次の瞬間、メンバーは命令を下されていた。


「不法侵入者じゃな。ちょっとこっちに来なさい」

「「……………」」


そしてメンバーは、無言で逃げ出していた。
老人も無言でメンバーを追いかける。

かんかん照りの太陽は、老人に味方したようだ。
老人の頭に光を与えると、反射を繰り出しメンバーらの目を奪う。
よって目を眩んでいるメンバーを老人は無事捕まえることに成功した。


そしてメンバーは連行されてしまった。




+ + +


「何故不法侵入しようとしたんじゃ?」


学校の「校長室」という部屋にメンバーは連れられていた。
老人は上品なイスに優雅に座っている。


「学校に興味があったんです」

「ホンマやで!別に食い物が食いたかったわけじゃあらへんのやで!」

「私のわがままだったの…ごめんなさい」

「俺は興味はなかったんだが…」

「すげーぜこの部屋!変な写真がたくさん並んでいるぜ」

「頭触っていいかしら?」


「……そうか。学校見学に…」


自慢の頭をブチョウに触られながら、老人は目を細めた。


「学校見学ならいつでも受け付けておるのにのぉ」

「え?」


歓迎を受けてメンバーは目を丸くした。
頭をキュッキュっと鳴らしながら老人は微笑む。


「わしはこの学校の校長なんじゃ」

「ふーん」


メンバーらは学校のことをあまり知らない。ひどく簡単にあしらった。
老人は少し悲しそうだったが続けた。


「じゃからわしの手に掛かればあんたらの学校見学に協力してあげれるぞ」


ここでようやく、老人が学校の偉い人物ということが分かった。
オドオドしながらクモマが訊ねる。


「と、いうことは僕らは学校見学できるんですか?」

「まあ、わしの手にかかればな」

「すげーぜ!あんた頭光ってる分だけすげーぜ!」


ワーワーはしゃぐメンバーを微笑みながら、頭をキュッキュされている校長は、校長室の前を過ぎる影を見つけ、それを呼んだ。


「ちょっと、オオヤマくん」

「はい?」


呼ばれて、校長室から顔をのぞかせるオオヤマという教師。
手招きされて中まで入ってくる。

オオヤマ先生は手にそろばんを持っていた。
この様子から数学の先生だろうか。


「キミの授業の時、この子たちを見学させてくれじゃ」

「嫌です」


きっぱりと否定されてしまってショックを受ける校長。
オオヤマ先生は理由を話した。


「僕の計算によりますとその生徒たちは問題児にも程があります」


そろばんを弾きながらそういった。
計算したんだ…?


「そんなケチじゃな〜。ええじゃないか〜校長命令だぞ〜」

「校長の命令より僕の計算のほうが正しいですので僕は反対します」


この様子から校長は部下になめられているようだ。
校長は泣きつく。


「お願いじゃ〜!わしの命令聞いてくれ〜。この子達、不法侵入してくるほどこの学校の見学をしたいそうなんじゃよ〜」

「不法侵入したんですか?!どうやって?是非僕にその術を教えてください」

「なんか興味を持ち始めたぞ?!この教師!」


思わず大人の会話にツッコミを入れるソング。
そしてオオヤマ先生は泣きつく校長に呆れ顔を作って、頷いた。


「わかりましたよ。そんなに泣きつかれますとアレがうつりますので言うとおりにしますよ」

「何がうつるんじゃ?ねえ?」


校長を無視して、オオヤマ先生はメンバーの前に立って、挨拶をしてきた。


「ミャンマー。僕は数学教師のオオヤマです。校長の命令により仕方なくあなたたちを見学させてあげます」


そしてまたそろばんを弾く。
メンバーも慌てて挨拶をした。


「「ミャンマー」」

「計算どおり、あなたたちは元気がいいみたいですね。それでは参りましょうか。僕の授業の見学、してみてください」


そろばんを弾きながら、オオヤマ先生はメンバーを連れて校長室を後にした。
メンバーは初の授業参観だと喜びながら早歩きのオオヤマ先生についていくため廊下を走っていく。


「僕の計算によれば、廊下を走るととんでもない目に遭いますよ」


そしてすぐにメンバーは階段から滑り落ちてしまっていた。


そ、そろばんの計算…恐るべし……っ


メンバーはそろばんに恐怖を持つのであった。







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久々に出てきた「ミャンマー」
皆さんきちんと覚えているでしょうか?「ミャンマー」はこの世界での挨拶の言葉です。
たしかテンセイの村で説明をしていると思いますよ☆

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