「……やったで…メシや、メシ…」


ここは、レストラン。
メンバーらは早々とレストラン内に入ると、客の目も気にせずに豪快にテーブルの椅子に座りこんだ。
おかげで上品なレストラン内のイメージががた落ちだ。

では、メンバーらの容姿を御覧なさい。
見るからにまとまりのない団体です。
髪色も個性的だし、服装もドレスとか着物とか本当にまとまりがないですね。
一人アフロボンバーな方もおりますし。
一人、餓死寸前だし。

そう。メンバーらは餓死寸前のトーフを助けるために今レストランに来ている。
大胆に手を振って、サコツが叫びだした。


「おーい!マスタぁーん!オーダー決まったぜ〜ん!」

「おい、もう少し行儀良くしろよお前」

「んだよん、お前だって言葉づかいもう少し気使えだわさ?」

「お前に言われたくねぇよ。チョンマゲ」

「な〜っはっはっは!今日はチョンマゲじゃなくて縦ロールだぜ〜ん!」

「もう少し静かにしてよ二人とも…」


言い争うサコツとソングにクモマが声を押させて注意する。
その間に店のマスターが注文を取りにきた。


「いらっしゃいませ。お待たせしました」


ここは女性の村。
やはりマスターもみんな女である。


「私はフルーツの盛り合わせをお願い〜」

「俺はサラダでいい」

「…俺…?」


ソングの言葉づかいにマスターは眉を寄せ、聞き返す。
自分の過ちに気づいたソングは慌てて口を噤むと、声を濁らせて言い直した。


「…わ、…私は……サラダで…」

「畏まりました」


マスターはニコリと微笑んで応答した。
ソングの場合は外見だけ見れば普通に女に見えるため、何とか無事に誤魔化すことが出来た。

続いてトーフが苦し紛れに注文した。


「……ワイは…魚のステーキ…を頼むわ…」

「僕…じゃなくて、あたしは骨付き肉で」

「ステーキ!超レアで!ってか生肉!」

「私はアフロボンバー!!」

「畏まりました。ごゆっくりしていってください」


注文をとり終わると、マスターは丁寧に頭を下げ、厨房へ向かっていった。
果たしてまとまりのなく態度の可笑しいメンバーに不審を感じていないのだろうか。

マスターがいなくなるのを確認すると真っ先にチョコが口を開いた。


「もう!皆!ちょっとは自覚してよね!!」


叫び口調であったが、声は抑えられている。
それがきっかけで小声の討論会が開かれてしまった。
口を尖らせてクモマが反論する。


「僕はちゃんとしていたよ」

「…ワイも…やで」

「…第一、男が女のフリをすること自体が無理だ」

「何言ってるのよゴンザレス」

「お前が何言ってるんだ?!」

「私は事実を述べたまでよ」

「どんな事実を物語ってんだてめーはよ!」

「おいおいん。ソングちゃん、口悪いぞ〜ん」

「お前もお前でプライドってもん持ったらどうなんだ!」

「何だよ、俺のプライドはな!」


一旦、間を置いてサコツは言い切った。


「バカなとこだ」

「そんなプライド捨ててしまえ!!」

「もう、ソング。落ち着いてよ…」

「何お前は落ち着いてるんだ!お前だって最初のうちは嫌がってたじゃねーか!」

「だって、女のフリをしないと村の人たちに可笑しく見られるだろう?」


クモマにそう言われて気づいた。
首を回して辺りを見渡してみる。
するといろんな人と目が合った。

客は全て、こちらを見ていたのだ。

メンバーらは見事に注目の的になっていた。


「「…………」」

「ね?だからさ〜ここは男は捨てて女になったほうが身のためだと思うよ?」


小声で説得するクモマ。
それが効いたのか舌打ちを鳴らしてソングは無言になった。
サコツも行儀良く座りなおしているようだ。

メンバーらが静かになると、やがて店の客も目線を戻して食事に集中してくれた。


「…女もいろいろ大変なんだな」


サコツがボソっと呟く。


「まぁね〜。やっぱり行儀良くしなくちゃいけないからね〜」


股とか開くと見えちゃうし〜!とチョコは笑って物をいう。
そんな彼女に、お前のそのほぼ下着状態の服装がまず問題だろ。とツッコミを入れたかったが、言わないでおいた。

続いてソングが苦い表情を作って訊ねた。


「おい、いつまでこんなとこにいる気なんだ?」


そんな話題にいつも応答するのはトーフ。
しかし、今回だけは返事が帰ってこなかった。

トーフは餓死寸前なのだ。

そのことに気づいたチョコはすぐさま叫び声を上げた。


「マスター!早く料理持ってきてー!!!」

「死亡者が出る!早くしないと死亡者が〜!!!」


連なってクモマも大袈裟に事を言った。


+ + +


そのおかげで早々と料理が来てくれた。
凄い勢いで食事を済ませるメンバー。相当お腹が空いていたのだろう。
それはそうだ。
メンバーらの乗っている車には今現在食べ物がないのだ。
全てはトーフが食い尽くしてしまい、無残な結果が残ってしまった。

これでわかったこと、それは
"非常食は必需品だ"。

今度食べ物を買う(盗む)ときは、トーフに気づかれないようにこっそりと懐に入れておこう。
そう誓ったメンバーであった。


「…はあ…今まで生きてきて、ホンマえかったわぁ…」


食べ物を食べて腹が満たされたトーフは、満足そうな笑みを溢し、腹を叩いた。
ポンと軽く音が鳴る。


「よかったぁ。トーフが生き返ってくれて…」


そんなトーフを見てクモマが溜息をつく。
あのまま死んでしまうのではないかと本気で心配したらしい。


「ワイも死ぬかと思うたわ〜」


それだったら車の中の食べ物全て食い尽くすなよ。あとのことを考えろよ。


「死因が餓死ってマヌケだな…」

「でも世の中食べることの出来ない人だっているんだよ」

「こいつのは自業自得だろ?!」

「ま、それはいいとして、いつまでこの村にいるのかしら?」


突然話題を変えるブチョウに、トーフが応えた。


「知らん」

「何だ。こいつ、無責任だな」

「知らないって…"ハナ"を消したらすぐに帰れるんだろう?」


無責任なトーフに、表情を顰めるメンバー。
対しトーフは満腹のため、笑顔で無責任な発言を続ける。


「悪いな。実はその"ハナ"がどこにあるのか分からんのや」

「「おいおい」」

「それってつまりこの村は結構"ハナ"にやられてしまっているってこと?」

「それもわからへん」


やはりトーフは笑顔。
皿に微かに残っている食べかすを指で掬って舐める。
満足そうに笑みを浮かべてトーフは続けた。


「ま〜時間はたっぷりあるんや。買物をしつつ"ハナ"も探そうで」

「…俺は早くこの村から出たいんだが」

「僕も…」


反論をするソングとクモマは表情が顰めっぱなしだ。
だけれどトーフは笑顔。


「それやったらさっさと探せばええんや。せやけど」


そしてトーフは素敵な笑顔でこう告げた。


「ワイ、腹いっぱいで動けへん」

「「……っ!!」」

「すまんけど、個人で探してくれや」


なんて無責任なっ!!!

そんなトーフに真っ先に腹を立てたのはやはりソングであった。
突然その場に立ち上がると大きい目で睨みつけて、言い放った。


「俺は早くこの村から出る。だから一人でも"ハナ"を探しに行くからな!」


突然立ち上がった所為で椅子が音を立てて倒れる。
その音に他の客も反応したが、場の雰囲気が悪かったため客も目線を戻した。

場を離れようとするソングに誰かが叫んだ。


「待ちなさい!ゴンザレス!」

「誰がゴンザレスだ?!」


ブチョウだ。
ブチョウも椅子を倒して、ソングに言う。


「私も一緒に探しに行くわ」

「えっ?」

「今のあんたはゴンザレスだからきっと役に立たないわ」

「何だその理由?!」


やはりブチョウはブチョウだった。
しかも服装も可笑しいため、可笑しさも倍増している。


「あ。私も一緒に探しに行っちゃダメかな〜?」

「俺も行くぜー?」


驚いたことにチョコもサコツも身を乗り出してきた。
さすがにソングも目を見開く。


「マジでかよ?」


まさかほぼ全員が自分の後をついてくるとは思ってもいなかったのだ。


「ま、"ハナ"探しが私たちの目的だしね」

「あんたはゴンザレスだし役に立たないのよね〜。仕方なく一緒に行ってあげるわ」

「皆が行くから俺も行くぜ」

「いや、キモイのはついてこなくていい」

「失礼だな?!俺のどこがキモイんだ?」

「全てだ」


ごもっともだ。
サコツの容姿はこの中で一番醜い。

盛り上がるソングらに、クモマも乗り出してきた。


「ねえ、僕も一緒に行っていいかな?」


皆、普段の喋り口調になっているのだが、客はこちらを見ていないため、気にしなくてもいいだろう。


「いや、クモマはここにおってくれや」


身を乗り出していたクモマにトーフが口を挟んできた。
驚いてトーフを見る。


「え?何で?」

「言ったやないか。ワイは動けへんって」


膨らんでいるトーフの腹を見て、頷く。
そんなクモマを見て、トーフは眼差しを送った。


「心寂しいんや」

「……」

「ここにおってくれや。一人じゃ寂しいんねん」


言われて、確かに。と思った。
いきなり一人にされたら、それは寂しいだろう。
トーフに同情し、クモマは口元を歪めた。


「うん。そうだね。僕はここにいるよ」

「ホンマおおきに」

「ほんじゃ、決まったな」

「私らは"ハナ"を探しに。そしてトーフちゃんとクモマはここに残る、ということだね?」

「そういうことだね」


確認をとって、メンバーらは行動を別にすることにした。


「さあ、行くわよゴンザレス」

「誰がゴンザレスだ!」

「どこらへんに"ハナ"があるかな〜?」

「おっと、しまったぜ。女のフリしなくちゃいけねかったんだぜん」


ブチョウ、ソング、チョコ、サコツはその場から離れていく。
サコツはぎこちなく内股で。ソングは普通に歩いていく。
そんな彼らをクモマは温かく手を振って見送った。
…それにしても、アフロ頭にキラキラスーツを着ているブチョウには思わず目が行ってしまうなぁ…

やがて、彼らの姿はレストランから消えた。


「…行っちゃったね」

「あぁ。すまんな。クモマ。ワイのワガママを聞いてくれて」

「ううん。いいよ。それにしてもかなりお腹膨れたね〜」

「そうやな〜。ほなもう一丁メシ頼むかい、何食うか決めてくれや」

「まだ食べる気なの?!」


クモマとトーフは、レストランに残り、まだご飯を食べることにした。
…トーフってよくわからない、と思ったクモマであった。






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チョコの魔法によってオカマになってしまった哀れなメンバーの絵です。

オカマ1(クモマ、ソング)
オカマ2(サコツ、トーフ、ブチョウ、チョコ)



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