遊具が並んでいる公共の地のベンチで
トーフは寝そべっていた。

昼間はずっと酒場のマスターと追いかけっこ。

ま、ワイが食い逃げしたのが悪いんやけど
金を持ってなかったんで…
仕方ない行為やったんや。


と、自分を正当化させる。

仰向けで寝ているため、
目の前には星空。

チラチラと瞬く星の輝きは
まるで魚のウロコを思い出させる。



ワイは生で魚を食べるのは嫌いやねん。
だけど、焼けばダイジョウブイ!


あぁ…腹が空いてきたわ…
焼き魚…美味そうや…食べたいわー


考えるだけで唾が出る。


考えて見れば、昼間は走ってばっかりで夜飯を食べなかった…。
…あぁー腹が空いた。


静かなこの場所で、グウと腹の虫がなる。



そういえば
昼に会ったクモマという少年。
腹大丈夫やろか?
魔物に腹を貫通させられたっちゅうのに、無事だったなんて不思議やねん。
やはり"ラフメーカー"だからそういう能力を持っとるんやろう?
でも自分だったら腹貫通されたら気絶するわ。

やっぱりハンパなく頑丈な体をしているんやな。


そして、眉を寄せて、また考える。


……
クモマは…
こんなワイと一緒に旅に出てくれるやろか?

ちょっと失礼なことしてしもうた気がするんやけど…


まさか、あの時、魔物をかばるとは、予想外だった。


優しいんやな…。
ワイとは大違い。

魔物やったら遠慮なく、糸で縛ることができる。
特に、人を傷つけた魔物だったら、殺しだって可能。


ワイには、魔物をかばうことなんて考えられへん。



星を見る。
もう、魚のウロコにしか見えない。
美味そうな魚…。




さて、
今日はこの辺で寝て、
明日は残りのラフメーカーを探そう。

そう。
きっとラフメーカーはこん村に集中していると思う。
クモマ一人でハナを一つも咲かせない力を持っているとは考えられへん。
ハナはラフメーカー6人の力があってこそ、消すことが出来るんや。

咲かせないようにするにもやはりそれなりの力がいるはず…。


ラフメーカー5人がこん村に集中的におったら、
きっとハナも咲かないような気がする。



まだラフメーカーはこん村の中に、おる。




明日もあちこち歩いて、捜そう。





目を瞑る。
深呼吸する。
心を新鮮にする。


明日も忙しそうだ。







――― ‥…



「そこにおるのは誰や?」


静かなこの場所で、トーフが突然口を開いた。
それに反応はないが、トーフは目を瞑ったまま続る。


「魔物か?」

「…」


魔物と予想されるモノは、目を瞑って無防備のトーフの隣に、立っている。
だけど、トーフの問いに反応しない。
反応はないけれども、トーフの隣からは殺気をヒシヒシと感じる。
これは昼間に会った、魔物と同類の気。

感じる。
こいつは、魔物だ。


「往生際の悪い奴や」


そして、キっと目を開いて、トーフは起き上がった。
裾に逆側の手を突っ込んで、糸を取り出す準備をしながら。


しかし、それに反応したのは
魔物ではなかった。


「に、人間?!」


何と、トーフの目の前には、人間が立っていた。
しかしその人間は、逃げる体勢に入っており、後ろを向いていたのだが。

暗くて見難い。
だけど、明るい髪色をしている人間のため、少し分かる。
トーフの隣に立っていたのは
桜色の長い髪が特徴的な、女の姿であった。


「こ、こら!待てや!!」


真夜中、関係なくトーフがその女に叫ぶ。
しかし女の人間は、それを無視してさっさと走っていった。


その逃げる姿は、人間業ではなかった。


ピュンピュンとあちこちの障害物に乗り移りながら
凄いジャンプ力で、去っていってたのだ。


見て、呆気に取られるトーフ。
人間にあのような動きが出来るのか、不思議でたまらなかった。


そして、あの殺気。
魔物同類のあの殺気は一体…

あの女は、何者だったのだ?




気にしながらも、
もう殺気を感じないので、トーフはスヤスヤと眠りにつくことにした。
またその場に寝そべって、星とにらめっこ。


とにかく、もう…疲れた。
あ、食べ物の夢を見よう。


…もう、腹空いた…。







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